サッカー日本代表・森保一監督が考える次のフェーズ 「1番から11番まで、どういう選手が必要なのか明確にしたい」

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2026年09月16日 10:20  webスポルティーバ

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森保一監督インタビュー@後編

◆森保一・前編>>「ブラジル戦の失点。相手をマークしていない選手がいた」

 日本代表の森保一監督は、「負ければ必ず『たられば』で語られる」と言う。スタメンのチョイスや選手交代が勝利につながらなければ、「結果の責任はすべて監督にあるので、こうすればよかったと言われるのは当然です」とも話す。

 そのうえで、北中米ワールドカップのブラジル戦に、違う角度から光を当てる。これまでほとんど語っていない敗因に触れた。

   ※   ※   ※   ※   ※

── ブラジル戦の失点について、「相手をマークしていない選手がいる」というお話がありました(インタビュー前編を参照)。

「マークにつくのを怠っているわけではないんです。日本の指導者養成の言葉でいう『チャレンジ&カバー』を意識することで、マークにつききれていない選手がいた、ということです」

── チャレンジ&カバーは、守備の原則です。日本人選手の身体に染みついていると言ってもいい。

「(ガブリエウ・)マルティネッリに喫した2失点目の場面で、ブルーノ・ギマランイスがペナルティアークのなかでパスを受けた。(佐野)海舟(マインツ)がついているけれど、抜かれたら正面からシュートを打たれてしまう。その予測に基づいて、トミ(冨安健洋/当時アヤックス、現クリスタル・パレス)はほんの少し左側(内側)へポジションを取った。

 その瞬間に、トミが見ていたマルティネッリへパスをつながれた。カバーを意識したトミの判断は間違いではないのですが、あらかじめ絞るのではなく、マルティネッリとの距離を詰めたままにしておく働きかけを、私ができていれば......。1メートルもない距離の違いが、失点か否かを分けるので」

── 日本サッカーの根本的な体質が、あの失点を招いた......。

「1失点目も、クロスを入れたセンターバックにプレッシャーをかけられていないんです」

── カゼミロが決めた1失点目のシーンでは、ゴール前の人数が日本は7人、ブラジルは4人でした。しかし、カゼミーロは大外でフリーになりました。

「カタールワールドカップ以降の2期目は、1期目よりも『局面で勝っていこう、一人ひとりの責任範囲を広げていこう』ということを意識して、選手たちと取り組んできました。

 もちろん、誰かがやられたらカバーするのは、日本人のよさです。一人ひとりが局面で勝っていきながら、チャレンジ&カバーで"水漏れ"を許さない。それは間違いではないけれど、どこかでまだ、カバーという保険をかけすぎているところはあるのです」

【なぜもっと背中を押せなかったのか】

── 相手の個が強いと、なおさら保険をかけたくなります。カバーの意識は強くなる。

「お互いにカバーし合える、助け合えるのは日本人のよさです。それゆえに守れている局面があれば、守れていない局面もある。保険をかけすぎないように、とやってきたなかで、ブラジル戦でその後押しができなかった。自信を持って個で局面を制していこうと、なぜもっと選手の背中を押せなかったのか......という悔しさがあります」

── ヨーロッパでプレーしている選手は、個で問題を解決する環境でプレーしているわけですよね?

「そうです。ヨーロッパでプレーしている選手にとってはそれが日常で、日本代表だからといってあまり日本型に戻してはいけない、ということは気をつけていました。日本代表として集合した時も、組織、組織にならないようにと」

── そのバランスは難しいですね。

「難しいです。活動のたびに積み上げていくことを念頭に置きつつも、振りきってやるべきなのか、とも考えました。守備なら、前からガンガン奪いにいくのが理想じゃないですか」

── ハイライン、ハイプレスで。

「ただ、将来的にそうなりたいからトライしても、目前の結果を取り逃してチームが崩れたりしたら、未来へつながる土台作りにはなりません。

『和を以て貴しと為す』という言葉がありますが、チーム一丸となってタフに粘り強く、最後まで戦い抜くのは、日本人の優れた精神性です。それを知っていながら『個で勝っていけ』と強調しすぎるのは、日本代表としてどうなのかという葛藤があります」

 チャレンジ&カバーの原則を否定せず、個で局面を制する意識を習慣化していく。攻守において1対1で勝ちきる強さを高め、組織に寄りすぎない連係と連動のバランスを見出す──それこそが、日本型のゲームモデルになるのだろう。

【小手先だけでは世界に通用しない】

── 日本サッカー協会は『ジャパンズ・ウェイ』というフィロソフィーを掲げています。哲学ですから総論的なものとなっていますが。

「(現場レベルでは)もう少し踏み込んでいくフェーズになってきているかな、と思います。システムがどうこうではなく、1番から11番まで、その番号でどういう選手が必要なのかは、できるだけ明確にしたいのです」

── なるほど。

「たとえばウイングバックなら、三笘薫(ブライトン)、伊東純也(ゲンク)、堂安律(フランクフルト)、中村敬斗(リヨン)、前田大然(イプスウィッチ)らがプレーしていて、彼らは上下動を繰り返して守備をしながら、攻撃で自分のストロングポイントを出している。

 日本人は技術力を重んじるところがあり、それが評価基準になる場面が少なくないですけれど、小手先のうまさだけでは世界で通用しません」

── それはもちろん。

「日本代表の選手たちには、自分のプレーがメッセージになるつもりでやってほしい、と話しています。たとえば堂安なら、『10番の選手がこれだけ献身的に守備もするところを見せてほしい』と」

── 日本代表選手のプレーは、育成年代にとってのプレーモデルになりますからね。

「日本の全体的な方向性とか土台作りにつなげる意味で、日本代表がやっていることがみなさんの指針になれば、と。我々の普段の活動が選手育成のヒントになれば、ということは考えています」

 日本型のゲームモデルを構築した先には、ワールドカップ優勝というターゲットがある。そして、世界で8カ国のみが知る「最高の景色」を見るためには、サッカーがナショナルスポーツに、日本代表の動向が国民的な関心事とならなければならない。

── 北中米ワールドカップを前に「優勝を目指す」と公言したのは、本気で目指さない限りは優勝できない、という思いが出発点なのでは?

「チャンスは間違いなくあると、本気で考えていました。でも、立場としてはダークホースでした。将来的には本命として優勝を狙うと、サッカーファミリーのみなさんに意識してもらう。その狼煙を上げる大会にするんだ、という思いでした。ワールドカップ優勝を、より多くのみなさんに我が事として考えてもらいたい。そのための発信という意味合いはありました」

【団結すれば見える景色を変えられる】

── そう言われると、僕自身は優勝するために何をしなければならないのか、という考えに立っていませんでした。

「それぞれの立場で、世界一になるって何だろう、どうすればいいんだろう、と考えてもらえたらうれしいです。メディアのみなさんなら『世界一を目指すなら、ここはこうしないといけないだろう』とか、『ここはどうなんだ?』といったように、すべてを否定するのではなく、ちゃんと積み上がっているかという問いかけをしてくれたら、と」

── 世界一になるために、自分が何をしなければならないのかを、それぞれの立場で考えると。

「日本人は一度目標を立てたら、絶対に到達できる。我慢強く継続性を持って、献身的に、勤勉にがんばることができる。バトンをつないで目標へ向かっていく。それは自信を持って言える。だから、『ワールドカップ優勝を目指す』と発信しました。サッカーファミリーがその思いのもとに団結すれば、見える景色を変えることができると信じています」

── 言えば達成できるわけではないですが、言わなければ現実的な目標にはなりません。

「今の日本サッカー界なら、言わずとも近づいていけると思います。ただ、そのスピードを上げるために発信するべきだろうと」

── 9月からの活動でも、ワールドカップ優勝という目標からの逆算でチームを強化していく。

「アジアカップ優勝を狙うのはもちろんですが、アジアのトップを目指しつつも世界を意識する。それはこれまでと変わりません。目前の試合で結果を追い求めながら、どんな相手にも勝てる力をつけていく。それに尽きると思います」

 北中米ワールドカップの結果は、誰にとっても満足できるものではない。森保監督の指導力があらためて問われ、来年2月までの続投を疑問視する声もある。

 そうした意見に、納得できるところはある。そのうえで言えば、森保監督は日本代表の歴史を踏まえながら目前の戦いに挑み、5年後、10年後を見据えている。

 篤実な指揮官は、ロマンとリアルを両立させているのだ。

(了)


【profile】
森保一(もりやす・はじめ)
1968年8月23日生まれ、長崎県長崎市出身。1987年に長崎日大高からマツダ入り。1992年にハンス・オフト率いる日本代表に初招集され、翌年「ドーハの悲劇」を経験。サンフレッチェ広島→京都パープルサンガ→ベガルタ仙台を経て2003年限りで引退。2012年に広島監督に就任して3度のJ1制覇。2017年から東京五輪代表、2018年からA代表を率い、2022年カタールワールドカップでベスト16入り。2026年北中米ワールドカップ後も続投して2027年アジア杯まで指揮する。日本代表通算35試合1得点。ポジション=MF。身長174cm。

戸塚 啓●取材・文 text by Kei Totsuka

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