世界最高峰のシャンパンを生む「ブドウ畑」は誰のもの? 有名ブランドですら所有はわずか約1割

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2026年09月30日 08:01  マイナビニュース

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300年以上の歴史を持ち、世界最高峰のスパークリングワインとして親しまれてきたシャンパン。その世界ではいま、大手メゾン中心の時代から、土地や造り手の個性を映す小規模生産者へと価値観が変化している。書籍『世界を歩いたワインインポーターが語る 変貌するシャンパンの世界―教養として知るシャンパン革命―』(石田大八朗/ジェイコード)では、長年シャンパーニュの現場を見てきたワインインポーターの視点から、その歴史や近年の潮流、知っておきたいトリビアや楽しみ方までを解説する。本稿では、その一部を抜粋して紹介する。

今回は「シャンパーニュ地方の土地と畑は、誰のものなのか?」。

○シャンパーニュ地方の土地と畑は、誰のものなのか?

9月のシャンパーニュ地方は、収穫期(ヴァンダンジュ)を迎えます。この時期に畑に立つと、ここが、農民の土地であることを改めて実感します。世界最高峰のラグジュアリーワインを生む土地……そう聞けば、どこまでも広がる巨大農園を想像するかもしれません。でも、実際に目にすると、想像よりもかなり小さな印象です。数字でみると、AOC(フランスが世界に先駆けて整備した原産地保護制度のこと。「どこで造られたか」という土地の価値を法律で守る仕組み)を名乗れる319村には、合計で約3万4千haのブドウ畑があります。

それが28万近い区画に分かれているので、1区画あたりの平均面積は0.12haしかありません。畑の総面積のうち、メゾンが所有するのはそのうち10%程度なので、残りの90%は約1万6千戸のブドウ栽培農家が分け合っている構図になります。実際にはさらに偏りがあり、1ha未満の数区画のみ、中には、数列のブドウ樹だけを代々受け継いできたような農家もあるのです。また、一人の生産者が複数の村、アヴィーズに0.2、クラマンに0.15、オジェに0.3のように小さな区画を持つことも珍しくありません。収穫期になると、そんな小さな畑に一家総出の姿が現れます。祖父母、夫婦、親戚、季節労働者たち。朝靄の中、ハサミの音だけが静かな丘陵に響きます。摘み取られたシャルドネやピノ・ノワールは、小さなケースに丁寧に並べられ、醸造所へ運ばれていきます。そこには、大量生産の農業とはまったく異なる時間が流れているようです。一般的には、シャンパンの主役は巨大メゾンだという印象があります。しかし、その華やかなブランドを支えているのは、こうした多くの小農家たちなのです。

19世紀以降、他の多くのワイン産地がそうであるように、シャンパーニュでもブドウ栽培農家の数はピーク時より減少しました。その減少は、相続による統合、後継者不足、小規模農家の廃業、一部のメゾンによる畑取得などが積み重なった結果です。ボルドーのように巨大資本へ畑が極端に集約されていった構図とは少し異なり、シャンパーニュの畑は今なお数多くの農家によって所有され続けています。これは後から振り返れば、シャンパーニュの歴史を大きく変える伏線だったのかもしれません。もしすべての土地所有までメゾンが支配していたなら、本書で解説する「シャンパン革命」は生まれていなかったでしょう。しかし実際には、土地は農家の手に残っていました。つまり、彼らには自らワインを造り、自らの名前で世に送り出す可能性が残されていたのです。

そして20世紀後半、その可能性を現実へと変えた生産者たちが現れます。

アンセルム・セロス(Anselme Selosse)をはじめとするRM(レコルタン・マニピュラン)たちです。彼らは、従来の「メゾンの均一性」ではなく、村ごとの個性、単一区画の表現、栽培哲学、生産者自身の思想を前面に押し出し始めました。それまで長らく「原料供給者」として扱われてきた農家たちは、自らの畑そのものが価値になり得ることに気づきます。そして、自分たち自身もまた、一つのブランドになれることを証明していきました。

ここから、シャンパーニュは300年近く続いた「ブランドの時代」から、「テロワールの時代」へと、大きく舵を切り始めることになるのです。

○『世界を歩いたワインインポーターが語る 変貌するシャンパンの世界―教養として知るシャンパン革命―』(石田大八朗/ジェイコード)

シャンパーニュは300年以上にわたり世界最高峰のスパークリングワインとして親しまれてきました。一方で近年、大きな価値観の変化が起きています。かつて主流だった大手メゾン中心の時代から、畑や土地、造り手の哲学を映し出す小規模生産者「アルチザン・シャンパーニュ」へ──。世界中のワインラバーやトップソムリエたちの注目は、ブランドではなく、生産者の思想やテロワールへと移りつつあります。本書では、長年にわたり世界各地の生産者を訪問してきたワインインポーターの視点から、シャンパーニュの歴史だけでなく、業界を揺るがす大転換期の内幕を解説しています。

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