写真 「エイポック エイブル イッセイ ミヤケ(A-POC ABLE ISSEY MIYAKE)」の旗艦店「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE / AOYAMA」が、東京・南青山のフロム・ファースト・ビル内で拡張・移転オープンした。同店は、地下1階から地上2階までが吹き抜けで繋がる3フロアで構成。売り場面積は約240平方メートルと従来の店舗から大幅に拡大し、国内最大面積の旗艦店として生まれ変わった。
空間デザインは、パリやミラノ、ロンドンなどの「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」旗艦店を手掛けてきた吉岡徳仁が担当した。さまざまなことに挑戦するブランドの姿勢やインダストリアルなイメージを体現すべく、鉄の表面に特殊なメッキ加工で黒い結晶の被膜をかけた独自素材を開発。この素材を用いた象徴的な「黒」を壁面や什器に採用し、モノトーンを基調とした空間に仕上げた。
吉岡は「この店舗が入るフロム・ファースト・ビルは、青山にまだあまりお店がなかった1975年からある歴史的な建物。その痕跡を残し、新しいものと組み合わせてコントラストをつけることを意識した」と説明する。オープン時にはその空間を活かし、あらかじめ服のパーツが織り込まれた、ブランドの創作プロセスを象徴する「一枚の布」を用いたインスタレーションを展開。地下から2階までの空間全体を包み込むように構成している。
同ブランドのデザイナーである宮前義之は、このインスタレーションについて「この一枚の布には、あらかじめプリーツや縫い代、ボタンを付ける位置など、服に必要なデザインや型紙が全て織り込まれています。今回そこに赤い糸を入れたのは、三宅一生が1998年に初めて『A-POC(A Piece Of Cloth)』という新しい考え方の服を発表した時の赤いニットが由来。一生さんへのオマージュであり、『一枚の布』という原点からまた出発するというメッセージを込め、シンボルとして吉岡さんに相談しながら表現しました」と背景を語る。
売り場となる1階と2階には、「PRODUCT TYPES」と「PROJECT TYPES」を含む全アイテムをラインナップ。また地下1階には、新たにギャラリー空間「エイポック スペース(A-POC SPACE)」を設け、アートやテクノロジー、クラフトなど、領域の垣根を越えた出会いから生まれる新たな可能性を発信する場として運営する。
現在、ギャラリーではオープニング企画として、パリ在住の写真家・梅本健太による展覧会「PORTRAITS: HANDS」を10月28日まで開催中。横尾忠則や名和晃平をはじめ、アーティストや彫刻家、エンジニア、農家など、さまざまなものづくりを行う23人の「手」を捉えたポートレート作品を展示している。「これは、我々が伝えたいメッセージの一つである『手からクリエイションが始まる』ということをテーマに、梅本さんと2年ほど前から進めてきたプロジェクトです。服作り以外のさまざまな作り手の方たちとともに、これからの時代を作れたらという思いを込めています」(宮前)。
2021年のブランド誕生から5年。三宅一生氏が1970年代に初めて店舗を構えた原点でもあるフロム・ファースト・ビルでの拡張移転オープンは、ブランドにとっても大きな意味を持つ。宮前は「ブランドとしてはまだ成長途中ですが、これだけ大きい環境をもらったので、次のステップに行くための場にしたい。ただ普通の店を作るのではなく、今エイポック エイブル イッセイ ミヤケがどういったものづくりをしているのかを、物だけでなく見えない裏側のストーリーもしっかりと伝えていきたい」と意気込む。
さらに、「今はスマートフォンの中で世界の色々なことを知れてしまいますが、本来はそうではないはず。オンラインでも簡単に服が買える時代にあえて表参道まで足を運んでもらうためにも、物を通じて感じたり、人と出会ったりする体験が必要です。展示会やショーのような予定調和ではなく、予期せぬ出会いや化学反応が起きるフィジカルなコミュニケーションができる場所にしていきたい」と語った。今後、ギャラリースペースでは、業界やジャンルの枠を超えたさまざまな人の仕事を紹介する企画や、未来のファッションを担う子どもたちに向けた服作りのワークショップなども構想しているという。
◾️A-POC ABLE ISSEY MIYAKE / AOYAMAオープン日:2026年9月4日(金)所在地:東京都港区南青山5-3-10 FROM-1st営業時間:11:00〜20:00 佐々木エリカ (Erika Sasaki) FASHIONSNAP 編集記者 埼玉県出身。早稲田大学国際教養学部卒業後、国内大手アパレルメーカー、ケリング傘下ブランドのMDなどを経験した後、2023年にレコオーランドに入社。現在はウィメンズのデザイナーズブランドを中心に、サステナビリティやSDGs、教育分野も担当。ファッションやカルチャーに加えてジェンダーや社会問題にまつわるトピックにも関心があるため、その接点を見出し、思考や議論のきっかけとなるような発信をしていけたらと願っている。