画像提供:マイナビニュースいまの場所にたどり着くまでに、どんな選択肢があったのか――。この連載では、道を切り開き始めた次代の担い手たちに、歩んできた決断の背景と、その先に見据える未来を聞いていく。それぞれの選択がどのように現在をつくり、次の挑戦へつながっていくのかを、記録していく試みだ。
本稿で話を聞いたのは、お笑いコンビ 9番街レトロ。京極風斗さんは1995年8月9日生まれ(大阪府藤井寺市出身)のNSC大阪校37期生、なかむらしゅんさんは1994年1月24日生まれ(大阪府交野市出身)のNSC大阪校38期生で、2019年にコンビを結成した。吉本興業 東京本部にて話を聞いた。
コンビ結成の瞬間「結構、嫌でしたね(笑)」
――お笑い芸人を目指したきっかけについて教えて下さい。
なかむらさん(以下、敬称略):これ、かっこいい話にはならなくて、ボクは「全部から逃げた」っていうのが本当のところです。
大学には行ってたんですが就職したくなくて、このままだと留年しちゃうんじゃないかってときに、実は昔からNSCに行きたかったんだという空気感を出しながら親に「芸人になりたくて」って伝えました。だからNSCに逃げ込んだ形です。いまでこそ大学お笑いが盛んですが、当時は、大学を出たけどどうにもならなくてNSCに来た、って人もめちゃ多かった気がします。子どもの頃から、『爆笑レッドカーペット』、『めちゃ×2イケてるッ!』などメジャーなお笑い番組は見てましたが、お笑いライブを見に行くほどではなかったです。
京極さん(以下、敬称略):ボクは中2で、もう「芸人になろう」って決めてました。動機は、なかむらと一緒で「働きたくなくて」です。やりたいことは沢山あったんですが、テレビ見てたら芸人って気楽そうじゃないですか(笑)。色んな仕事の良いところどりもできそうで。子どもの頃に1回、叔母がbaseよしもとに連れていってくれたことがあって、それが面白くて。あとは修学旅行のときに友だちと一緒に漫才をやったらウケて、それが嬉しかったんですよね。「これいけそうやな」って思ってからは全教科の勉強をやめました(笑)。もうどうせ芸人になるんやし、って。僕も、そこまでバラエティ番組は見てこなかったんですが、中川家さん、笑い飯さんが好きでした。新喜劇では茂造(辻本茂雄さん)が好きでした。
――ほかには、どんな職業に憧れていましたか?
京極:母から聞いた話ですが、幼い頃はゴミ収集車になりたかったそうです。物心がついたときに諦めたんだと思います。そのあとはガオレンジャーとか。大きくなってからは、漫画家、デザイナーなど、夢がない時期はなかったですね。ずっと、何かになりたい子でした。
なかむら:ボクは、小さい頃からサッカーをしていたのでサッカー選手への憧れはありました。現実的なことを知る歳になってからは、大学で教職課程を履修していたので、あとは必要な勉強だけ集中的に続けていたら、中学校の社会の先生にはなれてまいそうやな、とは思ってました。でも教師でやっていけるとは思ってなくて。人前に出て、人に何かを教えていく自信はなかったです。
京極:芸人になったいま、まさに良いとこどりできているというか。そのままストレートでデザイナーになっても食っていけなかったと思うんですが、芸人っていう土台ができたので、これから個展もできるやろうし、グッズでコラボもあるやろうし。なかむらも、芸人って土台があるからレジェンド選手のPKを止めたりもあるやろし。
なかむら:番組でね、レジェンド選手とのPK対決をやらせてもらって。京極も、いま楽屋のゴミ収集できてるもんな。
京極:ゴミ収集車の良いとこどりやないねん(笑)。さっき楽屋で、食い終わった弁当を潰してただけやろ。
――お笑い芸人になるという選択に、ご両親の反対はありましたか?
なかむら:意外と反対はなかったんですが、応援してる風でもなかったです。「そんな甘い世界ちゃうやろ」とは言われてたかな。
京極:うちは「芸人になる」って言ったら、次の日、母がNSCの願書を持ってきました。
なかむら:はやっ!
京極:うちは結構、そういう教育やったというか、そもそも一家全員が目立ちたがりな感じなので、応援してくれました。
――コンビ結成の経緯についても教えてください。
京極:ボクの方が1年先輩で、なかむらの代は1年目から知っているんですが、結構イケイケだったんです。フースーヤ、エルフ、天才ピアニストとか。その中でも、なかむらがイチバン目立ってるように思いました。普通に後輩として可愛がってて、普段から遊んでて。ボクは前のコンビで東京に出てて3年目くらいのとき、大阪に帰ったタイミングでなかむらのコンビが解散するって聞いたので、こっちも組んでたコンビを解散して、なかむらを東京に呼び寄せて、という経緯がありました。
なかむら:「組むか」って誘われて、すぐに「組みましょう」って答えたんですが、「組むなら東京で」って言われたんで、結構、嫌でしたね(笑)。当時、ずっと大阪にいたかったんですが、でも「まぁ仕事やんな」「まだ大阪いたいとか言ったらあかんやろな」とも思って。大きな決断でした。それで組むことが決まって東京に出たんですが、まだ東京所属になられへん時期で。だから最初のうちは、取り敢えず住む場所を東京に変えてみた、って感じでした。
鼻血垂らして倒れるくらいスベっても、次の日には自分の武器に
――芸人を辞めようかな、と思ったことはありますか?
なかむら:これまで頑張って積み上げてきたポジション、言うても何もないんですが、そんなのを失うのが怖くて「辞めよう」って思ったことはないですね。1回もないかも知れない。
京極:俺もない。だって、芸人を辞めるってことは何か新しいことを始める、ってことでしょう。それ、辞めるよりキツいです。
なかむら:ほかのこと、何もできないですから。
京極:辞めるにしても、盲目的に支持してくれるファン何人かを引き連れてちっちゃい宗教をやるとかしかないから。
なかむら:ちっちゃいな。お布施生活か。
京極:芸人をやってても嫌な仕事はありますが、「嫌やなー」って言えちゃう、傍から見てたらそれも面白いにつながってる、お笑いってそんな仕事です。それもデカいかな。
なかむら:確かに。これも仕事っちゃ仕事なんですが、親戚の結婚式のスピーチでいかついくらいスベったんです。そんとき母が動画を回してて「ナイス!」と思いました。YouTubeにあげたらおもろいやん、って思って。嫌なことがあっても笑いに消化できるというか、そんときは鼻血を垂らして倒れる寸前なんですが、次の日には武器になっている、そんな世界ですね。
――ネタに関して、出演前に2人の間で意見がぶつかることはありますか?
なかむら:ないですね。「たぶんあれやろな」っていうのが共通の認識であるので。「いや、こっちでいこうや」とかなったことないかもです。
京極:そうですね。2人で同じこと考えてると思います。選択肢が少ないとも言えるけど(笑)。
賞レースは“免許更新”
――2人にとって、賞レースはどんな位置づけですか?
京極:免許更新です。
なかむら:免許更新か。それは知らんかった。
京極:ボクら、まだ仮免許の状態です。準々決勝は仮免で、準決勝で免許証がもらえるんですけど。はよ免許が欲しい。
なかむら:でもM-1は、ほんまに芸人にとって切り離せないもんだから。昔だったら「行けたらすごい」って思ってたし、今でもそれは変わらないんですが、近い期の奴らも行きだしたので「行かなやばいもん」に変わりつつあります。
京極:正直、劇場の貢献度で言ったら結構あると思ってて。フジテレビでレギュラー持ってて、テレ朝で冠までやって、ボクはR-1でも2年連続で準決勝進出して、並べ立てるともう売れてなきゃおかしいんですが、何個そんなん束にしても、1回のM-1決勝進出には敵わない。
なかむら:そんだけ威力のある大会、一発逆転のできる賞レースだから。行かなきゃいけない、そこで結果を残さないけない、そんな大会になってきました。
目指すは誰もが知るテレビスター
――将来「こんな芸人になりたい」というビジョンはありますか?
京極:誰もが知っているテレビスターになりたいですね。ロケで地方に行っても、みんなが手を振ってくれるような、浜ちゃんみたいな(笑)。
なかむら:新幹線で移動していると、「ここ誰が住むんやろ」ってとこも通るじゃないですか。「田舎やなー。あ、歩いてる人いる」っていう。そんな所に住む人も知ってる芸人になれたら。ロケで、おばあちゃんに知ってもらえているときとか、やっぱり嬉しいんですよね。
京極:自分たちのイメージからかけ離れている人ほど、嬉しい。この前も喫煙所で、50代くらいの大柄な男性がタバコを吸い終わって、去り際に「応援してます」って言ってくれて。「この人は、オレらのこと見てへんやろ」って人が実は見てた、とかすっごい嬉しいんです。
なかむら:声をかけてくれる人、男性がマジで多いです。昨日も、ジュビロ磐田のユニフォームを着た5人組の男たちと肩組んで写真を撮りました。あれ、どこで使われんやろ? (笑)
――「帰ってきた9番街フェス」を9月28日に開催しますね。単独ライブは2年ぶり、会場は過去最高のキャパと聞いていますが。
なかむら:はい、もうイチバン気合いの入った、ボクらの主催ライブになります。だいぶ力が入ってますんで、是非、たくさんの人に見にきて欲しいですね。
京極:ネタはもちろん、企画も色々用意しています。準備することが多くて、水面下で、スタッフさんたちが頑張って動いてくれてます。過去のライブを見に来てくれた人なら何となく分かると思うんですが、3公演(第1部、第2部、第3部)とも、いつもとはちょっと違う9番街レトロがいます。そんで、必要以上に豪華です(笑)。
なかむら:セットも含めて楽しんでもらえたらな。
京極:あとグッズも、結構、可愛いです。
――イベントを楽しみにしている方に、メッセージをお願いします。
京極:これまで来てくださった方も、これが初めてのライブという方も、めちゃ楽しめると思います。皆さんに笑っていただけるライブにしますので、よろしくお願いします。
なかむら:まずは健康に気をつけて。そして当日は、家の戸締りもしっかりね。あとは是非、楽しんで。
――お忙しいなか、ありがとうございました。
取材:葉山澪
構成/撮影:近藤謙太郎
帰ってきた9番街フェス
日程:2026年9月28日(月)
場所:ヒューリックホール東京
時間:第1部 開場15:00/開演15:30 第2部 開場17:00/開演17:30 第3部 開場19:00/開演19:30
料金:配信2,000円(会場チケットは完売)(近藤謙太郎)