「いつでも安い」ベイシアが、なぜさらに安く? 新業態で削ったもの、残したもの

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2026年09月27日 08:21  ITmedia ビジネスオンライン

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ベイシアが新業態を開始

 物価高が続く中、小売各社が価格競争力を高めている。特に注目されているのが、スーパー大手のベイシア(前橋市)が新たに打ち出したディスカウント業態の「劇安ワンダーランド ココトク!」(以下、ココトク)だ。


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 ペットボトル飲料や加工食品などの商品を段ボールやパレットに載せたまま陳列し、ベイシアのポイントサービスも扱わない。しかし、売り場から受ける印象は、いわゆる倉庫型のディスカウントストアとは少し異なる。生鮮食品や総菜、寿司などがずらりと並び、注文を受けてから調理するタコスや、イートインスペースまで設けられている。


 商品数も、同規模のベイシアと比べて半分以下にし、既存店より1〜2割程度安い商品も豊富にそろえている。


 もともとベイシアは「いつでも安い」を掲げ、低価格を強みにしてきた。そんな中、なぜ埼玉県深谷市の「ベイシアふかや花園店」を業態転換し、別ブランドの「劇安ワンダーランド ココトク!ふかや花園店」を2026年6月に開業してさらなる低価格を追求することにしたのか。その狙いを、ベイシアのマーケティング本部広報部部長である松田詩織氏に聞いた。


●なぜ、さらに安いスーパーを出店したのか


 ベイシアは群馬県を中心に1都14県で店舗を展開する小売チェーンだ。食品スーパーだけでなく、衣食住に関する商品を取りそろえる大型スーパーセンターなど、商圏に応じて複数の店舗形態を展開してきた。


 さらに近年、商圏のニーズや立地に合わせて複数の店舗形態を展開する「マルチフォーマット戦略」として新たな業態開発を進めている。例えば、個食や少人数世帯のニーズに対応する小型店「オトナリマート」や、複合型ショッピングセンター「Beisia Town」をオープンし、新鮮で豊富な食品を押し出したスーパー「Foods Park」も拡大。消費者の生活スタイルや利用シーン、立地特性などに応じて店舗の形を変え、それぞれ異なる需要を取り込もうとしている。


 ここに新たに加わったのが、価格重視・まとめ買いを軸とするココトクだ。


 物価上昇が続く中、ベイシアは「より価格を重視したい」「まとめ買いやストック買いをしたい」という需要が高まっていると捉えた。一方、日々の買い物が「必要だから行くもの」となり、本来の楽しさが薄れつつあるのではという課題感もあったという。


 そこで、安さだけでも体験価値だけでもない新業態として開発したのがココトクである。「ワクワクな買い物が、おトクになる場所」をコンセプトとし、「ベイシア」の屋号とは異なるブランドとして立ち上げた。


 業態を増やすことは、既存店とのカニバリゼーション(共食い)の回避にもつながる。ベイシアではこれまで、新規出店候補地の近くに既存店がある場合、競合することを懸念して出店を見送るケースもあったという。複数の業態があれば、同じ商圏でも異なるニーズを満たせるようになる。


 ココトク1号店としてふかや花園店を選んだのも、この考え方からだという。同店の周辺には複数のベイシア店舗があるが、旧ふかや花園店は他店と比べて来店客の商圏がやや狭かった。そこでディスカウント業態のココトクへ転換し、既存店との役割分担を図るとともに広域からの集客を狙ったのである。


 業態開発においては、開発責任者の安田恵一氏を含む7人が海外のスーパーマーケットチェーンを視察。インフレ下でも成長するディスカウント業態の構造や、低コストで店舗を運営する仕組みを研究したという。


●「構造としての安さ」を実現


 では、ココトクはどのようにしてベイシアよりも価格を下げることに成功したのか。


 その秘密は、ココトクが扱う商品数にある。ココトクで販売しているのは約8500アイテム。同規模のベイシアでは約2万アイテム、大型のスーパーセンターでは5万点以上を扱う店舗もあることを考えると、大幅な絞り込みと言える。


 取り扱うのを売れ筋商品に絞り込むことで、仕入れや品出しの作業を減らし、発注や在庫管理の効率化につなげている。


 飲料や酒、カップ麺などは、入荷したパレットや台座ごとハンドリフトで運び、そのまま売り場に設置。飲料の一部は常温で販売し、冷蔵にかかる電気代を抑えている。青果も段ボールのまま陳列、大根やキャベツなどは丸ごと販売している。


 また、既存店で実施しているラッピングや宅配受け付けなどのサービスカウンター業務を省略。ベイシアアプリやポイントサービスも扱わず、販促コストを削減した。さらに、精肉や総菜の加工を行う自社運営の「うんまぃファクトリー」を活用し、店舗で肉を切るなどの作業を減らしている。


 「人件費を削るのではなく、商品数の最適化やオペレーションの見直しによって店舗運営全体のコストを下げ、安く販売できる構造を作っています」と松田氏は話す。


 単に粗利や人員を削って値下げするのではなく、店舗での作業そのものを減らし、運営コストを下げているのである。それと同時に客数や売り上げを伸ばすことで、低価格と収益性の両立を目指している。


●「安いだけ」では来店動機になりにくい


 ディスカウント業態そのものは珍しくないが、ベイシアが他社との差別化として挙げるのが、プライベートブランド(PB)と総菜だ。


 同社では「Beisia Premium」などオリジナル商品の開発に力を入れている。ココトクでも、全アイテムのうち、約1000アイテムがPB商品だ。


 ココトクでは全ての商品が既存店より安いわけではなく、価格差が小さい商品もあるが、筆者が取材時に近隣のベイシア店舗を確認したところ、おにぎりやヨーグルト、菓子類などは、同じPBでもココトクのほうが1〜2割程度安い例が見られた。同じ商品でもココトクではさらに低価格で提供する。ベイシアが培ってきた調達力や商品開発、加工・物流の基盤に、ココトク独自の運営方法を組み合わせた結果、ローコストを実現している。


 もう一つ注力しているのが総菜だ。約250グラムのご飯を盛り付けた「ココトク!モリモリ弁当」は、具材に合わせてソースを変えた4種類のラインアップで各320円、「塩とレモンで食べる握り寿司」や「お魚屋さんの銀鮭西京焼き弁当」など8貫程度の生寿司や魚総菜は536円に設定。低価格だけでなく選べる楽しさを演出している。


 104円から購入できる揚げ物などの総菜バイキングや、カレーライスや麻婆豆腐ライスなど、通常サイズの他に1キロサイズを用意している商品もある。


 しかし、安さだけを売りにしているわけではない。「安いだけでは『何度も行こう』とはなりにくいと考えています」と松田氏は話す。


 何度も来店してもらうために設けたのが、タコスを販売する「TACOCO STATION」だ。


 旧店舗にあったカフェの改装を検討する中で、近年のタコス人気やコメの価格上昇を考慮し、導入を決定したという。


 当時はタコスに関するノウハウがなかったため、バイヤーが沖縄まで足を運び、研究を重ねた。タコスは注文を受けてから調理する方式を採用する一方、すぐに食べたい人や持ち帰り客向けに、タコスやタコライス、トルティーヤチップスも店頭に並べている。店舗作業の効率化を進める方針とは対照的な取り組みだ。


 松田氏は「必要なものを安く買うだけの店ではなく、『こんな商品もあるのか』と楽しみながら店内をまわり、結果として買上点数が増えるような買い物体験をしてもらうことを目指しています」と話す。


●客数・客単価・買上点数の伸びも順調


 ココトク開業から約3カ月。現時点でどのような成果が出ているのだろうか。


 売上高や人時生産性(従業員1人が1時間当たりに生み出す売上高)などは非公表だが、松田氏によると、業態転換前の旧ふかや花園店と比べ、客数、客単価、買上点数はいずれも伸びているという。まとめ買いやストック買いを促す業態として、一定の成果が出ているようだ。また、約10キロ離れた熊谷方面からの来店客も一定数おり、商圏の拡大という出店時の狙いにも手応えを感じているという。


 ココトクでは、商品の見せ方や品ぞろえ、売り場構成、作業効率などを改善しながら、今後1〜2年で既存の出店エリアを中心に複数店舗を展開し、業態としての完成度を高める方針だ。


 ベイシアの調達力やPB、加工・物流といった資産を生かしつつ、「削るもの」と「残すもの」を組み直しているココトク。新たなディスカウントモデルの動向に注目したい。


(田窪綾)



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  • 何日か前に初めてベイシアに入ったわ。一般の郊外型スーパーの感じ、広い駐車場、広い店舗面積で一階だけの平屋、なのにJRの駅真横。
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