※画像は生成AIによるイメージです発車ベルが鳴っているのに、まだホームの売店にいる。あと数秒、あと数メートル。走れば間に合うかもしれないと思った経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
JR東海によると、東海道新幹線の平均遅延時分は1列車あたり1.4分。自然災害などによる遅れも含めた数字で、1日に走る列車は383本にのぼります(JR東海「ファクトシート2025」)。1本あたり1分半ほどの遅れしかない計算です。私たちはそのダイヤのなかを移動していることになります。
今回ご紹介するのは、過去に大きな反響を呼んだ人気記事から、東京駅のホームで新幹線に乗り遅れた男性を目撃した女性の話。閉まったドアの前で、男性は駅員に食い下がり続けました。
記事の後半では、鉄道の駅員や乗務員がどれだけ暴力を受けているのか、業界団体と鉄道各社が毎年公表している全国38社局分の集計を調べてみました。最も多い発生場所は、意外な場所でした。
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日本の新幹線は定時進行が基本だ。1分でも発車時間に遅れてしまうと、当然ながら乗ることはできない。にもかかわらず、しつこく食い下がる迷惑客が一定数存在する。
尾関莉奈さん(仮名・20代)は、新幹線に乗り遅れた人物が周囲に当たり散らす姿を目撃したことがあるという。
◆売店でビールを買っていた男性客が乗り遅れ…
尾関さんは、地方に帰る友人を見送るため、東京駅の新幹線ホームを訪れた。発車ベルが鳴り、扉が閉まったタイミングで“事件”が起こった。
「駅員が『ドアが閉まります、ご注意ください』とアナウンスすると、売店から50代後半の男が走ってきたんです。なにかと思ったら、『乗りたいんですけど、乗りたいんですけど』と叫んでいて。レジ袋のなかには大量のビールが入っていたので、発車間際に売店で買い物をしていたようでした」
閉まったドアを開けるよう主張した男だが、ドア車掌と駅員は断固として開けなかったという。
「男は『乗りたい』と絶叫していましたが、駅員は『ドア開きません、ドア開きません』と右から左に受け流し……。男は『なんでだよ! 開けろよ。ふざけるな』と食い下がっていましたが、『お下がりください、お下がりください。電車が遅れます』と促して、そのまま新幹線は発車していきました」
◆自分勝手な主張を繰り返し、駅員を威嚇
激高した男は駅員に駆け寄り、ねちねちとクレームをつけだした。
「駅員に駆け寄り、『どうしてくれるんだよ。乗り遅れてしまったじゃないか。カバンは車内にあるんだぞ。開けてくれたっていいだろ』と、かなり強い口調で叫んでいました。『遅れたあんたが悪いんだろ』と私は思っていましたのですが……」
一方で駅員は極めて冷静に対応していた。
「『もう発車していますから。一度閉まったドアが開くことはありません』と言っていました。男は『少しぐらい開けてくれたっていいじゃないか。在来線だったら、開けてくれるだろ。そんなケチくさいことがあるのか』と自分勝手な主張に終始していて。徐々にヒートアップして、駅員を威嚇しているように見えました。正直、めっちゃダサいですよね」
◆駅員に掴みかかろうとして…
駅員に怒りをぶつけていたという男。いったいどうなったのだろうか。
「駅員に大声で『納得できない、開けるべきだ』などと叫び続け、掴みかかろうとしたため、別の駅員が集まってきて、ちょっとした騒動になっていました。結局、駅員室に連れて行かれ、その後はどうなったかわかりません」
尾関さんは男について憤りを口にする。
「男が買っていたのはビールとつまみですから。そんなもの、家に帰ってから飲めばいいじゃないですか。『ビールは飲みたい。でも発車時間が迫っている』という状況で、わざわざ買いに行くのが意味不明。それに発車時間に間に合わないのは自分が悪いわけですから、駅員にクレームをいれるのも不可解です。こんな自己中な男のために、発車時間が遅れなくてよかった」
1時間に数本の在来線などでは、発車間際に乗ろうとした客のために閉めたドアを開けることもあるようだが、長距離移動で定時運行が基本の新幹線では、やむを得ない事情で発車時間に遅れたとしても、開けてもらえることはほぼない。
また、最近は東海道新幹線が車内販売を原則廃止するなど、新幹線で飲食物を購入することができないケースも増えている。そのことを理解したうえで、時間に余裕を持った行動が求められる。
<TEXT/佐藤俊治>
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◆■暴力行為が最も多いのは…
日本民営鉄道協会とJR各社などは毎年、駅係員や乗務員に対する暴力行為の件数を集計して公表しています。2025年度に全国38社局で発生したのは590件。発生場所の内訳は、改札が214件で最も多く、次がホームの163件、車内は119件でした(東京都交通局「鉄道係員に対する暴力行為の件数・発生状況について」)。
車内より、改札やホームのほうが多い。乗れなかった、通れなかった、間に合わなかった。そういう場面が、駅員との距離がいちばん近くなる場所でもあるということなのかもしれません。
◆■加害者の年齢は?
同じ集計では、加害者の年齢も示されています。最も多いのは60代以上の141件で、次が50代の117件、40代が99件、30代が96件、20代以下は85件でした。件数だけを見れば、上の世代のほうが多い形です。
飲酒の有無についても集計があり、飲酒ありが271件、飲酒なしが178件、不明が141件。件数だけを見れば、飲酒をともなうケースが半数近くを占めます。
なお、この集計は22社局が参加した年度ごとの件数で、新幹線に限った数字ではありません。また対象は鉄道係員が受けた行為であって、乗客同士のトラブルは含まれていません。
発車したあとのドアが開くことはない。それはエピソードのなかで駅員が繰り返していたとおりです。ただ、あの日の東京駅が590件のうちの1件にならなかったのは、たまたまだったのかもしれません。次に自分が乗り遅れたとき、どう振る舞うか。売店に寄る前に、発車時刻をもう一度見ておくだけでも違うのだと思います。
<再構成/日刊SPA!編集部>
【佐藤俊治】
複数媒体で執筆中のサラリーマンライター。ファミレスでも美味しい鰻を出すライターを目指している。得意分野は社会、スポーツ、将棋など