【プロ野球】チャンスで打てない中日打線には"逃げ道"が必要? 今中慎二が説くベンチからの指示の重要性

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2026年09月09日 10:20  webスポルティーバ

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今中慎二が語る今の中日 後編

(前編:今中慎二が中日に厳しいゲキ CS争いで窮地の古巣に「やるべきことを、やらずに負けるから尾を引く」>>)

 クライマックスシリーズ(CS)進出が厳しい状況になってきた中日。その戦い方の課題を、OBの今中慎二氏が洗い出してもらい、解決の方向性を探った。

【チャンスになると、ことごとく全員が打たない】

── 上位チームとの差は、選手個々の力の差でしょうか。

今中慎二(以下:今中) 選手の力の差も少しあると思いますが、ちょっと気になっていることがあります。無死三塁や満塁といったチャンスの場面でも、ほぼバッター任せになってしまっているんじゃないのかなと。

 じゃあスクイズを仕掛けるべきなのか、といった話ではないのですが、内野が下がっているのに三振したり、内野フライを上げたりして、外野フライもなかなか打てません。もちろん、外野フライを打つことは簡単ではないですよ。でも、本気で1点を取りにいくのであれば、ベンチが責任を負って指示を出す機会がもっと多くてもいいと思うんです。

 あと、選手の「積極的にいきました」というコメントをよく聞きますが、積極的という言葉の意味を履き違えている気がします。ボール球であろうが、初球、2球目をどんどん打ちにいって、自分を追い込んでしまうパターンを頻繁に目にするので。

── チャンスで考えすぎてしまっている節もある?

今中 チャンスになると、ことごとく全員が打ちませんよね。なんとかして当てよう、転がさなきゃ、といった意識が強すぎるバッティングスタイルに変わってしまうような気がします。自分のスイングをすればいいのにな、といつも思います。ランナーがいる場面で、いつも"ランナーがいる時のバッティング"をしようとするから、相手バッテリーの術中にハマってしまうんじゃないかと。

 例えば、打点を挙げている阪神の森下翔太や佐藤輝明などは、チャンスでも普通に打っていますよね。力んだり、考えすぎたりしているようには見えません。チャンスであろうがなかろうが、集中して自分のスイングをすることを心がけているように見えます。

【ベンチからの指示も必要】

── 考えているうちに、自分を追い込んでしまう感じでしょうか。

今中 考えすぎている場合は、ベンチから「こうやっていこう」という指示を出してあげたりすれば、ちょっとは吹っ切れるんじゃないですかね。考えているうちにボール球を振って追い込まれたり、当てにいって空振りしたり。そういうケースもよく目にします。

 別のチームの話になりますが、広島も(9月4日の巨人戦で)初回の無死三塁のチャンスを作った時があって、初回だから巨人の内野が「1点は仕方がない」と守備位置を下げているのに。ゴロを打つこともできずに3者連続三振。下位にいるチームの課題は、そういうところじゃないですかね。

 ランナーがどの塁にいるか、相手の守備位置がどこなのかに合わせてバッティングできるのが理想ですが、その場合はサインを出してもいいと思うんですよ。無死二塁で最初から逆方向を狙う、といったことはやらなくていい。サインが出るまでは自分のバッティングをすればいいんじゃないかと思います。それで結果としてフライを打ち上げてしまっても、ノーサインであれば仕方がない。自分のバッティングに徹したわけですから。

── 得点圏にランナーがいる状態で右方向を狙うのはセオリーとされていますが、そればかりを狙う必要はない?

今中 そうですね。チャンスで打席に入ったバッターが、ボールに飛びついてまでバットに当てにいったりするんです。個人の判断でエンドランをかけているのかと思ってしまうくらいですよ。ランナーがいなければそんなスイングしないでしょ、っていうことを平気でする。

 こういうシチュエーションではこういうバッティングをしなきゃいけない、周りがそう言うから自分もやらなきゃいけない、という感じに見えます。「この場面では三振が一番ダメ」と言われ、初球からボールに飛びついて打ちにいき、ポーンとフライを打ち上げてしまって点が入らない。そういう悪循環になっているんじゃないかと。

── その悪循環をなくすために、ベンチからサインを出すこともひとつの手ですね。

今中 責任をベンチが背負うといった感じで、選手に"逃げ道"を用意してあげれば、もうちょっと選手は楽なんじゃないかなと。たとえば、「高めのボールは振るな。低めを見逃しての三振はOK」とでも伝えれば、ちょっと楽になりますよね。ピッチャーに対しても同じで、「フォアボールは出すな。ど真ん中に投げて打たれてもいいから勝負しろ」と伝えれば、思い切ってストライクゾーンに投げられる。今の若い選手は、それくらい極端なことを言わないとダメなのかもしれません。

【相手にとって怖い打線とは】

── 打線のオーダーに関してはいかがですか?

今中 理想を追い求めるオーダーを組むのもいいと思いますが、それよりもピッチャーが嫌がるような打線を組むほうが効果があるんじゃないかと。自分はピッチャーだったので、なおさらそう思いますね。

── 最近は、好調の福永裕基選手を1番に起用することが多くなっています。

今中 いいと思いますよ。先頭に調子がいいバッターがいると、最初から警戒しなければいけないですから。2試合連続で先頭打者ホームランを打ったりしていますからね。2番には細川成也や村松開人、上林誠知、田中幹也などいろいろなタイプの選手を起用してきましたが、ノーサインでフリーに打たせるのであれば細川でも全然いいですよ。一発があるので相手は怖いでしょうし、ガンガン打って初回から大量点を狙うという狙いが見えるオーダーじゃないですか。

 細川に進塁打を打たせるのであれば、2番に置く意味はありません。そうであれば彼の持ち味が生かせませんし、相手も怖くない。村松を2番に入れるのであれば、ある程度いろいろなことができますよね。相手がどちらを嫌がるのか、という話です。

── 2番に細川選手を起用するなら、戦略も変わるということですね。

今中 そうすればいいと思うんです。(8月18日の)広島戦5回表の無死一塁、2番の細川の時に3ボール2ストライクからランエンドヒットをかけたのですが、当てにいこうと変なスイングをして空振りゲッツーになった。この試合は初回も細川はゲッツーで、本人は「そのことも頭にはあった」と話していましたが、それは仕方がないですよ。ランエンドヒットを仕掛けるのであれば、器用な選手を2番に入れないといけません。

 あと、突然ジェイソン・ボスラーが4番に入る試合がありましたが、それまで4番だったミゲル・サノーに何かがあったのかなと。もちろん意図があれば構わないのですが......。いずれにせよ、打線はけっこう変わりますよね。

【継投は"行き当たりばったり"な感じ】

── ピッチャーの起用に関してはいかがですか?

今中 リリーフで出るピッチャーの順番も変えている感じですよね。仮に「今日は一番手で準備しといてくれ。次の日は3番手、4番手あたりを考えているから」と伝えられた場合、準備の仕方やモチベーションの持っていき方がちょっと難しくなります。準備ができていないのかな、という場面も時々見られますが、ひょっとするとそのあたりがうまくいっていないのかもしれません。特に今の選手は、何日か前に言ってあげたほうがいいような気がします。

── 継投もうまくいっていない?

今中 内部事情はわかりませんが、外から見ている限りでは"行き当たりばったり"な感じもします。打たれたピッチャーをなんとか立て直そうと、次の試合などでまた起用するけど、またダメだったり。情の部分と、勝負に徹しなければいけない部分が混在してしまっているような印象です。

 8月下旬や9月のシーズン終盤は、"勝つための近道"を導き出さなければいけません。選手の過去の実績は関係ない。調子が上がらないピッチャーを使い続けてしまうと、取り返しがつかない状況になりかねません。

── 若手のなかでは、3年目の草加勝投手(2023年ドラフト1位)は、今季22試合に登板して防御率2.53と好投しています。

今中 ただ、ビハインドでの登板がほとんどなんですよ。そろそろいい場面で使ってもいいかもしれません。橋本侑樹が打ち込まれているケースが多くなっているので、その代役で使ってみるのもひとつですしね。

── 調子がいい選手を使うことは、打線も一緒でしょうか。

今中 そうですね。岡林勇希がまったく打てていませんが、実績があるからか「いつか打ってくれるだろう」と復調を待ち続けているように見えます。しかし現状は、ずっと使い続けて凡打の繰り返し。確かにセンターを守る選手がいなくなったという事情はありましたが、どうしても過去の実績を重視しているように感じてしまうんです。

 ピッチャーも野手も競争させていかないと、いつまでたってもチームが上がっていけません。中日に限ったことではありませんが、下位にいるチームは課題が山積みです。

【プロフィール】

◆今中慎二(いまなか・しんじ)

1971年3月6日、大阪府生まれ。左投左打。1988年のドラフト1位で、大産大高大東校舎(現・大阪桐蔭高)から中日ドラゴンズに入団。2年目から二桁勝利を挙げ、1993年には沢村賞、最多勝(17勝)、最多奪三振賞(247個)、ゴールデングラブ賞、ベストナインと、投手タイトルを獲得した。また、同年からは4年連続で開幕投手を務める。2001年シーズン終了後、現役引退を決意。現在はプロ野球解説者などで活躍中。

浜田哲男●取材・文 text by Tetsuo Hamada

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