「ファストパス」のチケット(手前)と行列ができるラーメン店前で並ぶ人々=7月、東京都中央区 料金を支払うことで優先案内される「ファストパス」が、飲食店で広がっている。行列に並ばず入店できるため、若者や観光客を中心に好評で、専門家は「時間の有効活用を目指す『タイパ』(タイムパフォーマンス)志向に合っている」と分析。美術館など入館までの待ち時間が長い施設にも広がる余地もあると話している。
飲食店向けに導入されたファストパスの一つに、「SuiSui」と呼ばれるサービスがある。運営会社によると、都心部や観光地などの行列ができる飲食店で使われており、9月18日時点で20都道府県の104店舗で採用されている。
利用者は各店舗前に掲示されたQRコードをスマートフォンで読み取り、チケットを事前に購入することで優先的に入店できる。料金は店舗によって異なるが、500〜2000円程度で、混雑状況に応じて変動する。
JR東京駅に直結した八重洲地下街にあるラーメン店「豚山」では、2023年12月にサービスを導入。昼食や夕食の時間帯には30分〜1時間待ちの行列ができるといい、平日は1日平均で6件ほどの利用があるという。
仕事帰りに友人と500円でファストパスを利用した東京都台東区の会社員竹之内悠将さん(29)は「食べた後の時間を有効に使うため」と話す。行列に並ばずに済むことに魅力を感じ、これまでに10回以上利用した。「時間は取り戻せないが、500円くらいならすぐに取り戻せるかな」と満足そうに語った。
ファストパスは観光地でも。京都市のそば屋「京都鴨蕎麦 田」では24年6月の導入以降、観光客を中心に利用が広がっている。土日祝日には2時間以上の行列ができるといい、カップルが1人4000円を払い利用したことも。同店運営会社の柴田英行代表取締役(45)は「先に食事を済ませ、空いた時間で観光地を回れるので喜ばれているのでは」と話す。
消費者行動などを研究する公益財団法人「流通経済研究所」(東京)の鈴木雄高特任研究員は、タイパ志向が強い若者世代が待ち時間をなくしたいと考え、ファストパスを使っていると指摘。今後は美術館など待ち時間の長い施設にも広がる余地があるとした上で、「認知度が上がれば若者以外にも使う人が出てくるのでは」と語った。