画像はイメージです結婚相談所「パートナーエージェント」のタメニーが提供する低価格結婚式サービス「スマ婚シリーズ」は2026年4月〜6月の成約件数が196件で、前年同期間比でおよそ3割減少しました。施行件数も5.2%の落ち込みを記録。
結婚式は低価格化と高付加価値化の二極化が進むと言われてきましたが、高級志向への一極化が進行する可能性も否定できません。節約志向の高まりで、結婚式を挙げる意義が問われています。
◆営業強化も…苦戦するスマ婚
スマ婚は有名なホテルや結婚式場と提携し、結婚式をプロデュースするサービスです。一般的な費用の半分程度のコストダウンも可能なことから、コストパフォーマンスを重視するカップルから好評を博してきました。
2025年にはハウスウエディングのエスクリと提携し、「ラグナヴェール TOKYO」などの人気会場を使える体制を構築。スマ婚は人材を拡充して営業力を強化し、2025年4月〜6月は成約件数が前年同期間比で22.7%増加を達成しました。
会場ネットワークの拡大と営業力の強化により、今期も数字を伸ばしてもおかしくはありません。しかし、2026年4月〜6月の成約件数は196件で、エスクリと提携する前の2024年同期間より24件少ない数値にとどまりました。
ツカダ・グローバルホールディングが提供する「楽婚」は、2022年1月〜6月の施行件数が2019年の同期間比で92.3%まで回復したと発表。同じく割安サービスである「家族挙式」は104.9%で、コロナ前よりも増えた実績をアピールする展開です。
一方、近年のIRでは、低価格サービスの件数拡大よりも婚礼の高付加価値化を前面に打ち出しています。同社は件数ではなく、価値を重視する姿勢を前面に打ち出しました。2025年の会社全体の婚礼単価は422万円で、前年比で5.2%(20万7000円)増加を果たした格好です。
ツカダ・グローバルホールディングのような大手ブライダル企業にとって、単価の安いサービスを大量に獲得する意義は失われつつあります。人件費などの高騰で1件当たりの利益が少なくなっているためです。
従来型の挙式・披露宴を必ずしも選ばず、フォトウエディングや食事会など別の形を選ぶカップルも少なくありません。リクルートブライダル総研の「結婚マーケット調査2025」によると、「披露宴・ウエディングパーティー」の実施率は43.1%でした。一方で、写真撮影は61.5%、何らかのウエディングイベントの実施率は73.5%に達しており、従来型の披露宴だけにこだわらない結婚スタイルの多様化が進んでいます。
コロナ禍で結婚式を挙げる前提が崩れ、インフレによる節約志向の高まりで結婚式自体の意味が問われるようになったと考えられます。
◆「400万円超えの式」に問われる価値
新婚旅行は国内のリゾート地で手軽に楽しみ、住宅ローンは返済期間50年の超長期ローンを組むのも当たり前になってきました。堅実な将来設計をするカップルに対して、結婚式の魅力が薄れている可能性は十分にあるでしょう。
結婚式場運営大手テイクアンドギヴ・ニーズの足元の婚礼単価は427万6000円。2023年3月期は376万4000円でした。招待する人数によって価格は大きく変動しますが、高単価傾向は加速しています。
その価格に見合う価値があるかどうかが、これまで以上に問われるようになったのです。
これはブライダル業界全体に言えることですが、悪しき事例が多かったことも事実です。公益財団法人日本ブライダル文化振興協会は、消費者センター等に寄せられる以下のような消費者トラブルを紹介しています。
「半年前契約した結婚式は、プランナーの説明と違い高額な追加費用がかかる。キャンセルしたいが、高額な解約料を支払いたくない」
「結婚式の契約後打ち合わせの度に見積金額が高くなり、解約を申し出たら、直近の一番高額な金額を基準に解約料を算定され不満だ」
当初の見積額を大幅に超過するケースが多いのです。映像演出、装花、料理など、華やかなものにすると途端に高額になるのはよくある話。「一生に一度の晴れ舞台」というキーワードで納得させようとするウエディングプランナーも見受けられます。
コストパフォーマンス重視の時代に、サービスが合わなくなってきたのかもしれません。
◆「会場選定先行モデル」は終焉か
ただし、結婚式の高単価への一極集中化はビジネスチャンスでもあります。特に個人で活動するウエディングプランナーや、少数精鋭組織でサービスを提供するプロデュース会社に有利に働くのではないでしょうか。それによって顧客満足度が高まる可能性もあります。
従来の結婚式場ビジネスは、会場を持つ会社がゼクシィなどの情報誌に大量に広告を出稿し、集客するモデルでした。会場選びが結婚式の入口であり、大手ブライダル企業に有利な状況が続いていたのです。これが同じような結婚式を大量生産するモデルの背景となっていました。
しかし、現在はインスタグラムなどのSNSが集客フックとなりつつあります。理想とする結婚式の形を知り、そこから問い合わせをする流れへと少しずつ様変わりを見せる状況です。ここに高単価化が加わると、プロデュース力が問われるようになるはずです。個性やセンス、提案力が重要になってくるでしょう。
すでにカップルとフリープランナーをマッチングする「ブラプラウェディング」のようなサービスも登場しました。人を軸にして理想の結婚式を探す時代にも入っています。
会場で働く会社員型のプランナーの場合、「招待状をこの中からお選びください」などのやり取りになりがちです。一方、プロデュース全般を取り仕切るプランナーであれば、「今回のテーマを考えると、この招待状がいいと思います。なぜなら……」と個別にチューニングした提案をしてくれるでしょう。これにより、打ち合わせ時のストレスが軽減される傾向にあり、顧客満足度を向上させる可能性を秘めているのです。
ブライダル業界は新たな時代へと足を踏み入れたように見えます。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界