
「こんな嘘は、大罪ですよ。命に関わるような汚染物質が垂れ流され、しかも米軍が『われわれが流した』と認めていたにもかかわらず、その事実を隠してきたわけです」
そう憤るのは、日米関係や基地問題に詳しい、沖縄国際大学大学院の前泊博盛教授だ。
沖縄県内の米軍基地周辺で問題となってきた、発がん性物質である有機フッ素化合物「PFAS」汚染をめぐり、驚くべき事実が明らかになった。
『沖縄タイムス』によれば、在日米軍は2023年12月、嘉手納基地と普天間飛行場がPFASの汚染源であることを日本政府に認めていた。しかも、米側はその事実を公表しても構わないとしていたという。
■「政府の対応はあまりにも怠慢」と玉城知事
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ところが、日本政府は公表しなかった。
「PFASは自然界で分解されにくく、体内にも蓄積しやすいことから“永遠の化学物質”とも呼ばれています。PFOSやPFOAなどの種類があり、これらへの曝露と、発がんや免疫系への影響、出生時体重の低下、コレステロール値の上昇などとの関連が報告されているんです」(地元記者)
沖縄では、北谷(ちゃたん)浄水場の水源などから高濃度のPFASが検出されてきた。
「2022年に市民団体が基地周辺など6市町村の387人を対象に行った血液検査では、PFOSの血中濃度が全国調査の平均と比べ最大3.1倍にものぼっています」(前出・地元記者)
今回の報道を受け、沖縄県知事選の候補者である現職の玉城デニー知事(66)は自身の公式YouTubeチャンネルに公開した動画でこう語った。
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「基地が汚染源であることが分かったにもかかわらず、そして、その事実を公表してもよいと米側が言っているにもかかわらず、なぜ日本政府は公表を拒むのでしょうか」
さらに、「政府の対応はあまりにも怠慢です」としたうえで、基地内への立ち入りや日米地位協定の抜本的改定を求めた。
■解決できない問題は「なかったこと」にする
では、なぜ日本政府は隠したのか――。
「PFASは“永遠の化学物質”と呼ばれるほど分解が難しく、すでに地下水まで汚染されています。しかも、米軍が汚したことがはっきりすれば、日米安全保障の問題に直結します。その事実が明らかになれば、日米安保に対する否定的な国民世論が起きる可能性がある。だから、『なかったこと』にしておこうとしたのでしょう。
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この日本では、解決できない問題は先送りする。そして、先送りしても解決できなければ、今度は『なかったこと』にする。今回も、そういう問題解決の手順に乗ったのだと思います」(前泊さん)
しかも、前泊さんによれば、沖縄県は以前から汚染源が基地内にある可能性を示すデータを、防衛省の地方機関である沖縄防衛局に示していたという。
「嘉手納基地の中から流れてくる大工廻(だくじゃく)川では、PFOSが基準値の約34倍、下流の比謝(ひじゃ)川でも約12倍に上る汚染が2019年に確認されていました。沖縄県はこうした証拠を示して、基地内への立ち入り調査を求めてきたのです」
それでも沖縄防衛局は、「米側は『われわれが原因ではない』と言っている」「米側が調査を拒否している」と説明してきたという。
「ところが今回、蓋を開けてみれば、米軍は自らが汚染源であると認めていた。仮に、日米安保を守るために隠蔽していたのだとすれば、そもそも日米安保とは、何から何を守るための安全保障なのでしょうか」
■米軍が汚した水、浄化費用は沖縄県が負担?
さらに問題なのが、PFASを取り除くための費用だ。
北谷浄水場ではPFAS除去のため活性炭を使用しているが、防衛省は2026年1月、県が求めていた交換費用への補助を拒否した。
「米軍が汚したものを、なぜ沖縄県が負担しなければならないのでしょうか」
前泊さんは、防衛省が過去にPFAS対策の設備改良費を補助していたことにも注目する。
「『米軍は汚していない』と言いながら、なぜPFOSを除去するために防衛省がお金を出していたのか。防衛省が費用を出していたこと自体、汚染が米軍由来であると分かっていたことを示しているのではないでしょうか」
おりしも沖縄では県知事選の真っただ中だ。今回の問題は選挙に影響するのだろうか。前泊さんはこう見ている。
「沖縄では、こうした問題があまりにも多すぎるので、『いまさら』という感じだと思いますよ。『またか』という感覚や、ある種の諦めがある。今回の問題が大きな争点になることはないでしょう」
米軍基地によって「命の水」が汚染され、米軍自身が汚染源だと認めても、日本政府は県民に知らせない。そして浄化の負担まで沖縄側にのしかかる。
「米軍の駐留によって国民の命が守られるどころか、むしろ脅かされている。それにもかかわらず、“安全保障上の理由”でその事実を隠蔽する。日本政府は、命を守るどころかまったく逆のことをしているわけです」
いったい、誰のため、何のための「安全保障」なのか。改めて問われている。
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