写真はイメージです―[佐藤優のインテリジェンス人生相談]―
“外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロ・佐藤優が、その経験をもとに読者の悩みに答える!今回は、趣味もなく定年後の引きこもり生活を恐れる58歳男性からの相談。人間関係の構築にも自信がないと明かす相談者に、佐藤氏が提示した「意味のある定年後の人生」を送るための切り札とは――
◆無趣味で、定年後の生活を想像すると憂鬱です
★相談者★ 無趣味(ペンネーム)会社員 58歳 男性
定年退職後の生活を考えると憂鬱になります。何か新しいことをしようと思って、テニスをやったり、麻雀をしたり、アイドルにハマっている友人の勧めでライブに行ってみたりしましたが、何一つハマれるものは見つかりませんでした。子供も社会人になっているので、土日はずっと家に引きこもってテレビやYouTubeを見たりしています。妻は友人と出かけていることが多いもので、一人で過ごしています。定年で仕事がなくなったら年を取った引きこもりになることしか想像できません。なお、私は中堅企業で情報システム部門に長くいたため、営業部のように人づきあいがうまいほうではありません。今から新しい友達をつくりたいという気持ちはありますが、その能力は私にはなさそうです。このようなつまらない人間は老後をどう過ごせばいいでしょうか?
◆佐藤優の回答
現在は65歳で定年退職を迎える人が大多数です。あなたは58歳なのでまだ7年の猶予がありますが、今のうちに定年退職後の人生について考え、戦略を練っておくことはとても重要です。麻雀をしたり、アイドルのライブへ行ったりしたものの、いまひとつピンとこないということですが、それはそれでいいのだと思います。むしろ趣味よりも、仕事を続けることで、あなたは意味のある定年後の人生を送ることができると思います。私は最近上梓した著書で、定年後の仕事の意義についてこう記しました。
〈定年後の人たちは、自分の好きな時間に好きな仕事をチョイスすることができる。そして、それが人材育成や地域経済に貢献することになれば、なかなか幸せな時間となる。/その定年後の人たちが社会や地域に貢献できる仕事は、介護・保育スタッフ、マンション管理人、清掃員、講師、観光ガイドなどと、多岐にわたる。経験や人柄を活かし、短時間から、あるいはボランティアから始められるものも多く、生きがいを感じながら地域社会を支えることができる。また、身体や頭を使うことになるので、介護予防やフレイル(心身の虚弱)予防にもつながる。〉(『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』134頁)
現下の日本では、企業年金が特に手厚い会社に勤めた人以外は、年金だけで十分な水準の老後生活を実現することはできません。どうしても貯金を取り崩す必要に迫られます。定年退職後、何の仕事にも就いていない人は、3か月くらいたつと不安になってきます。預金の残高が減ってくるからです。ここで冷静に考えてみましょう。現役時代と同じようにバリバリ働くことができないのですから、経済的にマイナスになるのは当たり前のことです。むしろ、そのマイナスをいかにしてミニマムにするかを考えるほうが現実的と思います。そのために重要なのが、働き続け、少しでも収入を得ることです。
まず、あなたが住んでいる地域の最低賃金を調べておきましょう。東京都の最低賃金は時間額1226円です。現役のときのように朝から晩まで働くことを考える必要はありません。週3日、一日6時間ずつ働くと、月収は約9万6000円になります。これだけあれば、精神的にかなりの安定が得られると思います。そして、最低賃金でよいので、あなたがストレスを感じずにできる仕事を選ぶのです。あなたは情報システム部門で長年経験を積んできたのですから、そのノウハウを生かすことのできる職場は、きっと見つかるはずです。頑張ってください。
★今週の教訓……仕事を続けることが、意味ある人生に繋がる
※今週の参考文献『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』佐藤優 飛鳥新社
―[佐藤優のインテリジェンス人生相談]―
【佐藤優】
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数