
今週、石川県と富山県では、記録的な大雨により川の氾濫や土砂災害などが相次ぎ、今も厳重な警戒が続いています。
各地で相次ぐ大雨被害ですが、その予測の難しさが改めて浮き彫りになっています。
【写真で見る】 水が引かない 川に挟まれた集落 診療所や食料品店でも浸水被害
“観測史上最大”豪雨の現場 水没から逃れた人「怖かった」8月27日未明の富山湾を捉えた映像には雷の閃光が走る。
その10分後、視界がさえぎられる程の非常に激しい雨が住宅街を襲い、これまでに経験したことがない雨量をもたらした。
石川県と富山県にレベル5の大雨特別警報が発表された雨は、街の景色を一変させた。
石川県中能登町の和菓子店では…
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和菓子店の男性
「午前4時半ごろから水が上がり出して、午前5時ごろから大変になって土嚢を積みだした。それから30分でこの状態」
石川県羽咋市では、行き場を失った雨水が急流のように街を飲み込んだ。
水没した車の屋根に逃れて助けを待つ男性。
そこに1人の歩行者の姿が。激しい流れに足を取られながら進み、かろうじてガードレールに掴まったが…
カメラマン
「流される!流される!流された!」
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約10メートル流された先で踏みとどまり、事なきを得た。
水没した工場から逃れてきた人たちがいた。
工場の従業員
「怖かった。勢いはそこまでではないが、気付いたら水嵩が上がっていた」
この工場では一時、従業員ら8人が取り残されていたというが、全員、水に浸かりながらも自力で脱出した。
住宅地では、稲作が盛んな地域であるが故の問題が起き、水が引かない状態が続いていた。
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住民
「稲刈りしたあとの茎などが側溝に詰まっている。こんなの今まで経験したことはない。70年くらい生きているけど、こんなことはなかった」
この地域では、8月から収穫時期が早い米の刈り取りが始まっている。その収穫で裁断された大量の茎が田んぼから住宅地に流れ込み、側溝を塞いでいた。
サイレンを鳴らし、消防の車両が向かった先には…
カメラマン
「土砂崩れかも」
人の背丈をはるかに上回る巨大な樹木が音を立てながら根元から折れた。道路は完全に土砂などに覆われ、通行できなくなった。
地元住民
「家がこの奥だから。自宅の車庫が崖崩れで潰れたと連絡があって見に行こうと思った。これじゃ行けない」
突然の記録的な大雨から1日経った28日、全く水が引いていない現場もあった。
水が引かない 川に挟まれた集落 診療所や食料品店でも浸水被害わずか半日で観測史上最大の雨が降った富山県氷見市。一夜明け、現地に向かった。
Q.ずっと水が引かない状況ですか
住民
「全然引いてません」
Q.低い土地になっている
住民
「上の方から水が流れてくる。堤防があるからどうしてもここへ水が溜まる」
住民
「あの辺行くと膝ぐらいまで来ます」
「農道ですけれど抜けられると思ったんでしょう。(車が)用水にはまって脱輪してそのままの状態」
自宅の一部が床上浸水したという男性は...
自宅の一部が床上浸水した住民
「昨日、孤立してた、ここで。車を出す暇もなかった」
「一番の問題は、神代川と仏生寺川と堤防があって、水が抜けていかない」
2本の川に挟まれた海津集落はもともと浅い湖で、標高が低く、浸水しやすい場所だ。そのため排水機場で水を吸い上げ海に流しているが、今回はあまりの雨量で排水が追いついていないという。
自宅の一部が床上浸水した住民
「(大雨被害は)何回かあったけど、こういう酷いことはなかった。時間が経たないと引いていかない。丸24時間かかる」
住宅街にある診療所を訪ねると…
加藤医院 加藤裕明 院長(67)
「コンピューター、電子カルテ、線が全部浸かってる」
診察室の床下にも水が入り込んでしまったため、スタッフが総出で排水作業を行っていた。
加藤医院 加藤院長
「一旦、雨も小康状態になって、引いたと思って油断した。そのうちにまた(水が)一気に増えてきて、車が通るたびにザバーンと波が来るようになって」
その時の診療所周辺の映像。道路に溜まった水は、正面玄関から徐々に入り込み、30分ほどで待合室にあるソファーのすぐ下まで達した。
診療所の向かいで、73年にわたり野菜や果物を販売してきた店主は…
恵比寿博幸さん(73)
「この敷居を越えた。冷蔵、冷凍関係、マシンの値段が高いから」
Q.今後どうする
「電気屋さんの見積もり次第。回収不可になったら(店を)閉めるしかない。投資はできない。誰か跡を継いでくれればいいけど、継いでくれない」
さらに、記録的な大雨に見舞われた石川県羽咋市に向かった。
記者
「湖みたいになってしまっている」
この場所で米を作っていたという男性は…
米農家 坂本久男さん(86)
「傾斜になっている。あそこに重機がはまっている、クレーン車が。あの辺りが一番深くて3メートルぐらいある」
もともとこの場所は辺り一面田んぼが広がるのどかな田園地帯だったが、今回の大雨で水に覆われてしまった。
Q.収穫間近だったのでは
米農家 坂本さん
「ちょっとやって、1日目でこんなになった。来年また米作りをしようという思いは薄い」
新しい家が立ち並ぶ住宅地に入った。すると...
澤田大河さん(25)
「まだ建って1年も経ってない。新築です。ここに畳みたいなのがあったけど、水に浸かって全部浮いた。全部外に出した」
2025年、妻と1歳になる子どもと3人で暮らし始めたマイホーム。思いもよらぬ被害に動揺は隠せない。
澤田さん
「半年ぐらいでこんなになって、想像してなかった。ここからちょっとずつ前向いて頑張るしかない」
北陸の各地で、26日の降り始めから28日の正午までの降水量が、観測史上1位を記録した今回の大雨。
気象予報士の森田正光さんは、“水蒸気の流れ方”が重要なポイントだと分析する。
気象予報士 森田正光さん
「白いところが水蒸気の流れ。帯のように白いところがベンガル湾の辺りまで広がっている」
北陸で最初の線状降水帯が発生した時間帯の水蒸気の状況(27日午前3時時点)を見ると、日本列島に向け湿った空気を送り込む台風18号があった上に、インド洋から北陸を含む広い範囲に水蒸気の流れができていたことがわかる。
気象予報士 森田さん
「いったん水蒸気が雨になって、その雨で終わりかと思うと、次々と入ってくる。この部分で線状降水帯が発生し、東西方向に非常に激しい雨のゾーンができた」
これらの水蒸気が夜間に気温が下がって冷やされたことで、積乱雲が次々に発生し、大雨に繋がったとみられる。
森田さんがもう一つ注目するのは、日本近海の海面水温だ。
気象予報士 森田さん
「8月27日の日本近海の海水温が平年より高いか低いかを見たもの」
日本の南側は台風で海がかき回され、海面水温が低いが、日本海や三陸沖などの北側は平年より2℃から4℃ほど高い。
気象予報士 森田さん
「海水温が高いということは表面からずっと水蒸気が放出される。日本列島、特に北陸を中心に水蒸気が大雨になりやすい形になった」
今回のような記録的大雨では、実際にどのくらい激しくなるのか、予測が難しいことも浮き彫りとなった。
気象庁 大気海洋部 細見卓也 予報課長
「水蒸気の流れ込み方など、数値シミュレーションでは表現しきれていない部分があったかもしれない」
森田さんは「特に初期の段階で線状降水帯の発生場所を特定することは難しい」と指摘する。
気象予報士 森田さん
「いったん(線状降水帯が)そこにできたことが分かれば、次ここでまた出るということはわかる。起こりやすい場所は分かるが、どこで起こるかが特定できない、そういう性格がある」
災害社会工学に詳しい専門家は、山間の土地に短時間に大量の雨が降ったことが、被害拡大につながったと指摘する。
東京大学大学院 情報学環 片田敏孝 特任教授
「山がちで急峻なところを激流になって流れるから、多くのものを巻き込む。これが破壊力となり橋に引っかかる。流れが変わり、一気にあふれ返ってくる。中小の河川だから、川の流量もそんなに多くない。あっという間にあふれ返るという状況になってしまう」
北陸地方は、30日夕方にかけて大気の状態が非常に不安定となるため、再び警報級の大雨となるおそれがある。
片田氏は、降り始めから時間が経ったからこそ、更なる災害の発生に注意が必要だと話す。
東京大学大学院 情報学環 片田特任教授
「山のわずかな割れ目から土の中に水がどんどん流れ込むような場所もある。すべり面が短時間の間にできて、局所的に小さな土砂災害も頻発することになるかと思う」
さらに、予測を上回るような大雨が各地で相次ぐ状況について、防災に対する意識の転換が必要だと強調する。
東京大学大学院 情報学環 片田特任教授
「日常的な暮らしの中で、いつ突発的にこんなことが起こるかわからない。常に存在するリスクに向かい合っていると。危ない時には危ないと思える自分であること、それを行動に移せる自分であること。国民一人ひとりの対応力が本当に必要になってきている」
