※画像はイメージです。生成AIを使用しています―[東大卒作家・布施川天馬の教育キャリア通信]―
「自称・東大」を本物かどうか見抜く質問を知っていますか?
それは「センター試験・共通テストは何点だった?」です。
私の周りだけかもしれませんが、なぜか20代も終わりそうな時期に差し掛かってもなお、「センター・共テの点数は?」と聞くと即答してくる卒業生が、一定数存在します。
東大生は、入試の点数にある種の誇りを持っているようです。
事実、入学直後に行われる「オリエンテーション合宿」での鉄板ネタが「入試の難しかった・面白かった問題」なのは、ここ数年の東大生の話を聞いても揺らがないようですし、その数日後に届く試験結果を手に「俺は○点だった!お前は?」と競いあうのが毎年の風物詩となっています。
かつてのセンター試験世代なら「92%!」「俺ちょっと低いわ、89%」など、低くても90%前後を保っていました。
しかし、ここ数年は東大生ですら85%程度まで得点率が下がっています。東大生がバカになったのではありません。センターに変わる一次選抜試験「共通テスト」が難しすぎるからです。
◆「共通テスト5割」は平均
かつてのセンター試験では、「平均5割」を謳いつつも、結局平均65%程度で推移するのが当たり前でした。
ちょっといい大学を受けるなら、8割9割当たり前といった空気があり、東大レベルではなくても、「80%くらいは取ろう」「英語は9割取ろう」など、それなりに取れる前提で得点計画が組まれました。
しかし、現在の共通テストにおいては、この感覚は全く時代遅れなものとなっています。
公開されたデータによれば、センター試験時代は65%程度で推移していた平均点が、近年は55%程度まで低下する年も頻発しているのです。
科目ごとに取り上げてみても、2022年の数学�機�Aは平均37.96点、2025年の化学は平均45.34点など、なめてかかっては大やけどをします。
この低下は、学生のレベルが下がったわけではありません。例えば、英語リーディングの試験では、80分で5,500〜6,000wordsもの英文を読まなくてはいけません。
大問は8個もあるうえに、すべてが読解問題であり、かつて存在した「発音アクセント」「文法」のような2秒で答えを即断できるタイプの問題はない。
仮に、5,500words以上を80分で読み切るならば、単純計算で1分あたり70words以上読む必要があります。ただ、実際には考える時間や見直す時間も必要でしょうから、最低でも40分くらいは残しておきたい。となると、要求されるのは1分あたり140〜150wordsまで跳ね上がります。
高校生の平均が1分あたり70〜100words程度と言われていますから、これでは到底間に合わない。だから、結果として「解き切れない受験生」が頻発します。
東大生に聞いてすら、「ぎりぎりだった」「解き切れなかった」という声が出てきました。
◆東大生すらテクニック頼り
東大生たちも、別に真正面から戦っているわけではありません。共通テストには一定のテクニックがあり、これを使えば飛躍的に解きやすくなるのです。
例えば、英語リーディングで頻出する「ポスターの内容を読み取って答える」タイプの問題。
まともに捉えると頭からお尻までびっしりと埋まった情報の洪水に溺れる羽目になりますが、見るべきところだけ見れば、読む量が一気に減ります。
今回取材した現役東大生のTさんは「ポスターの問題は、どうせ絵とか写真のあたりに問題は出ないんです。それより、その下に書いてある細かい注意書きのあたりをよく見る。大体この辺に『子ども料金は○円です』とか『雨天中止でキャンセル料はいくらです』とかが書いてあって、これが問われやすいからです」と答えてくれました。
こういった技を使えば、確かに問題は解きやすくなるでしょう。
そして、共通テスト攻略にテクニックが必須である点は、以前から知られてきました。
河合塾や駿台予備学校など有名予備校も「共通テストの対策法」を銘打ったページを公開していますし、YouTubeにも対策動画であふれています。
『共通テスト完全攻略マニュアル』のような、完全にテクニック教授に振り切った本も出ました。
こうなると、思考力よりも、「テクニックが身についているかどうか」で差がついているように見えてしまいます。
平均5割が達成されつつあるのは喜ばしいことですが、本当に共通テストが問いたかった「思考力」以外の部分でハックされつつあるのは、悲しむべきでしょう。
◆「今の学生がザコ」は間違い
ここまで散々共通テストの現状をお伝えしてきましたが、中には「それは今の学生の実力が下がっているからでは」と訝しむ方もいらっしゃるはず。
ですが「かつての学生たちが優秀すぎて、今の学生たちの質が下がっているから」ではありません。
確かに難易度については客観的に比較しにくいものですが、先述したように英語試験の単純な単語量が増加しているだけでも「昔よりは解きにくくなった」ことの証拠となるでしょう。
共通テストは「平均5割を目指す」のですから、これが正しい在り方なのかもしれません。
ただ、「センターの後継試験なんだから、8割くらい取れ」は通じないフェーズに突入していることは確実です。
子どもが70%や80%に甘んじたとしても「そんなのは甘い! 自分の時は90%で当たり前だった!」と説教をするのは、あまりにも的外れとしか言いようがありません。
そんな残念なことを語っているとは思いたくないのですが、現役東大生のNさんは「私が共通テストの点数で80%などを取って帰ってくると、いつも父が『そんな点数を取るとは何事だ! 俺の時は90%くらい当たり前だった』と説教をしてきた」と語ってくれました。
あくまで1人の例でしかありませんが、過去の例を当てはめて現役世代の”体たらく”を叱り飛ばす親がいることは確かなようです。
自分があまりよく知らない分野について口出しするのは愚かしいことです。
同じように、かつて知っていた分野でも、最近の話を知らないなら、あまり大それたことを言うのは避けたほうが良い。
かつて住んでいた土地について、そこを離れて数十年後に「あそこは○○だから!」と印象だけで語る人がいたならば、「あぁ、あまり賢くない人だな」と見えてしまいますよね。
同じように、現代受験を「自分の受験」と重ね合わせるのは、「かつての栄光」を曇らせるような愚かな行いなのかもしれません。
<文・布施川天馬>
―[東大卒作家・布施川天馬の教育キャリア通信]―
【布施川天馬】
著述家、教育ライター。 教育メディア「未来図」副編集長。一般財団法人「ドラゴン桜財団」評議員。 1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を編み出し、一浪の末東大合格を果たす。著書に最小コストで結果を出すノウハウを体系化した『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』など。株式会社カルペ・ディエムにて、お金と時間をかけない「省エネスタイルの勉強法」などを伝える。MENSA会員。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)