画像提供:マイナビニュースいまでは定番メニューを中心に全国で展開する「ゆで太郎」ですが、現在のラインアップにたどり着くまでには、数え切れないほどの商品開発の失敗があったといいます。たとえば約15年前、当時260円だった「もりそば」に対し、600円で発売した「海老天そば」はほとんど売れませんでした。
丸天そば、カニカマ天丼、とろろ……数々の“失敗作”から見えてきた「売れる商品」の条件とは。『ゆで太郎の儲かる仕組み - 22年連続黒字を支えるがっちり経営術 -』(池田智昭/ワニブックス)から抜粋してご紹介します。
○失敗作が次のヒットを育てる
ゆで太郎には、実は「これが名物」と呼べるメニューがありません。
売れ筋を見れば、飯ものはかつ丼とカレー、冷たいそばはもりそばと薬味そば、温かいそばはかき揚げそば。派手さはありませんが、毎日食べても飽きない定番ばかりです。しかし、このラインアップにたどり着くまでには、数え切れないほどの失敗がありました。
最初に大きく失敗したのが、九州の丸天を使ったそばです。丼いっぱいのさつま揚げをそばにフタをするようにのせた商品で、商品部から「面白いから売れると思います」と提案され、私も賛成しました。
確かに見た目はインパクトがありますし、味も悪くありません。でも、売れませんでした。理由は簡単です。そばの味が変わらなかったからです。ただ具材がのっているだけでは、お客様は満足しません。
一方、かき揚げは食べ進めるうちに崩れ、油や玉ねぎの甘みがつゆへ溶け込みます。そばそのものの味が変わるから人気がある。ここで、「具材はそばを美味しくするものでなければならない」ということを学びました。
価格帯についても、痛い失敗があります。15年ほど前、海老天そばを600円で販売したことがありました。当時、もりそばは260円でしたから、お客様が普段食べているものの倍以上ですね。まさに挑戦でしたが、ほとんど売れませんでした。
ここで学んだのは、基準となる価格帯を大きく外すと売れない、という当たり前のことです。2026年春の大海老天そばは980円ですが、現在のもりそばは430円です。基準価格そのものが変わったことで、お客様も「高過ぎる」と感じなくなりました。価格は絶対額ではなく、普段食べている価格との比較で決まる。これも大きな学びでした。
カニカマ天丼も失敗しました。言い訳がましいのですが、これも私自身は最初から気が乗らなかったんです(苦笑)。
ここで学んだのは、「中途半端な素材」は、お客様に伝わらないということです。逆に「ほぼ海老かき揚げ」のように、海老を主役に見せる商品は、見せ方にも徹底的にこだわっています。お客様が期待する価値を、見た瞬間に伝えることが大切なのです。
とろろも長く苦戦した商品でした。価格を変え、つけとろにし、芋の種類を変え、提供方法まで見直しました。「ネバリスター」という品種を試し、さらに100パーセント大和芋で袋入りのままで提供する現在の形になってから、ようやく支持されるようになりました。
素材だけでも、見せ方だけでも足りません。両方が揃って初めて長く売れる商品になります。こうして振り返ると、失敗した商品には共通点があります。
「価格だけが先走る」「珍しさだけを狙う」「面白さだけを優先する」。
どれも、お客様の日常食という感覚から少し離れていたため売れなかったのです。私は売れなかった商品ほど、丁寧に振り返ります。価格にはどこに壁があるのか。具材はどこまでそばを美味しくできるのか。日常食として受け入れられる範囲はどこまでなのか。
売れた商品は成功を教えてくれます。でも、売れなかった商品は、次に進むべき道を教えてくれます。だから私は、失敗作こそ会社の財産だと思っています。
まとめ
失敗は終わりではない次に売れる商品の設計図である
○『ゆで太郎の儲かる仕組み - 22年連続黒字を支えるがっちり経営術 -』(池田智昭/ワニブックス)
「駅前一等地には出店しない」「職人は育てない」「薄利多売にも頼らない」外食産業の常識を次々と覆し、全国200店舗超へと成長した「ゆで太郎」。その成功の裏には、競争しない立地戦略、職人技を分解して誰でも再現できる仕組み化、利益率より来店頻度を重視する価格設計があった。本書では、22年連続黒字を支えた経営の考え方を初公開。人手不足時代の組織づくり、フランチャイズ運営、商品開発、価格戦略、外国人雇用まで、「再現性のある経営」の本質を余すことなく明かす。外食業はもちろん、あらゆる業種の経営者・管理職に役立つ一冊。