ひろゆき―[ひろゆきの兵法〜われら氷河期は[人生後半]をどう生きるか?〜]―
「この仕事を若手に任せたら、自分の仕事がなくなるんじゃないか」――。そんな不安から、いつまでも仕事を手放せない中年は珍しくない。特に氷河期世代は、若手に仕事を奪われることを「世代交代」のサインだと受け止めてしまいがち。ところが、実際には逆で、仕事を抱え込む人ほど、長期的には自分の居場所を失いやすい。では、仕事を手放しても「この人がいないと困る」と思われる人は、いったい何をしているのか?
◆仕事量が多いからといって、ポジションを守れるわけではない
他人に仕事を任せると、「そのまま自分のポジションを奪われるんじゃないか」と不安がる人がいます。特に氷河期世代ともなれば、他人に仕事を奪われると「もうこのオッサンはいらない」と世代交代的な判断をされるんじゃないかと考えるかもしれません。
でも、仕事を抱え込んだからといってポジションを守れるわけではないです。無理して抱え込めば質は落ちるし、何とか回せたとしても、若手から頼られる存在でなくなった時点で、その人の居場所はどのみち先細りしていきます。ポジションとは、自分が仕事を握っている量じゃなくて、周りが自分をどれだけ頼りにしているかで決まるのですね。
なので、仕事を総取りしようとするのではなく、若い人に任せて利益や評価もちゃんと分けたほうがいい。例えば、ある仕事で100の売り上げがあったとして、自分が仕事を取ってきたからと90を取り、実際に手を動かした人に10しか渡さなければ、その人は次も手伝いたいとは思いません。でも、同等もしくは自分よりも多く渡したら? 感謝はされど恨まれることはないはずです。
とはいえ、自分は何もせず仕事を丸投げして分け前だけもらうのは、ただの中抜き。方向性を決めたり、問題が起きたら調整したり、成果物の最終的な責任を取ったりすることで、初めて任せる側にも価値が生まれるわけです。
自分だけが得をせず、逆に取り分を減らしてでも周りが得する形にしたほうが、結果として長く自分に仕事が回ってきます。そこで利益と経験を得た若手は、次第に自分でも仕事をつくれるようになり、きちんと分けてくれた人には、次に何かあったときも協力しようと思うわけです。
それに、代わりが育たない職場というのは、自分が体調を崩した瞬間に仕事が止まる職場です。誰にも仕事を教えず自分だけがわかる状態をつくれば、短期的には必要とされるかもしれないですが、ただそれは価値が高いんじゃなくて、単にその人がボトルネックになっているだけです。
◆組織が生き続ける“仕組み”をつくる
誰に任せればいいかは判断が難しいですが、そんなの最初から見抜けるものじゃありません。試しに小さな仕事を振って、期限を守るか、わからないことを確認できるか、期待した品質を出せるかを見るしかない。
うまくいけば任せる範囲を広げるし、ダメなら別の人に振る。最初から完璧な相手を探すんじゃなくて、試しながら見つけるしかないです。
これをやると若い頃のように成果や利益をすべて総取りすることはできなくなるかもしれません。それでも、仕事をつくって人を繋ぎ、方向性を決めて確認、責任を取るという役割を果たせば、必要とされ続けることはできます。若手に仕事を渡すことは、自分の居場所を明け渡すことじゃなく、自分を含めたチームが仕事を続けられる仕組みを作ることに繋がるわけです。
「仕事を渡す」というと撤退戦に見えるかもしれませんが、これが年を取っても働き続けるための、賢い生き方だと思うのですよ。
構成・撮影/杉原光徳(ミドルマン)
―[ひろゆきの兵法〜われら氷河期は[人生後半]をどう生きるか?〜]―
【ひろゆき】
西村博之(にしむらひろゆき)1976年、神奈川県生まれ。東京都・赤羽に移り住み、中央大学に進学後、在学中に米国・アーカンソー州に留学。1999年に開設した「2ちゃんねる」、2005年に就任した「ニコニコ動画」の元管理人。現在は英語圏最大の掲示板サイト「4chan」の管理人を務め、フランスに在住。たまに日本にいる。週刊SPA!で10年以上連載を担当。新刊『賢い人が自然とやっている ズルい言いまわし』