カメラのないAIグラス、「RayNeo iO」はどこまでやれるのか 盗撮疑惑とは無縁になるが機能面は?

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2026年09月08日 09:01  ITmedia NEWS

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今回取り上げる「RayNeo iO スマートグラス」。見た目は細身のウェリントンタイプのメガネに見える

 今年の日本はどうやら、“AIグラス元年”ともいえる年になりそうだ。米MetaとRay-Banがコラボした「Ray-Ban Meta」は2023年に登場しているが、国内発売はなかった。だが今年は中国メーカーが続々と日本市場向けに投入している。


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 1月15日、香港に拠点を置くSOLOS Technology LimitedはマイクとスピーカーのみのAIグラス「AirGo3」を、全国のビックカメラのメガネ取り扱い各店およびビックカメラ・ドットコムで販売開始した。


 2月には「Rokid スマートAIグラス」がクラウドファンディングサイトの「Makuake」に登場、7月10日より一般販売も開始された。


 5月にはMetaの「Ray-Ban Meta(Gen 2)」および「Oakley Meta」の日本国内での販売を開始、度付きレンズに変更できるということで、大きな注目を集めた。また8月26日からは、ブランドコラボなしの「Meta Glasses」の発売も開始されている。


 そして9月4日から予約販売が開始されたのは、RayNeoの「RayNeo iO スマートグラス」(以下、RayNeo iO)だ。ディスプレイとマイクはあるが、カメラを搭載しないということで、昨今騒がれているAIグラスの盗撮問題とは無縁のプライバシーに配慮した設計が特長だ。


 今回はRayNeo iOのサンプルをご提供いただいたので、試しているところである。盗撮問題はあってもカメラはないとなぁ、と考える人も多いと思うが、カメラなしAIグラスはどのような方向性なのだろうか(機材協力:RayNeo)。


●カラバリもあるシンプルなグラス


 RayNeo自体は21年に中国の深圳(シンセン)で創業したスマートグラスメーカーで、これまで日本ではARグラスを中心に展開してきた。1モデルだけARとAIが一緒になった「RayNeo X3 Pro AI+AR グラス」という製品もあるが、日本向けに、AIグラスだけに機能を絞った製品はRayNeo iOが最初となる。


 サングラス型ではないAIグラスは、概ね黒縁のウェリントンタイプである。普通のメガネとしては顔の印象が大きく変わるので、あえて顔を隠したいとか、印象を大きく変えたいといった目的がなければ、好んで選択するタイプではない。


 一方、RayNeo iOは比較的細身のフレームを採用し、レトロながら一般的なメガネに近いデザインとなっている。カラーもDune(ゴールド)とPolar Night(ダークグレー)の2色展開だ。今回は Polar Nightをお送りいただいている。


 両レンズ部分にディスプレイが仕込まれている。位置はやや上側に寄せていて、表示範囲も縦が短い。情報を読む際には、ちょっと視線を上に向けるといった格好になる。


 テンプルの先端が太くなっており、おそらくこの部分にバッテリーや基板部などがあると思われるが、テンプル自体は航空宇宙グレードのチタン合金で、一見するとただのよくあるメタルフレームのように見える。この中におそらくフレキケーブルが通っているのだろう。


 充電ポートは両レンズのブリッジ部分にある。標準で付属するのはクリップ型の充電アダプターだが、メガネケース内にバッテリーを搭載し、ケースに入れるだけで充電可能な「RayNeo iO用充電メガネケース」も販売されている。


 防塵・防滴性能はIP54で、重量は約33gとかなり軽量だ。一般的なメガネよりは多少重いが、長時間装着していても苦にならない。また鼻あてもフレーム一体型ではなく微調整可能だ。ただテンプル部はほとんど「しなり」がないので、掛け心地は多少硬めである。それでもフレームにカメラもLEDライトもなく、普通のメガネに見える。


 ただ、このメリットが発揮されるまでにはまだ少し時間がかかりそうだ。AIグラスによる盗撮問題は主に米国や中国で訴訟などが起こされているものの、日本ではAIグラス自体がまだそれほど普及していないこともあり、問題自体があまり認知されていない。だがユーザーが増えれば、海外同様の問題が顕在化してくるだろう。その時に、普通のメガネに見える、撮影機能がないというメリットがどれぐらいなのか、正確に分かるはずだ。


 外見から普通のメガネと違うということに気づく部分が、右のヒンジ部分に取り付けられたリューズだ。これを押して機能表示、回転で機能選択、といった使い方になる。またAIに対するコマンド入力画面は、「OK RayNeo」といったウェイクワードで起動するが、リューズの2回押しでも同様に起動する。


●実際にどのような使い勝手なのか


 RayNeoでは、「ダッシュボード」という一種のウィジェットが用意されており、天気や時刻、今日の予定などを確認することができる。この画面は常時表示されているわけではなく、一定時間で消えるが、顔を少し上げることでいつでも呼び出し可能だ。スマホを取り出して時間を確認する人も多いが、その手間が省けるというわけだ。


 ダッシュボードのデザインは今のところクラシックモード1つ、ミニマルモード2つの3種類しかないが、今後の拡張に期待したい。


 個別モードとして提供される機能には、音声メモ、ライブキャプション、Life Log、ライブキュー、テレプロンプターがある。RayNeo iOを特徴づけているのは、おそらくLife Logだろう。これは1日中録音を回しておき、その日の夜に今日一日の活動結果をレポートとしてまとめてくれるという機能だ。


 これを実現しているのが、シンプルな機能構成による低消費電力設計である。バッテリー容量は240mAhしかないが、標準使用時間約48時間、連続録音時間最大18時間を実現する。連続で使用すると数時間でバッテリー切れになるAIグラスは多いが、このスタミナも1つの差別化だろう。


 1日の活動をまとめてどうするんだ、と思う人も多いだろうが、時刻と活動内容が対応しているので、日々日報を提出しなければならないタイプの業種の人には、たまらなく便利なはずだ。


 ライブキャプションは、聞き取った音声をリアルタイムで文字化する機能だ。翻訳をONにすれば、外国語から日本語への翻訳機能として使える。ただし聞き取り言語は自動認識ではないので、ユーザーが自分で選択する必要がある。


 相手が何語を話しているか分かっている場合は問題ないが、アジア圏の言語は馴染みがないため、例えばミャンマー語なのかマレー語なのか区別できる人は少ないのではないか。またアラビア語だけでもかなり細かく国が分かれており、どれを選択するべきか迷う。もちろん自分で選べることも重要だが、自動判別機能の搭載は必須かと思われる。


 試しに中国語の機器操作のガイダンス動画を翻訳させてみたが、多少句読点が変なところはありつつも、内容は理解できた。


 翻訳をOFFにすると、日本語から日本語テキストへ変換してくれる。あんまり使い道がないと思われるかもしれないが、例えば電車内でノイズキャンセリングヘッドフォンで音楽を聴いているが、電車のアナウンスは確認したい、というケースはあるはずだ。


 そういう用途に使えたら便利だろうと実際に電車に乗り込んで試してみたが、電車音がうるさいためか、1語も文字化されなかった。また町の雑踏の中で、おしゃべりしながら歩いている人の横並びでしばらく歩くタイミングがあったが、人間の耳では内容が聞こえてくるのに、AIグラスには一語も表示されなかった。


 いろんな会話を聞き取ってめちゃめちゃにならないよう、反応が制限されているのかもしれない。だがそこはAIによって話の筋が通るものを選別するとか、一番明瞭な音声を拾うなどの機能があってもいいだろう。人間の耳と脳って実はすごいと改めて実感させられた。


 「ライブキュー」はまだβ公開ではあるが、会話の内容を聞き取って、質問に対して推奨される回答を表示してくれる機能だという。ただ、相手から質問形式で問いかけられないと反応しないので、結構使うチャンスは少ないのではないだろうか。試しにある企業のラウンドテーブルの時に起動してみたが、1時間の間ずっと聞き取っているだけで、1語も反応しなかった。


 そもそも自分に対して何か質問されたのであれば、質問の回答は自分が持っているわけで、わざわざAIに助けてもらう必然性が薄いのではないだろうか。それよりも、自然文の会話の中で頻出するキーワードを抽出し、それに対する説明を表示するみたいな機能の方が、商談などにも使いやすいのではないかと思う。


 現時点で期待通り機能するのは、音声メモ、Life Log、テレプロンプターぐらいである。そのほかの機能は、音声認識の反応を上げていけば、ちゃんと有用な機能だと思われる。


●「どれも同じ」ではないAIグラスの世界


 AIグラスは、我々が普段利用しているAIをウェアラブルにするという目的を持って作られているが、メガネ化するということは、日常的に使用することが前提となる。


 これはスマートスピーカーが通ってきた道でもあるわけだが、人間が日常生活内でAIに聞かなければ分からない事柄というのは、それほど多くない。それよりも役に立つのは、「何かあったとき」である。そこにキラーソリューションが生まれるわけだが、多くのAIグラスメーカーは、それがなんなのか、それぞれに答えを探している。


 RayNeo iOが注力するのは、長時間録音によるライフログ生成だ。音声はもちろん、スマートフォンのGPSデータも取得して移動も検知しながら、その日の記録をまとめるという機能は、データが多く溜まった時にまた別の価値を生む可能性がある。その一方で、いくら音声だけとはいえ行動履歴はプライバシー情報でもあるので、第三者利用には慎重さが求められる。


 RayNeo iOはスピーカーを搭載しないので、人間の音声コマンドに対する返答は、ディスプレイの文字として返ってくる。一般にAIは音声コマンドには音声で、テキストコマンドにはテキストで返してくるので、音声の問いかけに文章で返してくるというのはこれまであまりないやり方だ。


 文字の表示は5行ぐらいではあるが、長文が流れてくると読むのが間に合わない場合もある。だがグラスのリューズを回せば前にスクロールできるので、読み切れなかった文章は戻って読み直すことができる。


 これは流れ去ってしまう音声応答よりも、内容を把握しやすい。また音声応答では途中から聞き直すことが難しく、どうしても再コマンドで最初から聞く羽目になるが、テキストならそのまま途中から読み返すことができるため、手間も少ない。このあたりがRayNeo iOのメリットといえそうだ。


 今回RayNeo iOを使ってみて感じたのは、AIグラスはスマートフォンやスマートウォッチのように、「できることはどれもだいたい同じ」の世界にはならないのではないかということである。AIグラスの用途として、本当に背後に汎用LLMを動かし続けなければならないのか、それよりも特定の事業や業務に最適化した自社製AIに接続した、業務専用端末としてのあり方がいいのではないかといったことも、今後の検討課題になってくると思われる。


 RayNeo iOでは、無料で使えるLLMとして、RayNeo V1とGemini 3.1 Flash Liteを用意しているが、それ以上のAIを使おうとすると月額1500円のサブスク料金が必要となる。既にPC向けに何かのAIをサブスク契約している人も多いと思うが、さらに追加でAIグラスの分の料金を払ってでも、日常的にメガネ上で汎用AIを動かす必要があるほど便利なのか。


 それを「必要だ」と思わせてくれる日常的ソリューションが早く発見されることを望みたい。そうしないと、盗撮に便利という程度のユーザーが大量発生しかねず、テクノロジーの未来を壊しかねない。



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