なぜオーディオテクニカは「サメ革」のレコードプレーヤーを作った? 電通との異色コラボの舞台裏

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2026年09月28日 11:00  マイナビニュース

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オーディオテクニカは、ポータブルレコードプレーヤー「SOUND BURGER(サウンドバーガー)」と、宮城県気仙沼で江戸時代から続くサメ産業を組み合わせた特別モデル「SHARK BURGER(シャークバーガー)」を開発した。3月5日から5月15日まで税込2万8050円からの金額で先行販売が実施され、2026年7月から行われた。(現在は販売終了)



商品の開発は、オーディオテクニカと電通による共創プロジェクトであり、「届かない声を届ける」をテーマに、製品を通じてサメ漁の実情や地域産業の価値を次世代へ伝える狙いのもとで開発が進められたという。



本稿では、オーディオテクニカ マーケティング本部 ブランドコミュニケーション課 宣伝PRグループ リーダーの國分裕昭氏、同グループの土屋志乃氏、電通 BXクリエイティブセンター所属 ブランドプロデューサーの三浦北斗氏、第6ビジネスプロデュース局所属 ディレクターの井上亜紀氏に、「サメ×レコードプレーヤー」という異色のコラボレーションの背景を聞いた。


『サメがレコードの海を泳いでいる』 デザインのこだわり



「SHARK BURGER」は、これまで用途が限られ、十分に活用されてこなかった気仙沼産のサメ革を背面ハンドルに採用し、サメや気仙沼の海をモチーフにした意匠を製品全体に取り入れた特別モデルのレコードプレーヤー。


プレーヤー全体のブルーの色味が海を思わせるような、これまでに発売された「SOUND BURGER」のシリーズとはまた一味違ったデザインだ。



SHARK BURGERの最大の特徴は、背面ハンドルに気仙沼産のサメ革を採用した点だ。天然素材のため、風合いや凹凸などの表情が一つずつ異なり、同じ外観の製品がない。


使用されているのは、主にヨシキリザメで、SHARK BURGERでは新たに製品のためにサメを捕獲するのではなく、すでに水揚げされたサメ革を活用しているのだという。



「1匹のサメから製品に利用できる革は多くても10〜20台分程度だったので、傷を避けつつ、素材をできるだけ無駄なく裁断することにこだわりました」(三浦氏)


また、背面の金属プレートには、実際に使用したサメ革の「捕獲海域の座標」と「品種名」を刻印している。



気仙沼で水揚げされるサメには捕獲海域や品種が記録されており、そのトレーサビリティを製品上でも可視化する仕組みだ。乱獲や違法漁業によるものではなく、管理された漁業によって得られた素材であることを製品自体で示す狙いがあるという。


青い背面と白い腹部を持つヨシキリザメをイメージして、本体も青と白のツートーンカラーに仕上げられている。上蓋にはサメの歯を思わせるギザギザの意匠を施し、レコード針側にはサメ型のヘッドシェルが採用されている。さらにスリップマットには、サメだけでなくプランクトンなどを含む気仙沼の海の生態系を表現している。


「サメ型ヘッドシェルについては、デザインだけでなく、レコード針に必要な針圧や重量バランス、上蓋を閉じた際にヒレが干渉しないことなど、音響機器としての制約も考慮して制作しました。『サメがレコードの海を泳いでいる』ように見えるデザインを実現するため、形状と機能の両立に苦労しました」(國分氏)


SHARK BURGERの本体サイズは約幅100×奥行290×高さ70mm、質量は約900g。Bluetoothと有線接続に対応しており、USB Type-C で充電が行える。


オーディオテクニカが「届かない声を届ける」



今回の企画で軸となったのが「届かない声を届ける」というコンセプト。音響機器メーカーであるオーディオテクニカが、十分に知られていない地域産業の声を製品や音楽を通じて伝えるという発想を元にプロジェクトが進められた。



このコンセプトをもとに、オーディオテクニカと電通によるチームで50〜60案ほどのアイデアが検討され、最終的に選ばれたのが「気仙沼のサメ産業」だったのだという。



サメはフカヒレをはじめとして、身はすり身などの食品、骨や軟骨はコラーゲンやサプリメント、化粧品原料などに利用されている。一方で、サメ皮は用途が限られ、ほかの部位と比べて十分な活用が進んでいないという課題があった。



さらに根深いのが「サメ=乱獲」というイメージが定着してしまっているという問題だ。



「今回のプロジェクトは、実際に現地でサメ産業に関わっている方から『気仙沼はサメが有名だが乱獲のイメージが強くなってしまっていて困っている』という声を聴いたことが発想の原点です。このお話を聴いた時に、これこそが『届かない声』だと確信しました」(三浦氏)



さらに今回のプロジェクトでは、「届かない声を届ける」というテーマを音楽でも表現するため、ヒューマンビートボクサーのSHOW-GO氏が楽曲「Ocean Voices」を書き下ろす取り組みも行われた。



ミュージックビデオは気仙沼の漁港で撮影され、製品だけではなく音楽と映像を通じて地域の風景やサメ産業を発信した。



「今回のプロジェクトは『サメのまち気仙沼構想推進協議会』や気仙沼市とも連携して行われました。協議会の方々への協力依頼や、気仙沼市への撮影許諾・協力依頼なども、オーディオテクニカさまと電通が一緒になって進めました。それぞれが得意な部分で助け合いながら、本当にワンチームで取り組んだプロジェクトだったと思います」(井上氏)


「サメ産業」と「レコード」をつなぐ共通点とは?



「サメ産業」と「レコードプレーヤー」。一見すると関わりのない組み合わせだが、國分氏によると、両者には「文化を次の世代へ残す」という共通点があるという。



オーディオテクニカは1962年、レコード用カートリッジの製造から事業を開始した。CDなどデジタルメディアの普及によってアナログレコード市場は一度縮小したものの、近年は再び人気が高まっている。同社では、アナログ文化を次世代につなぐことを継続的なテーマとしているという。



一方、気仙沼のサメ漁は江戸時代から続く伝統産業だ。気仙沼港にはサメ専用の水揚げ場があり、マグロやカツオと並ぶ主要な水産資源の一つであるものの、後継者の減少など地域産業としての課題もある。



「私たちはいま、『もっと、アナログになっていく。』というテーマを掲げています。『人と人』『人と地域』『人と文化』をつなぐことで、世の中をもっと楽しくしていきたい。その考えと、気仙沼で長く受け継がれてきたサメ産業が重なり、今回の取り組みにつながりました」(國分氏)

今後も「人と人」「人と地域」「人と文化」をつなぐ役割を担う



土屋氏によると、通常のSOUND BURGERは、1982年発売の初代モデルを知る世代が購入者の中心になる傾向がある一方、SHARK BURGERでは幅広い年代から反響があったという。



「SHOW-GOさんのファン、レコード愛好者、気仙沼出身者、震災復興への支援として購入した人、サメそのものが好きな人……さまざまなバックボーンを持つ方から反響が寄せられました。初めてレコードプレーヤーを購入したユーザーも多かったです」(土屋氏)


サメ革についても、今回の製品を通じて素材そのものの価値や背景を伝え、活用の可能性を広げていく。



「サメ革の利用拡大が、製品を目にするすべての人々にサメ産業への関心を持ってもらう一つのきっかけになることも期待しています」(國分氏)



一方の電通も、地域や文化が抱える「届かない声」を発掘し、企業やブランドとの共創を通じて社会へ届ける取り組みを広げていく考えで、「次なる届かない声を見つけてプロジェクト化していきたい」と今後の展望を語った。(森歩美)

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