
「50代を超えたあたりから『老後資金が不安』というご相談が多くなります。60代になると『ゆとりのある生活がしたい』、70代になると『子どもや孫に迷惑をかけたくない』というご相談が増えてきます」
生活を楽しめないと幸せとはいえない
数多くの世帯のライフプラン(人生設計)に携わってきたファイナンシャルプランナーの中村哲規さんがそう話すように、各世代における悩みはさまざま。共通しているのが、老後生活のお金に関する不安だろう。
「夫婦で平均的な生活をするために必要な金額は、1か月あたり約28万円といわれています。これに加えて、旅行に行ったり、お孫さんにお小遣いを渡したりすることもあるでしょう。高齢になると、冠婚葬祭費や医療費も増えていきます。そうすると、暮らし方によっては、1か月あたり35万〜40万円を見込んでおいたほうが安心なケースもあります」(中村さん、以下同)
老後はそれほど贅沢をせず、生活費も抑えて乗り切ろうと考える人もいるかもしれないが……。
「現在の生活費から大きく下回る計画は立てないほうがいいと思います。普段から浪費していないつもりでも、外食が習慣になっていたり、趣味にお金を使っていたりと、生活費がかさんでいることがよくあります。老後は質素な生活をするつもりでいても、そう簡単に生活スタイルは変えられない方が多くいます」
|
|
|
|
今から節約生活を習慣にするしかないのだろうか。
「老後資金に不安を感じて節約するあまり、お金を使うことが後ろめたくなって、今の生活を楽しめない方がいます。これでは“幸せな生き方”とはいえません。現在も将来も、楽しく安心して暮らす。そのために必要なのが『ライフプランニング』です」
ライフプランを考える本当の意味とは?
「ライフプランニング」と聞くと、多くの人は「月々の家計」や「将来の資産額」をシミュレーションするものというイメージがあるだろう。しかし、本当のライフプランニングの役割は、それだけではないという。
「ライフプランニングとは本来、人生で実現したいことや大切にしたい価値観を具体的に考えて、その実現のために『いつ、いくら必要か』という“人生の設計図”を描くプロセスです。老後においても、まずは『理想の老後』をイメージすることが大事です」
「理想の老後」といっても、漠然としていてイメージしづらいと思う人がほとんどだろう。
|
|
|
|
「例えば『老後も楽しく過ごしたい』という理想があるとすると、『楽しく過ごす』とはどういうことかを具体的に考えます。年に数回は夫婦で旅行に行くことなのか、自然豊かな田舎で暮らすことなのか、お孫さんと一緒に家族の時間を大切にすることなのか。このように、自分にとっての“幸せ”とは何かを考えていきます」
ライフプランニングを考えるには、3つのステップがある。1. 実現したい夢や目標、大切な価値観を明確にする 2. 現状の収支を洗い出しながら、夢や目標を実現した場合の資産状況を確認する 3. 理想と現実のギャップを埋めていく。
「ライフプランニングを行うと、思い描く理想と現実のギャップが明確になります。『理想実現のために、あといくら足りない』といった課題が数字で明らかになり、そのための解決策がわかってきます。
例えば『毎月3万円を貯蓄に回せば老後は安泰』という道筋が立てば、それ以外のお金は自由に使うことができます。将来の見通しが立ち、今やるべきことが明らかになる。その安心感を得ることが、ライフプランニングを行う最大の価値なのです」
理想と現実のギャップを埋めていく
ライフプランニングを行うと、理想の生活に必要な金額に対して「お金が足りない」という結果になる場合が多いという。理想と現実のギャップを埋めるにはどうすればいいのか。
|
|
|
|
「3つの方法があります。1つ目は『収入を増やす』です。働き方を変えることはその選択肢の一つでしょう。例えば時給1000円のパートを6時間×週3日で働いているところを、週4〜5日に増やすと年間では30万〜60万円ほどプラスになります。ほかにも、副業を始めたり、退職を後ろ倒しにしたりするのも手です」
では、2つ目の方法とは?
「『支出を減らす』です。特に効果的なのは固定費の削減です。電気代とガス代を組み合わせたお得なプランにかえたり、格安スマホにかえたり、保険を見直したりする方法があります。また、流動費である食費については『まとめ買いをして、使い切る』ことを心がけてください」
3つ目の方法は「資産運用をする」だ。
「資産運用は、お金が必要になる時期に分けて考えます。例えば短期的な資産形成には現金がすぐに引き出せる預貯金、10年〜20年後の中期的には一定の金利が付いて安全性が高い債券、老後資金など長期的には長期・積み立て・分散が同時に行える投資信託が向いています。
特に少額から始められる投資信託はおすすめです。投資初心者の方はNISAを活用すると安心して始められます」
老後は現在の生活と切り離されたものではないと、中村さんは声を強める。
「現在の暮らし方や働き方の積み重ねが、そのまま自分の未来を形づくります。老後も今の延長線上にあることを意識してほしいと思います」
理想の老後を実現する方法
1. 収入を増やす
現在の働き方によって、将来の資産が変わる。無理のない範囲で、パートの勤務時間を長くしたり副業を始めてみたり、退職を後ろ倒しにしたり。このような選択肢によって将来どんな可能性が広がるのかを考えてみよう。
2. 支出を減らす
節約でいちばん効果が高いのは、固定費の削減。公共料金のプランやスマホの通信費、保険のプランなどを見直してみる。食費は必要以上に出費がかさむことがあるため、「まとめ買いをして、使い切ること」を意識。
3. 資産運用をする
資産運用のポイントは、お金が必要な時期に分けて考えること。短期的には現金がすぐに引き出せる「預貯金」、中期的には金利が付いて安全性が高い「債券」、長期的には長期・積み立て・分散を同時に行える「投資信託」がおすすめ。
教えてくれたのは中村哲規さん
ファイナンシャルプランナー。ブロードマインド株式会社 事業開発部マネージャー、金融教育プログラム「ブロっこり」開発責任者、ファイナンシャルウェルビーイング推進リーダー。2014年、ブロードマインドに入社以来、2000世帯超のライフプランニングに携わる。現在は金融教育の普及にも尽力。
『お金より先に“生き方”の話をしよう 後悔しないためのライフプランニング』
クロスメディア・パブリッシング/税込み1815円
<取材・文/田中史帆里>
週刊女性2026年9月29日・10月6日号
