大谷翔平、MVP争いで“絶体絶命”か…PCAにWAR「2.0差」、高すぎる“逆転の壁”

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2026年09月01日 16:01  日刊SPA!

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写真/産経新聞社
 ナ・リーグMVP争いの構図が、8月終盤に大きく変わった。
 ピート・クローアームストロング(カブス、以下PCA)は現地8月29日に3本塁打、翌30日にも2本塁打。31日は5打数1安打だったが、現地8月31日終了時点の月間成績は打率.283、14本塁打、28打点、OPS1.098まで跳ね上がった。

 一方、“ライバル”大谷翔平(ドジャース)は対照的だった。月間打率.241、6本塁打、13打点、OPS.794。特に月末は打撃の勢いを欠き、PCAとの差が目立つ形となった。

◆「40-40」も視野…PCAが大谷を上回る“決定的な指標”

 PCAの強みは8月の打棒だけではない。今季38本塁打、32盗塁で、「40-40」を狙える位置にいるうえ、中堅守備でもメジャートップクラスの評価を受ける。もともとの守備・走塁力に長打力まで加わり、走攻守で数字を残すMVPの大本命へと浮上した。

 現地の論調も、すでにPCA優勢へ傾いている。MLB.comが8月25日に発表した専門家37人の投票では、PCAが1位票29、大谷は8。大谷の地元紙「ロサンゼルス・タイムズ」も28日時点で、シーズンがそこで終わればPCAがMVP、大谷が2位との見方を示していた。

 そして、大谷にとってさらに重いのがWARの数値である。現地8月30日終了時点のBaseball-Reference版WARはPCAが8.5、大谷が6.5。その差は2.0まで広がった。

 FanGraphs版のWAR(fWAR)でも、PCAが9.3、大谷が6.8。算出方法が変わっても、PCAが大きくリードしている点は変わらない。過去のMVPとの比較にはBaseball-Reference版を用いる。

◆過去にはWAR3.6差を覆した例も

 MVPはWARランキングの1位をそのまま表彰する賞ではない。では、現在の大谷のように2.0差をつけられていても、投票ではひっくり返せるのか。

 2000〜2025年の両リーグMVP全52例から、投手として受賞した2011年ジャスティン・バーランダー(タイガース)、2014年クレイトン・カーショー(ドジャース)を除く50例を調べた。各年の比較対象からも投手を外し、二刀流選手は投打合算のWARで扱った。

 すると、WAR首位に2.0以上の差をつけられながらMVPを獲得したケースは8例。つまり、現在の2.0差だけを見て、大谷のMVPが消えたと断定することはできない。

 実際、2004年のブラディミール・ゲレーロ(エンゼルス)は、イチロー(マリナーズ)をWARで3.6下回りながら受賞。2012年のミゲル・カブレラ(タイガース)も、首位マイク・トラウト(エンゼルス)との3.4差を覆している。

◆直近10年、「2.0差」からの逆転はゼロ

 ところが、時代を近年に絞ると様子が変わる。

 2.0以上の差を覆した最後の例は、2015年のジョシュ・ドナルドソン(ブルージェイズ)だった。WAR9.5のトラウトに対してドナルドソンは7.4。2.1差を覆してMVPを手にしている。

 一方、2016〜2025年の10年間では、2.0以上の差からの逆転はゼロ。WAR首位以外がMVPを獲得した6例のうち最大差は2021年のブライス・ハーパー(フィリーズ)で、首位フアン・ソト(ナショナルズ)を1.5下回りながら受賞している。

 次に大きいのが2019年のマイク・トラウト(エンゼルス)。首位アレックス・ブレグマン(アストロズ)との差は1.1で、残る4例はいずれも0.4以内だった。

 近年はWARがMVPを語る際の共通言語として定着し、打撃だけでは見えにくい守備や走塁の価値も可視化されるようになった。WAR首位でなければMVPになれないわけではないが、大きな差をつけられたまま逆転するハードルは、かつてより高くなっていると考えられる。

 もし2.0差のままシーズンが終了すれば、大谷は直近10年間にはなかった規模の逆転に挑むことになる。

◆大谷がMVPを獲得するために必要な“9月の大爆発”

 では、その壁を越える条件は何か。

 かつて大差を覆した選手には、WARとは別に一目で分かる強烈な材料があった。2006年ライアン・ハワード(フィリーズ)は58本塁打、149打点。2012年カブレラは三冠王を達成し、2015年ドナルドソンも41本塁打、123打点を記録して地区優勝を果たした。

 近年の傾向を考えれば、大谷が9月にPCAを少し上回る程度では、2.0差を覆す材料としては弱い。WAR差そのものを大幅に縮めるか、それでも大谷を選びたいと投票者に思わせるほどのインパクトが必要だ。

 大谷自身には、その姿を想像できる前例がある。2024年9月、「50本塁打・50盗塁」へ一気に到達した時のような打撃の爆発だ。そこへ投手としての上積みまで加われば、二刀流という大谷にしか作れない評価軸としての重みも再び増していくだろう。

◆MVPより重要なポストシーズンに向けた状態

 もっとも、MVP争いのためだけに投手復帰を急ぐ必要性は薄い。ドジャースが本当に欲しいのは9月のWARではなく、ポストシーズンで二刀流として戦える大谷の状態だ。

 現状のMVP争いは明確にPCAが優勢。それでも大谷がMVPを奪い返すとすれば、「そこそこ良い9月」では届かない。過去10年の傾向そのものを覆すほどの1か月を見せられるか。その高い壁が、大谷の前に立っている。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。

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