
仲よしグループの再会
高校時代、仲がよかった女友達と久しぶりに会ったというミヤさん(48歳)。20代前半で会ったきり、連絡はとっていたが4人そろうのは四半世紀ぶりだったという。「みんなそれぞれの人生を歩んでいましたから、会うのが本当に楽しみでした。一方で、どんな洋服を着ていこうか、ヘアスタイルはどうしよう、白髪は大丈夫かしらなんて、いろいろ気にしたりして。グループメッセージでそんなことを書き込んだら、『高校時代の汗臭い青春時代をお互いに知ってるんだから、気取らないでよ』と言われました。確かにそうだよねと思って、何も気にすることなく会おうと思えたんです」
ミヤさんはじめ、3人は東京都内とその近郊に住んでいるが、クニコさんだけは夫の仕事の都合で北陸に越していた。
「東京に行くのも久々だわとクニコも楽しみにしていたようでした。こちらでレストランのランチの予約をとり、店の情報もメッセージで送りました」
女友達が発した一言に驚き
ランチとしては少し高めだったが、「落ち着いてゆっくり話ができる店」をミヤさんが選んで予約した。あとの3人も異論は唱えなかった。レストランに集合し、いろいろしゃべりながらも「とりあえずメニューを決めよう」となったとき、クニコさんが「うわ、高い」と声を上げた。店の人にも聞こえたようだったので、あとの3人は首をすくめた。
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一瞬、雰囲気が悪くなりかけたのだが、そこはみな大人なので、また会話を続けながら注文した。クニコさんもみんなと同じようにランチコースを頼んだという。
支払いのときになって
ゆっくりとランチを楽しみ、「場所を変えてもう少し話そう」となったとき、クニコさんが突然「あのさ」と言いだした。「『私は旅費をかけて、あなたたちに会いにきたのよ。少し私だけまけてくれないかな』って。自分だけ損しているような気がするのよねとも言いました。私たちはびっくりして言葉も出なかった。だってそもそも、『東京に行くから会おうよ』と言いだしたのはクニコなんですよ。実家に用があったんじゃないのと聞いたら、そうじゃなくてわざわざ来たのよと彼女は強い口調で言いました。
なんだか『あんたたちに会いに来てあげたのに』と言われたみたいな気分でしたね」
せっかくの楽しい時間が壊れていくのが嫌で、ミヤさんは「いいの、ここはもともと私が払うつもりだったから」と言って伝票を持って立ち上がった。
店を変えてお茶でもするつもりだったが、ミヤさんは「ごめんね、今日はちょっと下の子が早く帰ってくるから」と1人別れて歩き出した。
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でもカフェ代も奢らされたと。私はクニコに何かあったの、大丈夫かなとメッセージを送りましたが、何も言ってこなかった」
家出をしていた女友達
その後しばらくたってから、まったく別の友人のルートで、クニコさんが家出をして実家に戻ったが、実家も追い出されたらしいという話を聞いた。心配になって実家に連絡すると、クニコさんの母親が出た。高校生のころ、よくクニコさんの自宅に遊びに行っていたから、母親もかろうじて覚えていたようだ。「クニコの夫は確かに開業医で豪邸にも住んでいるけど、クニコが自由になるお金はまったくなかったらしいです。年金で1人暮らしのお母さんが時々クニコに1万円送金していたと。クニコは泣いて喜んでいたそうです。確かにあの日、クニコは家出したと言ってやってきたけど、お母さんは子どももいるのだから帰りなさいと諭したと。お母さんとしてはそうするしかなかったんでしょうけど……」
静観しようかと思ったが、「根がおせっかい」のミヤさんはクニコさんに電話をかけてみた。元気なのと聞くと、「元気よ。ああ、ごめん。これから主人とパーティーに行くから」と早々に切られてしまった。
夫婦のお金の問題とは
「彼女が私たちに『わざわざ会いに来た』のは本当だったんでしょう。せめて高校時代の友人たちの顔を見て元気を出したかったのかもしれない。でもランチ代は削りたかったんでしょう。ひょっとしたら本当にお金がギリギリだったのかもしれません。そのまま実家に行ってお母さんにお金を借りて帰ったんじゃないでしょうか。そんなふうに考えたら、クニコがかわいそうになって」できることがあったら言ってとメッセージを送ってみたが、返事はなかった。クニコさんにもプライドがあるのだろう。
「夫婦のお金の問題って難しいですよね。彼女は専業主婦だから、お金にうるさい夫がいたら気持ちもへこむと思う。もしまた彼女が東京に来るなら、もっとじっくり話を聞きたいと思っています」
友達にも言えない夫婦の金銭問題。聞かされたとしても介入しづらい問題でもある。ミヤさんは、クニコさんがいつか話してくれるのを待っているそうだ。
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明治大学文学部卒業。女性の生き方を軸に、家族、夫婦関係、働き方などをテーマに取材・執筆を続ける。くまモンの追っかけ歴は長く、近著に『くまモン力』がある。
(文:亀山 早苗(フリーライター))
