
《秋篠宮皇嗣殿下、次世代の悠仁親王殿下までの皇位継承は、これまでの儀式(立皇嗣の礼)や『皇室典範』により、既に確定しているということです》
9月5日、自身のXにこんなポストをしたのは高市早苗首相(65)だ。先の国会で成立した「皇室典範改正法」について「女性天皇への道を閉ざした」などの批判の声が高まっていることに対する反論だった。高市首相は本法の目的は「皇族数の確保」だとしつつ、冒頭のように主張したのだ。
これまで、記者会見や国会での答弁をできるだけ避けてきた高市首相。Xでの情報発信を強めているが、高市首相のXは「個人のアカウントによる投稿。行政文書ではない」(木原稔官房長官の7月23日の発言)というように、“私的”な意見表明に過ぎないと指摘されている。はたして、識者はどう考えるのか。話を聞いた。
■《ゆるがせにしてはならない》がはらむ自己矛盾
「高市首相には当初、自分が皇室典範を改正したという達成感があったのではないでしょうか。ところが『愛子天皇への道を閉ざした』という批判が強まった。そこで『女性天皇は議論の対象ではなかった』『立法府が決めたこと』と弁明している。私には責任を立法府になすりつける“言い訳”にしか見えません」
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そう語るのは神道学者で、皇室研究者の高森明勅さんだ。
特に《悠仁親王殿下までの皇位継承は既に確定している》という主張を問題視しているという。高市首相は2020年に行われた「立皇嗣の礼」を根拠と挙げた。これは皇太子ではない秋篠宮さまが現時点で皇位継承順位第1位の「皇嗣」であることを示す皇室史上初めての儀式だった。
「しかし、次の天皇として即位することが確定している皇太子とは違って、傍系の皇嗣は暫定的な立場に過ぎず、前代未聞のセレモニーをあえて挙行しても皇位継承が確定することにはなりません」
もう一つの根拠である皇室典範も、国会で改正できる法律だ。
「皇室典範を改正して女性天皇を認めるだけで、今の直系長子を最優先するルールによって敬宮殿下(愛子さま)が皇位継承順位第1位の皇太子になられます。ですから『皇室典範により、既に確定している』との説明は成り立ちません」
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さらに高市首相は、《悠仁親王殿下までの皇位継承の流れをゆるがせにしてはならない》と繰り返しているが、高森さんは指摘する。
「確定しているなら、『してはならない』と言う必要はありません。この表現は、裏を返せば『することができる』ことを意味している。『確定している』というのは客観的な事実。一方、『ゆるがせにしてはならない』というのは、“そうすることはよくない”という主観的な価値判断です。この2つは、明らかに論理的に矛盾します」
■「女性天皇は歴史に鑑みて不自然ではない」
では、皇室の方々はどうお考えになっているのか。今年6月、オランダ、ベルギー公式訪問に際して臨まれた記者会見で、天皇陛下は皇室典範の改正について「国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」と述べられた。
さらに、ご自身が上皇ご夫妻の姿を間近で見ながら育った経験を振り返り、愛子さまについても「愛子にもいろんなことを教えていきたい」と語られている。
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「ご自身が上皇陛下から学ばれたのと同じように、どのような心構えで国民と接し、振る舞われるべきかを敬宮殿下に伝えられようとなさっています。これこそ、生きた最高の帝王教育と言えるでしょう」
一方、秋篠宮さまは今年8月、改正皇室典範について「私自身もいろいろと考えるところはありました」としたうえで、6月の天皇陛下の発言を「そのとおりだと私は思っています」と述べられた。
さらに「娘や息子たちについては、親としては幸せに歩んでいってほしい」と語られている。
「悠仁殿下だけを“将来の天皇”として特別に語るのではなく、『娘や息子たち』と並べていらっしゃいました。そして、将来の天皇になることが決まっているという前提なら、はたして『親としては幸せに歩んでいってほしい』という言葉をお選びになるでしょうか。
私は、秋篠宮殿下ご自身も、天皇皇后両陛下にお子さまがおられる以上、男女の性別に関わりなく直系による継承が望ましいと考えておられると拝察しています」
過去には、明確に女性天皇に言及した皇族もいる。
「敬宮殿下ご誕生直後の2002年、高松宮妃喜久子殿下は『婦人公論』への寄稿で、皇室典範第1条をどうするか検討する必要があるとしたうえで、『女性の皇族が第127代の天皇さまとして御即位遊ばす場合』を考えることは、『長い日本の歴史に鑑みて決して不自然なことではない』と述べられています」
現在の天皇陛下は第126代。愛子さまご誕生を祝う文章で「第127代」の女性天皇に言及されたことは注目に値するという。
「皇室の方々のお言葉をたどれば、“何が何でも男系男子でなければならない”というお気持ちがあるとは、私には到底思えません」
そもそも「男系男子こそ皇室の伝統」という主張にも疑問がある。
「男系男子に限定するルールが法的に明文化されたのは、明治時代の旧皇室典範からです。それ以前には8人10代の女性天皇がいらっしゃった。しかも当時は側室制度がありました。現在の一夫一婦制のもとで男系男子だけに限定する制度は、伝統とは無縁な今の典範で初めて採用された仕組みです」
皇室を安定的に存続させるなら、男系男子に固執するより、直系を重視すべきだという。
「女性皇族が結婚後も皇室に残り、配偶者や子どもも皇族となれば、皇族数の確保にもつながります。80年近くも民間で暮らしてきた旧宮家系の男系男子より、皇室で生まれ育った方々に皇室の将来を託すのが当然です」
今回の改正で“愛子天皇”の道が閉ざされたわけでもないという。
「法律の付帯決議には、『安定的な皇位継承を確保するための方策について、引き続き検討する』と明記されました。つまり養子制度だけでは、安定的な皇位継承の問題は解決しないということ。では今後、何を検討するのか。これまでの議論から消去法で考えれば、残るのは女性天皇・女系天皇なのです」
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