
「主要7政党(自民、国民、中道、立憲、いのち、みらい、共産)15名が集まって超党派声明を出し、流れにつながったとしたら大きい」
こう話すのは「人権外交を超党派で考える議員連盟」の顧問を務める山尾志桜里氏(52)だ。
ICC(国際刑事裁判所)の赤根智子所長(70)が8月18日、米国のトランプ政権から制裁対象に指定され、以後、赤根所長は米国内の資産凍結、入国禁止、米国人・米国企業との取引遮断の対象となった。
これを受け、「人権外交を超党派で考える議員連盟」(共同会長、中谷元氏・68、舟山康江氏・60)は19日、日本政府に対して「米国の新たな制裁の撤回を求め、ICCへの揺るぎない支持と支援の表明を強く要請する」内容を含め、米国の措置を「法の支配に対する重大な侵害として、最も強い言葉で非難する」と緊急非難声明を出した。
高市早苗首相(65)は19日に「大変残念」としか語らなかったが、24日には同議連が総会を開き、非難声明を議決。中谷元共同会長は「『残念』は感想で、意思ではない。抗議を求めたい」と述べた。
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これが報道されると、世間でも署名活動やSNSでの書き込みなどに大きく発展し、高市首相は25日の会見で「今回の措置は日本の立場と相容れるものではなく、大変深刻に受け止めている」と述べた。
この世論の引き金になった緊急声明を出した「人権外交議連」は、与野党の国会議員有志で構成する超党派の議員連盟だ。
「高市首相が25日、当初の『残念』をあらためるように『日本の立場と相容れるものではなく……』と“言い直し”発言したことは、赤根所長への米政府の制裁解除へ向けて、一歩前進したと思います。『最も強い言葉で非難する』と緊急声明を出した議連としても、大きな手応えがあったと思っています。
人権外交議連は2021年、中国の人権問題をきっかけに設立されました。人権問題というのは、リベラルの専売特許でも、保守の攻撃材料でもなく、左右を超えて守るべき普遍的価値です。その理念から、舟山会長も、中谷会長も、超党派にこだわって活動してきました」
2021年に、同議連が最初に行った決議は《近年の新疆ウイグル自治区、チベット、南モンゴル、香港、ミャンマーでの深刻な人権侵害による迫害や現状の変更を国際社会に対する脅威と認識し、これを強く非難する》というものだった。その後も、同議連は中国における邦人の拘束や、イスラエルとハマス間での軍事衝突を批判する声明を出すなど、国際的な陣営に関係なく、人権侵害に対して厳しく対処してきた。
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■「関係が深いからこそ、言うべきことは言う」
国内政治では近年、与党自民党が議席数を拡大し、「与野党は分断の流れだった」と山尾顧問は振り返る。
「安倍政権以降、与野党の分断が進んでいました。与党内でさえも、政権に対して声を上げることが難しくなっていたような状況です。高市政権でもその傾向が強まっていましたが、今回の声明を人権外交議連が出すにあたって、主要7政党の15名が夏休み中にもかかわらず集まり、迅速に準備できました」
その影響力は予想以上に大きく、24日の議連決議は大きく報じられた。その後、「今回の措置は日本の立場と相容れるものではなく、大変深刻に受け止めている」と、高市首相の“言い直し”があったことになる。
「まずは議連として19日に迅速に声明を出した。そして世論……市民の方々の署名活動、人権団体の動き、さらに保守側からの声も含めて、流れをつくることができたのではないかと思います。特に与党内から声が出たことは大きく、首相の“言い直し”にも影響したのではないでしょうか」
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24日に同議連総会で「『残念』は感想で、意思ではない。抗議を求めたい」と高市首相の発言に対して述べた中谷元前防衛相は、首相と同じ自民党の大物政治家である。まさに政党を超えた、超党派として“扉を開く”決意の発言だったように映るが……。
「中谷さんは、日本イスラエル友好議員連盟の会長を務めていらっしゃる方なんです。イスラエルと『関係が深いからこそ、言うべきことは言う』という姿勢が素晴らしいのです。今回の制裁は米国政府の措置ですが、イスラエル側の強い反発を背景にした措置ではないかと考えられます。
日米同盟の関係があるからこそ、日米の信頼関係があるからこそ、言うべきことを言う。それが本当の友好関係だという姿勢が重要であり、中谷さんの発言は、その姿勢を体現しているものだと思います。
自民党の首相に対し、自民党の前防衛相が『言うべきことを言う』。永田町ではそれは“非常識”とされるかもしれませんが、世間の常識に沿って『言うべきことを言う=リスクを取って発言する』その真骨頂だったと思います」
また、議連総会には石破茂前首相(69)が、今回初めて参加したという。
「石破さんは首相退任後に、人権外交議連に参加されました。前首相として現政権にモノを言うのはリスクがありますが、それでも言うべきことは言う。それが石破さんの一貫したご姿勢です。
特に印象的だったのは『日本がなぜICCを守らなければいけないか?』という命題に対して、『日本が東京裁判、つまり勝者による裁きを受け入れた国であるからというのが、ひとつの理由だ』という言葉です。
『勝者の裁きを受け入れてきた日本だからこそ、勝者の裁きではない公平な裁き、ICCを支援するべきだ』という、歴史観に立ったお答えでした。つねに歴史と原則に立ち返る姿勢は、石破さんならではのもので、私も深い敬意を持っています。石破さんは“利他な政治家”でいらっしゃると思います」
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