人間に紛れて生活する怪物(けもの)たちの戦いがはじまる/『舞台「怪物事変」‐東京編‐』ゲネプロレポート

0

2026年09月18日 20:10  クランクイン!

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

クランクイン!

『舞台「怪物事変」‐東京編‐』ゲネプロの様子  (C)藍本松/集英社 (C)舞台「怪物事変」東京編製作委員会
 藍本松による漫画を原作とした『舞台「怪物事変」‐東京編‐』が、東京・シアターHにて開幕。本作では総合演出を毛利亘宏が務めており、人間に紛れて生活してきた怪物(けもの)たちのドラマや戦いを舞台ならではの表現で描いた一作だ。初日を前に実施されたゲネプロの様子をレポートする。

【写真】富本惣昭が夏羽を熱演!『舞台「怪物事変」‐東京編‐』ゲネプロの様子

◆映像や照明など、作品を彩る演出の数々

 とある田舎で叔母一家とともに生活する少年・日下夏羽(富本惣昭)は、怪物専門の探偵・隠神鼓八千(和泉宗兵)と出会う。「内臓を食い荒らされた家畜の死体」の調査で東京から訪れたという隠神は、夏羽と関わる中で、彼の正体が屍鬼(クーラー)と人間の間に生まれた半妖の子であることを知り、東京へと彼を連れ出すことに。

 自身も化狸(ばけだぬき)であるという隠神が東京で営んでいるのは、人間と怪物の間に立ち、相談ごとや喧嘩の仲裁など、なんでも請け負う「隠神探偵事務所」。ここでは夏羽と同じく蜘蛛(アラクネ)との半妖の子・蓼丸織(田中尚輝)と、雪男子(ユキオノコ)の少年・岩木山雪里白那之五十六子晶(大見拓土)が働きながら暮らしていた。事務所に届いた依頼をこなしながら生活することになった夏羽は、さまざまな怪物たちと出会いながら徐々に成長していく。

 舞台の幕が開くと、鍬を持ちながら畑仕事をする夏羽が登場。スクリーンには大自然が広がっており、まるで私たちも田舎に来たような臨場感に包まれていく。原作を読んでいる方はご存知かもしれないが、本作では夏羽が育った村や東京、そして森の中など、場面転換がかなり多い。しかし映像をうまく使いこなすことで、限られた舞台上でも存分に情景を表現しており、目を見張るような仕上がりになっていた。

 また筆者が最も心を動かされたのは、劇中でキャラクターたちを照らす“照明”だ。白、赤、ピンク……と、登場人物たちの感情やシーンに合わせて輝くライティングは、原作、アニメとメディアミックスも豊富な『怪物事変』にとって、舞台ならではの表現といっても良いのではないだろうか。

 例えば、物語序盤の夏羽が半妖化してしまう場面では赤、バトルシーンでは紫の照明を使用することで、怪物の力の強さや怪しさをより一層引き立てている。さらに警視庁で多大な権力を持ちながらも、夏羽の持つ命結石を狙う狐・飯生妖子(大湖せしる)の登場時には一面がピンク色で染まったりと、キャラクター性が観客にも分かりやすく示されていた。

◆怪物たちとの交流から見えてくる夏羽の変化

 育ってきた環境から感情が欠落していたり、ピザを食べたことがなかったりと一般常識を知らない夏羽だが、東京での日々を通じて少しずつ進歩していく。当初は隠神からの「親に会いたいか」という質問に関しても否定的な意見だったが、依頼を通じて親子の愛や絆を目にした後は「両親に会いたい」という本音を口にしたりと、彼の人間らしさが見てとれる。

 また中盤での蚊婆(かのんば)との戦いでは、「事務所のみんなを守れないのはイヤだな」「織も晶も失いたくない」と、仲間を守るための強さを求めるような姿勢が垣間見えた。友だちはおらず、日々働くだけだった夏羽にとって「隠神探偵事務所」のメンバーたちの存在は十分心の支えになっていたはず。そう実感させられるようなシーンだった。

 第1幕の終盤では、自分なりの強さや戦い方を見出したことによって、これまで遠ざけていた“家族”について向き合うことを決めた織。彼の出身地である群馬県へと向かう一行の姿も賑やかで可愛らしい。そして第2幕では織や晶の出生について明かされており、目の離せない展開が続いていた。

 人間とはちょっと違う種族らの活躍を描いた本作。ストーリーだけでなく、キャラクターたちの変化や舞台表現に注目すると、より物語が楽しめるはずだ。(取材・文:渡辺美咲)

 『舞台「怪物事変」‐東京編‐」は、9月27日まで東京・シアターHにて上演。

    ランキングゲーム・アニメ

    前日のランキングへ

    ニュース設定