「Final_v2_本当の最新.xlsx」これ、最新の資料でしたっけ?――AIを入れても解決しない“無駄業務”のワナ

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2026年09月23日 09:11  ITmedia ビジネスオンライン

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ヌーラボ 取締役CPO 中島成一朗氏(筆者撮影)

 「Final_v2_本当の最新.xlsx」――こんなファイル名に見覚えはないだろうか。散らかった共有フォルダをさまよい、結局「あの、資料どこにありましたっけ?」「どのファイルが最新でしたっけ?」とチャットを打つ。日々の業務の中で「目に見えないタスク」に、いつの間にか時間を取られていることはないだろうか。そんなタスクの一つが「調べ直し」だ。


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 社内のルールや業務フロー、過去の決定に至るまでの経緯など、必要な情報が分かりやすく整理されていないと、仕事のたびに一から情報を探すことになる。


 「調べ直しによる経済損失は、1人当たり年間約20万円。時間に換算すると、1人当たり年間約47時間、つまり約6営業日に上ることが分かりました」


 そう語るのは、ソフトウェア開発のヌーラボで取締役CPOを務める中島成一朗氏だ。ヌーラボは、全国のビジネスパーソン1000人(管理職500人、一般社員500人)を対象に「調べ直し」の実態を調査。調べ直しが発生する原因を探るとともに、企業が実施すべき対策を報道陣向けに説明した。


●「調べ直し」の損失、一般社員は年11万円超 管理職は?


 調べ直しにかかる時間を管理職と一般社員で比較すると、管理職は年間約55時間、一般社員は年間約40時間だった。損失額に換算すると、一般社員の年間損失額は平均11万1206円だったのに対し、管理職は29万1884円と、一般社員の約2.6倍に上った。


 調べ直しをする内容で最も多かったのは「社内規定・ルールや申請方法」だった。「議事録など過去の決定事項・経緯」「業務の進め方・業務フロー」と続く。


 調べ直しが発生する理由は、そもそも資料のありかが分からない場合もあれば、資料はあっても内容が分かりにくい、更新されていないなどさまざまだ。情報が古かったり、判断に至った背景や前提が記録されていなかったりするなど、必要な情報が不足している場合もある。また、そもそも口頭でしか伝わっておらず、資料が残っていないケースもある。


 まず資料を探すのに時間がかかり、せっかく見つけても情報が不足していれば、さらに調べ直す必要が生じる――このように、時間のロスが積み重なっていく。


 「私にも経験がありますが、組織でいろいろとフォルダ分けして資料を保管していくものの、人事異動などで結果的に何がどこにあるか分からなくなるといったことが起こりがちです。古い資料は紙で残っていることもあり、探すだけで1〜2時間かかることもありました」


●AIを使えば解決? それでも「調べ直し」がなくならないワケ


 調べ直しの問題は、キャリア入社者が増える企業にとっても無視できない。調べ直しの頻度を勤続年数別に見ると、勤続年数が短いほど頻度が高いことが分かった。


 ほとんどの社員が新卒からの生え抜きであった時代は、暗黙知で業務が回っていた部分もあるが、キャリア入社者が増えれば、そうはいかない。中島氏によると、キャリア入社者が暗黙知の把握に時間を取られ、実力を発揮できないまま退職してしまうケースもあるという。


 「中途で入社し、最短で成果を出そうとするなら、どの情報がどこにあるかを理解することが非常に重要になります。今後、人手不足で派遣社員や業務委託など、さまざまな立場の人を会社に入れるなら、暗黙知も含めて情報を整備していかなければ、生産性は上がらないといえるでしょう」


 最近では、AIを使って必要な情報を探すケースも増えている。しかし、AIに情報を探させる場合も、そもそもデータ化されていない情報や、AIが参照できる形で整理されていない情報にはたどり着きにくい。紙に書かれた情報や、個人の頭の中だけにある判断の経緯などは、そのままではAIには参照できない。


 また「Final」「Final-1」などと名前が付けられたファイルが並び、どれが最新なのか判別できない――といった状態では、AIが必要な情報を正しく参照することも難しい。AIを導入しても思うような回答を得られず、導入・運用にかかるコストに見合った効果を得られない可能性もある。


 調査では、業務でAIを活用している人ほど、調べ直しに対するストレスや課題を感じていることも分かった。


 「いくらAIを導入していても、結局のところ記録されている情報がなければ、業務効率は上がりません。本来はAIが人手を補いコストを削減するはずが、導入費用と人件費が二重でのしかかり、効果も利益も出せないということにもなりかねません」


●情報を「探す」から「蓄積する」へ 調べ直しを減らす組織の仕組み


 これらの課題を解決するために必要なのは、業務の進め方や意思決定の過程を適切に記録することだ。


 記録の効果は、調べ直しを減らすことにとどまらない。誰がどの業務を担当し、どのように進めたのかがデータとして残れば、業務そのものを分析することも可能になる。


 「業務の過程も含めてデータを取っていくことができれば、一人一人の仕事の質まで追えるようになり、タレントマネジメントに生かすこともできます。管理職は、調べ直しや誰にどの仕事を振るかといった采配に頭を悩ませるよりも、経営施策の検討やチームマネジメントといったクリエイティブな部分に時間を割けるようになるのです」


 ヌーラボでは、自社のプロジェクト管理ツールをはじめ、外部ツールから得られるデータも統合し、AIが組織の文脈を読み解けるようにする「ナレッジプラットフォーム構想」を描いている。


 「自然に業務をこなすだけで、質の高いデータを蓄積できるようにしたい。人間は情報を記録しやすく、AIは読み取りやすく。それが、私たちの目指す機能設計戦略です」



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