
仲のよかった4人グループ
「50歳で結婚した女友達がいるんですが、彼女があまりに変わってしまったので、仲間内では評判がよくない」苦笑しながらそういうのは、ユミさん(53歳)だ。高校時代から仲よくしている女友達4人グループの中で、リナさんだけがずっと独身だった。
「私は34歳で結婚して子ども二人、共働き。一人は子どもが成人したところで離婚して今はシングル、もう一人は結婚したけど子どもはいない。そしてリナだけが『私は仕事が恋人、一生結婚するつもりはない』と断言していたんです」
リナさんは高校時代に交換留学の経験があり、その後も3年間、留学していた。帰国後は外資系の企業でバリバリ働いてきた。
恋愛の話はあまりしなかったが
「35歳のときだったか、彼女はマンションを購入したんです。あとの3人は当時、誰もマイホームをもってなくて、一人で働いてマンションを買うなんてすごいねと、みんなで遊びに行ったこともありました」リナさんはときに恋愛もしていたようだが、あまり恋愛の話はしなかった。既婚者とつきあっていたこともあったようだが、誰にもバレないうちに自らきっぱり別れを告げたと後から聞いた。
「とにかく彼女はメンタルも強いし、自分の人生は自分で切り開いていくタイプ。しかも仲間内の誰かが何かを相談すると、とても客観的でためになるアドバイスをしてくれる。みんなが彼女を頼っているところがありました」
仲よし4人グループは、老後も「ずっと仲よくしていこうね」といつも話していた。
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ある日突然、結婚して
ところがリナさんが50歳になってすぐのことだった。「みんなで集まったら、リナが突然、『私、結婚した』と報告してきたんです。そんな話、聞いていなかったし、つきあっている人がいるのも知らなかった。びっくりしましたよ。相手はどんな人なのと聞いてさらにびっくり。地位も名誉もお金もあって、しかも5歳年下。写真を見せてもらったら、なかなかのイケメンだったんです」
リナさんは、「私は結婚なんてしなくてもいいと思っていたけど、彼がどうしても結婚したい。一生、一緒にいたいと言い張って」と照れたように言った。
「しかも彼女、仕事を辞めて専業主婦になるというんですよ。さすがに私たちみんな、『いや、いろいろな意味で仕事をもっていた方がいいよ』『子どももいないのだから、暇すぎるでしょ』と説得しました。だっていい仕事をしているのだから、やめちゃうなんてもったいない。
そうしたら彼女、『誰かのために生きるのもいいんじゃないかと思う』と言いだした。それまでの彼女の信念とは違うけど、まあ、彼女の人生ですから、それもありなのかなと、納得はしないけど理解はしたつもりでした」
専業主婦になった女友達が始めたこと
だが、それからの彼女は一変してしまった。仕事をやめて、まず彼女が着手したのはプチ整形。くっきり二重とぽってりした肉感的な唇を手に入れ、顔のしわもシミもなくなった。「今さらながらだけど、車があるから」と免許を取得、「夫を会社に送り迎えしている」のだという。「連休や夏休みは、『主人と海外に行くから』が口癖になりました。私たちは、誰も『主人』なんて口にしたことがない。『夫』と言っていました。主人という言い方は嫌だよねと以前、話していたとき、リナは『自分の人生の主人は自分。夫を主人と呼ぶような人と友達になりたくない』とまで言ったんですよ」
人はここまで変わるものかとユミさんたちは目配せしあったという。リナさんは、それまで栗色に染めていたショートヘアを、真っ黒のセミロングにした。
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全てを捨てた女友達のその後
4人の集まりにも、リナさんはだんだん来なくなっていった。あれから3年がたち、最近、リナさんは久しぶりにやってきた。「リナの顔がすっかり変わっていました。シワをとるためのボトックスをやり過ぎたらしく、シワはないけど顔が固まっている感じ。しかも元気がなかった。かつては4人の会話もスピーディだったんですが、リナは話し方もゆっくりになって反応も鈍い。
帰り際、『久しぶりにリラックスできたわ』と言っていました。夫といると気が休まらないんだそう。夫が強要するわけではないけど、年上のリナは異常に気を使っているみたいでした」
つい最近、リナさんから「もう無理かも」という連絡があった。社会的に成功している夫に見合う「美人妻」になるために、彼女は自ら築いたものを全て捨てた。それが決して幸福を生まなかったことを、今、しみじみと感じているようだったとユミさんは言う。
「彼女にとって、結婚はそれほど憧れだったんでしょうね。そういう気持ちを表だって見せなかったけど……。なんだかちょっと気の毒だなと思っています」
自らの幸福の物差しを相手に合わせてしまったリナさん、失ったものは大きいかもしれない。
(文:亀山 早苗(フリーライター))
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