
NTTドコモは、12月1日に料金プランを全面的に改定することを発表した。新規受付を終了している料金プランも含め、全56プランの料金を値上げする格好だ。データ容量無制限の「ドコモ MAX」や、小容量プランの「ドコモ mini」は料金を据え置く方針だが、後者については家族割引を強化した「ドコモ mini2」を新設し、新規受付を終了する。
中でも変更点が多く、影響も大きそうなのがオンライン専用料金プランとして2021年に導入されたahamoだ。キャンペーンとして展開していた40GBを定常化しつつ、新たに段階制を導入。オプションとして提供していた「ahamo大盛り」も廃止する。その改定内容からは、今のahamoの位置付け、値上げしつつも競争力を維持したいドコモの思惑が垣間見えた。
●値上げ幅が小さいahamo、40GB化で165円アップに
20GBのオンライン専用プランとして誕生したahamoだが、ユーザーのデータ使用量増加を受け、2024年10月には料金据え置きのまま、30GBにデータ容量を増量。8月には、お試しキャンペーンとして自動的に10GBを足し、40GBプランとして展開していた。導入当初の2021年から、料金は2970円のまま。40GBはあくまでキャンペーンだが、料金を変更せずにデータ容量だけが倍増した。
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ユーザーのデータ容量は、年2割のペースで増加しているという。9月に取材に応えたドコモの常務執行役員 ネットワーク本部長の引馬章裕氏は、「昨年度の4月(2025年4月)を起点にしたとき、1年後には1.2倍に増えている。特徴的なのが、全国でも1.2倍、主要都府県でも1.2倍で、場所に依存しているわけではない」と語っていた。データ容量が据え置きのままだと上限に達する人が増え、満足度が低下してしまう。
一方で、現状では物価や人件費が上昇している他、ドコモはネットワークへの設備投資も積み増している。さらに、「今後はAI利用の爆発的な拡大に伴い、通信需要がさらに増加することも見込まれる」(ドコモ 代表取締役副社長 齋藤武氏)。6Gに向けた投資も徐々に増えていく中、コストをどう回収するかはドコモにとっての課題になっていた。
決算説明会では、代表取締役社長の前田義晃氏も値上げを検討していることはたびたび示唆しており、ついに実行に踏み切った格好だ。上げ幅は料金プランによって異なるが、小さいもので110円、大きなものだと550円の値上げになる。例えば、過去のプランでは「irumo 0.5GB」や「はじめてスマホプラン」は110円だが、「eximo」や「5Gギガホ」などは550円に設定された。
こうした過去の大容量プランと比べると、ahamoの値上げ幅は小さい。キャンペーンで展開していたデータ容量の40GBを正式化した上で、料金は165円アップの3135円に設定。現行の2970円から、165円の値上げにとどめた。サブスク型のコンテンツサービスを契約した際にdポイントが付与される「爆上げセレクション」の還元率も、10〜25%に戻した。
齋藤氏は「必ずしもコストをそのまま転嫁しているのではなく、総合的にどのプランをどれだけ上げるかを考えている」としながら、「ahamoは、165円値上げしても一定の競争力は保てる」と語る。競合他社が展開する35GB前後のプランを見ると、ahamoより高いものが多く、かつ割引前提になっているものが多い。値上げはしたものの、あくまで競争力を維持する前提で165円に抑えたとみていいだろう。
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●段階制導入で上がる利便性、データ量によっては値下げになるケースも
もう1つの特徴は楽天モバイルの「Rakuten最強プラン」などと同様、段階制を採用したことだ。しきい値は40GBと60GB。40GBを超えると料金は990円上がって4125円になり、60GB超過時には120GBまで、さらに990円上がった5115円になる。段階制は自動で容量に応じた料金がかかるため、80GBを追加する大盛りオプションは廃止される。
「基本容量を超過するたびに追加の手続きをする必要がなくなり、より手間なく便利にデータ通信をご利用いただける」(同)というのが段階制のメリット。一方で料金を気にする人に向け、「上限を設定できる機能がある」(同)といい、40GBでストップさせ、これまでのahamoと同じように利用することもできる。
会見では語られていなかったが、“ahamo中盛り”ができたのも、この方式の副産物だ。これまでのahamoは、40GBか120GBの二者択一になっており、中間のデータ容量が用意されていなかった。50GBや60GB程度しか使わないのに、120GB分の料金を支払わざるをえなかったと言い換えることもできる。
新ahamoの2段階目にあたる40GBから60GBの料金は、こうしたニーズに応えられる可能性がありそうだ。料金は4125円で、値上げ後にもかかわらず、現在のahamo大盛りの4950円より800円以上安い。もともとahamoでデータ使用量が多かったユーザーにとっては、値上げどころか事実上の値下げになることもある。この点では、料金改定で競争力が低下するどころか、むしろ強化されたといえる。
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また、データ使用量の変動が大きいユーザーにとっても、段階制はうれしい料金体系といえる。ある月は出張があってテザリングを利用し、100GB程度使ってしまったが、普段は動画もさほど見ず、使っても20GB程度という場合でも、改定後のahamoであれば手続きは不要。翌月の利用状況を予想し、大盛りオプションを付けたり外したりする必要がないため、使い勝手がいい。
説明会では、ahamo大盛りだと多すぎる、だからといって基本プランに1GBずつ追加していくのでは料金が高すぎるといった声が紹介されていたが、段階制はまさにこのようなニーズに応える料金体系だ。40GBを超えるユーザーが増えれば、ドコモにとっての収益にもなる。
実際、「30GBから40GBに(お試しで)上げたことで、30GB手前でためらっていた層のかなりの割合が30GBを超え、上の方に来ている効果が見て取れた」(同)という。お試しキャンペーンとは異なり料金が上がるため、そのままこのデータを適用できるわけではないものの、意図的に節約しながら使っていた人が、よりデータ通信を使えばARPU(1ユーザーあたりからの平均収入)が上がる機会になる。
●維持した主力プランとしての競争力、アップセルの体制も整う
値上げはしたものの、その影響を最小限に抑える改定にしたのはなぜか。背景には、ahamoがドコモの競争力の源泉になっていることがある。当初は若者向けのプランとして誕生したahamoだが、シンプルさが受け、利用者層は多様化している。家族での回線契約や光回線などのセット割がなくても安価なため、“ドコモの入り口”になっているのが実態だ。
ドコモの新規契約者に占めるahamoの割合は非常に高く、齋藤氏によると「半数を超えている」という。番号ポータビリティ(MNP)でプラスに転じた原動力もahamoで、もはや主力といえる。上位レイヤーのサービスを提供する際の基盤であるユーザー数拡大を重視しているドコモにとって、欠かせない料金プランといえる。
ahamoでユーザーを獲得しつつ、よりデータ利用が多いユーザーや、コンテンツサービスとのバンドルにお得感を見いだしたユーザーをドコモ MAXなどの上位プランに上げていくのがドコモの戦略だ。実際、ahamoも60GBを超えて3段階目まで上がると、ドコモ MAXの割引後の料金との差がかなり縮まってくる。
この戦略が当たり、「現実的にドコモ MAXに移っていただける方も相当数いる」(同)。こうした移行が順調なこともあり、ドコモ MAXは、9月24日時点で465万契約を突破。年度内の目標として掲げていた500万契約の達成に、リーチがかかっている状況だ。
一方で、ドコモはネットワーク品質の改善が顧客基盤強化と並ぶ課題になっているが、「まだまだ道半ば」(同)。「ネットワークが大丈夫になったから、料金を上げても大丈夫という認識ではない」(同)という。
ネットワーク品質が改善の途上にもかかわらず、新規ユーザーを獲得しやすく、かつARPUも上げやすい料金体系が整ったahamoを大幅に値上げし、競争力を落としてしまうのは得策ではない。その意味で、ahamoの値上げや料金体系の改定には、ドコモが置かれている状況が色濃く反映されているといえる。
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ドコモが既存料金プラン値上げ(写真:ITmedia Mobile)195

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