【F1】アロンソ「電気エネルギーが使えない」と嘆く9年ぶりのマレーシア 雨が降れば大混乱になる可能性も

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2026年10月02日 16:40  webスポルティーバ

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 セパン・サーキットの中心には、マレーシアの国花「ハイビスカス」をモチーフにした大屋根がそびえ立つ。そしてその両脇に、長い2本のストレートが伸びる。

 実に9年の時を経て、F1がセパンの地に戻ってきた。中東情勢の悪化を受けて開催が見送られたバーレーンGPがマレーシアで代替開催されるという、特異な形で実現することになった。

 ここは2003年にフェルナンド・アロンソ(当時ルノー)が自身初のポールポジションを獲得し、初表彰台(3位)にも登って一躍スターダムにのし上がった場所だ。2005年にはルノー、2007年にはマクラーレン、2012年にはフェラーリで勝利を収めるなど、思い出の多い地でもある。

 そのアロンソが、ずっと保留にしていたアストンマーティンとの契約延長を決めた。来年7月には46歳となる2027年シーズンも現役続行することを発表し、この地にやってきた。

「2027年が楽しくなる、という保証はどこにもない。だけど、これは自分自身と交わす約束だ。僕自身はまだ速さがあると感じているし、モチベーションも高い。自分がやっていることを楽しめてもいる。

 いつも自分の内側には情熱の炎が灯っているし、その場所にいて、もっと速く走りたいという思いがある。今もそれは感じている。それがある限り、僕は辞めるべきではないと思ったんだ」

 競争力を欠いた現状がモチベーションに影響を及ぼすことを、アロンソは否定しなかった。しかし、彼が求めるのは走る喜びであり、勝てるかどうかの前に、来季以降のF1レギュレーションがもっと走る興奮を与えてくれるものになることを望んでいる。その可能性が感じられたことが、今回の決断の大きな理由でもあるという。

 逆に言えば、2026年の規定では走る喜びは感じられない。セパンは低速から高速までさまざまなコーナーが存在するエキサイティングなレイアウトだが、今年のマシンではその魅力を最大限に味わえないだろうとアロンソは語る。

【ホンダにとって厳しいコースレイアウト】

「今週末はすばらしいサーキットでレースをするけれど、セクター2では悲しいことになるだろう。なぜなら、電気エネルギーが使えないからだ。

 ターン14からターン4まで続く3本のストレートでバッテリーを100%使わなければならなくて、それ以外はバッテリーをリチャージしているだけだから。マシンのグリップの限界まで走らせることができないのが、今、僕らが直面している問題だ」

 セパンのメイングランドスタンドを挟んで伸びる2本のストレートは、非常に長く見えるが、実際には1kmもなく、全開区間も10秒前後に過ぎない。しかし、ターン2からターン4までも同じように約9秒間の全開区間が続き、ストレート車速を確保するためにここで電気エネルギーを多く使いすぎれば、本当にラップタイムに効く場所や、ドライバーがマシンの限界まで攻めて走りたいコーナーで、エネルギーを使えないといったことが起こり得る。

 パワーでライバルに負けているだけに、ホンダも決してラクな戦いになるとは思っていない。折原伸太郎トラックサイド・ゼネラルマネジャー兼チーフエンジニア(GM)はこう語る。

「長いストレートでエネルギーを使ってストレート車速を稼ぎ、他車に負けないようにしたいんですが、そこにエネルギーを使いすぎてしまうと、ほかのラップタイムを稼げるところにエネルギーを使えなくなってしまう。そこのバランスをどう取るかが難しいところですね。

 FP1とFP2でそれを確認し、素早く最適化していくことが重要だと考えています。テクニカルなサーキットという印象も強いかと思いますけど、長いストレートが2本あるので、我々にとってはチャレンジングだと思っています」

 高い気温のため冷却面の要求は厳しくなり、高い湿度によりエンジンの燃焼も影響を受ける。パーシャルスロットル(※)時のトルクデリバリーは不安定になりやすく、ドライバビリティに影響を及ぼさないように特殊なセッティングを施す必要がある。

※パーシャルスロットル=スロットルを全閉にも全開にもせず、中間の開度に保つこと。

【2026年型パワーユニットの雨対応は?】

 折原GMはこう説明する。

「湿度はかなり燃焼に影響してきますので、HRC Sakuraのベンチでもどういう影響が出てくるかを確認し、それに対する対策データも入れています。でも実際にサーキットで走って、それが想定どおりに機能するのかをチェックすれば、おそらくいろんなチューニングは必要になってくるので、それをフリー走行でしっかり修正しないとドライバビリティに影響が出てきます。新しいサーキットなのでエネルギーマネジメントも大変ですが、湿度対応もかなり大きな部分だと考えています」

 前戦アゼルバイジャンでアロンソは、ストレートでのあまりの競争力不足ゆえに20周でマシンを降りた。しかし、レース後に徹底的なデータ分析とメンテナンスを行なっても、彼が口にしたような問題や兆候は見つからなかったという。ストレートでパワーが低下するような事象も起きていなかった。

 バクーのように極端な連続全開時間(約22秒)はなく、ICE(内燃エンジン)のみで走る区間もそれほどない。とはいえ、3本連続のストレートが待ち構えるセパンで、どんな戦いができるのか。また、ドライバーたちが匙(さじ)を投げないようなパフォーマンスが発揮できるのか。

 それは走り出してみなければわからない。9年ぶりの開催とあって、どのチームにも有益な事前データはなく、路面のグリップレベルもまだ推測の域を出ないからだ。

 そしてマレーシアでは、毎日のようにスコールが降り、今季初のウェットコンディションとなる可能性も十分にある。

 そうなれば2026年型パワーユニットでは初めての雨のレースとなる。ウェットではパワーデリバリーの規定も変わるため、各チームとも対応に追われることになる。決勝で突然の雨となれば、チームやメーカーごとの差も大きく出て、大混乱に陥る可能性もある。

 グランドスタンドの屋根にそびえるハイビスカスの花が明るく咲くのか、雨に濡れるのか。久々のセパンで、アロンソは初心を取り戻すような走りを見せてくれるのか。どんな結果であろうと、最後までチームとファンを鼓舞する走りを期待したい。

米家峰起●取材・文 text by Mineoki Yoneya

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