
米国時間の9月16日、イーロン・マスク氏は自身のXアカウントで「Starlink V3衛星群の展開が今月から開始されます。最終的には、現在の1万1000基の衛星群の100倍以上の帯域幅を提供する予定です」と投稿しました。これは宇宙を舞台とする通信事業が新たなフェーズに入ることを意味します。
このポストは、米国時間の9月22日に予定されている超大型ロケット「Starship(スターシップ)」の14回目の試験飛行を指します。今回の試験飛行ではスターシップが初めて地球周回軌道にのり、約10時間をかけて地球を6周しつつ、26基のスターリンクV3衛星を放出する計画です。
スターリンクV3は、SpaceXが開発した第3世代の通信衛星。SpaceXのWebサイト等に衛星のサイズ等は掲載されていませんが、マスク氏は25年5月の決算説明会で「ボーイング737ほどの大きさ」と例えたそうです。
ボーイング737といえば、世代によりますが全長28〜42mもある旅客機。いかにスターリンクV3が大きいか想像できると思います。また、海外メディアの中には太陽光パネルを広げたスターリンクV3は60m以上になると報じているものもあります。いずれにしても、これまでの通信衛星とは一線を画す大きさといえそうです。
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そんなスターリンクV3は、折りたたんだ状態でも7m前後、重量は2t前後といわれています。スターシップでの打ち上げを前提として設計された衛星といえるのかもしれません。
SpaceXは、25年8月に実施したスターシップ10回目の飛行試験の時、スターリンクV3の模擬衛星8基を使った展開試験に成功しています。当時の映像には、ペイロード(貨物室の意味)のドアを開け、模擬衛星を約1分おきに展開、放出する様子が映っていました。
●ダウンリンクは最大1Tbps
スターリンクV3衛星は、新しいフェーズドアレイアンテナを使い、アップリンクが最大160Gbps、ダウンリンクは最大1Tbpsを実現する設計です。これは従来のV2衛星と比べてアップリンクが約22倍、ダウンリンクは約10倍となる数字です。
今回のミッションで打ち上げられる26基が稼働を始めれば、SpaceXの衛星コンステレーション(軌道上に多数の衛星を配置して1つのシステムとして運用する仕組み)は一気に26Tbpsの容量を追加できることになります。これは、従来のファルコン9ロケットによるV2ミニスターリンク衛星の1回の打ち上げと比較して約10倍の容量です。
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さらに今後は、最大100tを誇るスターシップの積載可能重量を生かし、1回の打ち上げで60基ものV3衛星を打ち上げる計画です。超大型ロケットと大型通信衛星を使い、通信網を構築する効率を大幅に向上させるSpaceX。イーロン・マスク氏のいう「現在の100倍以上の帯域幅(通信速度)」の実現も近いかもしれません。
スターリンクは現状、企業や個人に向け、専用アンテナを使った衛星通信サービスとして提供されています。アンテナはルータや無線LANも内蔵し、バッテリーなどで給電することもできるため、日本でも光回線のない地域や移動用、あるいは災害発生時の通信手段などに使われています。まだ家庭のネット回線としては一般的とはいえませんが、スターリンクV3衛星によって高速化や低コスト化が進めば、今後は状況が変わるかもしれません。
一方、スターリンクV3衛星のために開発された技術の数々は、今後打ち上げる予定の「Starlink Mobile Gen 2」衛星にも活用されます。この衛星は、地上のスマートフォンと直接通信し、5Gと同レベルの通信速度を実現するというもの。すでにKDDIやドコモはSpaceX傘下の通信会社と契約し、今後1〜2年のうちに高速なデータ通信と音声通話を提供すると発表しています。
将来的に日本の多くのユーザーも恩恵を受けるであろう新たな宇宙通信サービス。その第一歩となるスターシップ14回目の試験飛行に期待したいと思います。
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