「相続税がかなり減る」と父が建てたアパート。数年後に相続した息子は「家賃を下げなければ入居者が決まらず」多額の借金も…“節税物件”の厳しい現実

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2026年10月05日 12:01  マイナビニュース

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「相続税がかなり減ると言われたので、父がアパートを建てました」



一見すると、相続対策に成功したように聞こえます。ところが、数年後に父親が亡くなり、そのアパートを相続した息子から相談を受けました。



築年数はまだそれほど経っていません。しかし、すでに周辺には新しい賃貸住宅が増え、家賃を下げなければ入居者が決まりにくくなっていました。さらに、多額の借入金も残っています。



父親にとっては「相続税対策」だった不動産が、息子にとっては「これから何十年も経営し、借入を返済していかなければならない事業」になっていたのです。



前回、相続税を減らすことと、良い資産を次世代へ残すことは同じではないとお伝えしました。今回は、その典型例ともいえる「節税アパート」について考えてみます。


なぜアパートを建てると相続税対策になるのか



更地に賃貸アパートを建てると、一定の要件を満たせば、土地については貸家建付地、建物については貸家として評価されるため、自己使用の土地・建物に比べて相続税評価額が低くなる場合があります。



また、建築資金を借入で調達し、相続時に債務が残っていれば、一定の要件のもと相続財産から控除できます。



そのため、現預金を多く保有していたり、評価額の高い土地を所有していたりする人にとって、賃貸住宅の建築が相続税対策の選択肢になること自体には合理性があります。



問題は、ここで検討を終えてしまうことです。

「節税効果」と「事業収支」を混同しない



例えば、1億円を借り入れてアパートを建築したとしましょう。



重要なのは、「1億円借金が増えたから、その分だけ得をした」という話ではありません。



1億円の借入と同時に、1億円を投じた建物を所有することになります。



相続税評価額を圧縮する効果と、借入を伴う賃貸事業として採算が取れるかどうかは、分けて考える必要があります。家賃収入が順調に入り、運営費や修繕費、借入返済を賄ったうえで適正なキャッシュフローが残るのであれば、一つの事業として成立します。



しかし、その前提が崩れたらどうでしょうか。

新築時の収支が30年間続くわけではない



アパート経営で特に注意したいのが、当初の事業計画です。



新築時には競争力がありますから、比較的高い家賃で入居者を集められることがあります。



しかし、建物は毎年古くなります。周辺には新しい競合物件が建つかもしれません。人口や世帯構成、賃貸需要そのものが変わることもあります。



10年、20年と経過すれば、


家賃の下落

空室期間の長期化

入居者募集費用の増加

給湯器やエアコンなど設備の更新

外壁・屋根・防水などの大規模修繕


といった負担が重なってきます。



一方、借入金の返済は続きます。



したがって確認すべきなのは、新築時に満室になるかではなく、家賃が下がり、空室や修繕費が増えても事業が成立するかなのです。

「家賃保証」があっても経営判断は必要



「一括借上げだから安心です」という説明を受けて建築を決めるケースもあります。



確かに、一括借上げやサブリースには、管理負担の軽減や一定の収入安定化というメリットがあります。



しかし、「家賃保証」という言葉だけで長期間の収入が固定されると思い込むのは禁物です。



契約内容によっては賃料の見直しが行われる場合がありますし、契約条件や免責期間、修繕負担なども確認する必要があります。



重要なのは、「保証されているから大丈夫」ではなく、契約条件が変化した場合でも自分の事業として成立するかを確認することです。

相続する子どもは「大家になる」ことを望んでいるか



そして、生前対策ではもう一つ重要な問題があります。



そのアパートは誰が引き継ぐのでしょうか。



親は不動産経営に慣れていても、子どもは会社員で遠方に住んでいるかもしれません。



「アパートを残しておけば毎月家賃が入るから、子どものためになる」と親は考えていても、子ども自身は不動産経営を望んでいない可能性があります。



しかも相続するのは建物だけではありません。借入、管理、修繕、入居者対応、将来の建て替え、そして最終的な売却まで含めた「経営責任」も一緒に引き継ぐことになりま


相続対策を考える段階で、子どもも交えて話し合っておくべき理由はここにあります。

「節税できるアパート」ではなく「残せる事業」か



アパート経営そのものが悪いわけではありません。



立地と需要を十分に調査し、無理のない資金計画を組み、長期的に安定した経営が期待できるのであれば、賃貸アパートは相続対策と資産形成の双方に役立つ可能性があります。



問題なのは、「相続税が下がるから建てる」という一点だけで意思決定してしまうことです。



建築前に確認すべきなのは、節税できるかではなく、相続後も事業として成立するか。



そして、子どもが引き継いでも「残してもらって良かった」と思える資産なのか。



相続税対策としての不動産活用は、相続発生時の税額で評価するものではありません。



10年、20年、30年後まで見据えて初めて、その成否を判断できるのです。



次回は、賃貸住宅とは異なる土地活用の選択肢として、「建て貸し」を取り上げます。



店舗や介護・福祉施設など、利用する事業者を想定して建物を建て、土地・建物を一体で貸す「建て貸し」とはどのような仕組みなのか。アパート経営との違いや、相続・資産承継における可能性と注意点を解説します。



佐嘉田 英樹 さかた ひでき アテナ・パートナーズ株式会社 代表取締役。1991年に東京大学卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行、主に融資営業・マーケティング戦略企画に携わる。その後不動産・建設業界に身を転じ、建売分譲、賃貸アパート、介護福祉施設等の企画開発・売買などに従事し、2023年8月に独立。地主・不動産投資家・中小企業の不動産活用コンサルティングやプロジェクト・マネジメント、テナント企業の開業支援を行う。宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター、2級建築士、FP2級など幅広い専門知識を駆使し、総合的な視点からクライアントの課題解決にあたる。
アテナ・パートナーズ株式会社:https://athena-ptr.co.jp/
アテナ・パートナーズ株式会社は、お客様のニーズや目的を詳細にヒアリングして、物件や市場の調査を行った上で、所有不動産の有効活用、開発、建て替え、リノベーション・用途変更、売却、交換など、多角的・戦略的な企画提案・マネジメントを行う。企画計画から資金調達、テナント誘致、設計、工事、引き渡しまで一貫してプロジェクトをマネジメントすることで、独自のビジネスモデルを展開する。 この著者の記事一覧はこちら(佐嘉田 英樹)

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