「送料無料」のその送料、いったい誰が払っているのか

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2026年09月30日 07:30  JIJICO

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送料無料と書いてある通販でも、運ぶ人の手間と燃料などのコストはかかっています。それを払っているのは、商品代に送料を含める形で支払っている買い手か、利益を削った売り手です。「送料無料」と表示されていても、実際には配送にコストがかかっており、買う側からは商品そのものがいくらなのか分かりません。


その表示が、この2年で書き換わってきました。ファンケルは2024年5月から、「送料はファンケル負担」または「送料当社負担」へ順次切り替えています。消費者庁が集めた取組事例のページには、アマゾンジャパンや楽天グループなども載っています(消費者庁 「送料無料」表示の見直し取組事例 )。


きっかけは、2023年12月19日の消費者庁の発表でした。消費者庁は同年6月から9回の意見交換会を開き、運送業界、荷主側の事業者団体、消費者団体などから話を聞いています。そのうえで、「送料無料」という表示そのものを法律で規制することは見送りました。代わりに、誰がその費用を負担しているのかを説明するよう、事業者に自主的な対応を求めています。


この動きの背景には、物流の「2024年問題」があります。2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限が設けられ、一人のドライバーが運べる量が限られました。その対策として物流効率化法が改正され、2025年4月1日から、荷主企業にも荷待ち時間の削減や積載率の向上が努力義務として課されています。2026年4月1日からは、一定規模以上の事業者が「特定事業者」に指定され、中長期計画の作成と定期報告が義務になりました。特定事業者に指定された荷主には、さらに物流統括管理者の選任も義務付けられます(国土交通省 物流効率化法について)。


この表示に以前から異を唱えてきた方がいます。鉄道貨物輸送の現場をYouTubeチャンネル「貨物ジャーナル」で発信している貨物ジャーナルさんです。2025年7月には『貨物列車 探究読本』(河出書房新社)を出版しています。掲げてきたのは「送料無料という言葉を無くしたい」という主張です。
「父が長距離トラックドライバーでした。元の勤務先では鉄道貨物輸送の実務に関わっていました。運ぶ側も荷主側も見てきたつもりです。その上で『送料無料』を見ると、どうしても引っかかるのです」(貨物ジャーナルさん)。


元の勤務先やJR貨物の協力を得て、工場を出たコンテナが貨物列車に載るまでを撮影しています。個人の通販で使うのは宅配便で、貨物列車ではありません。それでも、集荷、仕分け、積み込み、配達と工程が積み上がって運賃になる点は同じです。無料と書いても、こうした工程は減りません。減らないのに、誰がいくら払ったのかが見えなくなります。


「送料無料」という書き方が標準だった間、小さな事業者は損をしてきました。同じ「送料無料」でも、実際にかかっている運賃は事業者によって違います。大手なら運賃がもともと安いうえに、1点あたりに薄く広げられます。一方で、年に数十個しか出さない売り手は、その運賃を1点の利益からまるごと引くことになります。それでも検索結果で大手と同じ「送料無料」に見えるようにするには、差額を自分で負担するしかありませんでした。


送料を別に書くことが当たり前になれば、買い手は商品代どうしを見比べられます。小さな事業者が割高に見えていたのは、1点あたりの送料が高くつき、それを商品代に含めていたからです。別立てが標準になれば、少なくとも商品そのものの値段は同じ条件で比べられます。送料の差は残りますが、それは商品の値段を疑う話ではなく、運賃をどう説明するかの話に変わります。


送料を別に書くなら、その金額の根拠を聞かれます。北海道と沖縄だけ高い理由も、何個買っても同じ金額になる理由も、書いておく必要が出てきます。これまで「無料」の一語で済んでいた場所に、説明する欄が増えます。


ここは小さな事業者のほうが書きやすいところです。自分で梱包して自分で発送していれば、箱の代金も、持ち込みと集荷の差も、実際の金額を知っています。60サイズと80サイズの差額も、持ち込み割引がいくらになるかも、2個口にしたときの合計も、手元の伝票で確かめられます。同じことを大手に聞けば、担当者が社内の運賃表を確かめてからの返事になります。自分で出している人は、その場で数字が出ます。


値段の付け方を見直す材料は、通販を本業にしていなくても手元にあります。フリマアプリやハンドメイドのサイトで1点でも売ったことがあるなら、原価、梱包材、送料、決済手数料、利益の5つは、その1点の中ですでに分かれています。この5つを書き出せる人は、送料を別に書くことになっても値段を下げずに済みます。買う側でも同じで、送料が別に書いてある店とそうでない店を並べれば、商品そのものの値段を初めて比べられます。何にいくらかかっているのかを自分の言葉で言えるなら、送料を別に書くことは、隠していたものを表に出す作業にすぎません。


インタビュー協力:貨物ジャーナルさん
https://www.youtube.com/@cargojournal



(新井 一・起業コンサルタント)

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