
国内外で絶大な人気を誇る創作集団・CLAMPの代表作である『魔法騎士レイアース』が30年以上の時を経て再びアニメ化。メインキャストに佐倉綾音、大久保瑠美、高橋李依らを迎え、10月7日より放送スタートとなる。
『魔法騎士レイアース』が令和に蘇る今、名作が揃うCLAMP作品にあらためて注目。アニメライターが選ぶお気に入りの1作をご紹介したい。
「魔法騎士レイアース」佐倉綾音、「アフレコ初期は苦戦していた」大久保瑠美、高橋李依、早見沙織、小野友樹ら登壇!心境や見どころ語ったジャパンプレミアレポ
■日常と異界の境界を曖昧にする『xxxHOLiC』の世界
『xxxHOLiC』に触れていると、なんだか“酔う”。
初めてこの作品に触れた頃は、お酒なんて知らない年齢だったから、この感覚をうまく言葉にはできなかった。ただ、物語を追っているうちに、いつもの日常からほんの少しだけ足が浮いて、現実と非現実の境界線がぼんやりしていく。大人になった今になって思う。あれはきっと、お酒に酔ったときのような感覚だったのだと。
といっても、もちろん本当に酔っぱらうわけではない。夢の中にいるときや、夜更かしした深夜にふと現実感が薄れる瞬間のような、頭の奥がふわふわする感覚。怖い。妖しい。美しい。それなのに、妙に心地いい。気付けば、すっかり『xxxHOLiC』の世界に酔わされている。CLAMP作品にはそれぞれ強烈な個性があるが、『xxxHOLiC』ほど「雰囲気」そのものに引力を感じる作品も珍しいのではないだろうか。
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物語の主人公は、“アヤカシ”を引き寄せてしまう体質に悩まされている高校生・四月一日君尋(わたぬき きみひろ)。ある日、彼は壱原侑子(いちはら ゆうこ)と名乗る妖艶な女性が営む不思議な“ミセ”へと足を踏み入れる。そこは、訪れた人の願いを叶える代わりに、それに見合う「対価」を受け取る場所。「この世に偶然なんてない、あるのは必然だけ」という考え方をはじめ、作中には一度聞いただけでは理解しきれないのに、なぜか心のどこかに引っかかる言葉がいくつも登場する。
そもそも、『xxxHOLiC』に登場する怪異は、ただ人間を怖がらせるだけの存在ではない。嘘をつくことをやめられない人、ネットにのめり込んでしまう人、願いに執着する人……。そこに描かれているのは、アヤカシ以上に恐ろしく、厄介でもある“人間の心”だ。
「やめたい」と言いながらやめられない。「変わりたい」と願いながら、自分では何も変えようとしない。思わずドキリとするのは、それが決して物語の中だけの話ではないからだろう。時代が変わっても、人間の欲や執着はそれほど変わらない。だからこそ、かつて見たエピソードが、大人になってから急に違う意味を持って迫ってくることもある。
そんな人間たちを前にしても、侑子は簡単に正解を教えてくれない。長い黒髪に華やかな衣装、煙管(キセル)を手にした妖艶な佇まい。何もかもお見通しのようでいて、酒を飲んでは四月一日に無茶な要求をする。つかみどころがなく、怪しくて、それでも目が離せない。
そして彼女が語る言葉には、どこか突き放すような厳しさがある。願うだけでは何も変わらない。何かを得るためには、それに見合うものが必要になる。選ぶのも、変わるのも、結局は“自分自身”。子どもの頃には「なんだか深いことを言っている」としか思わなかった言葉が、年齢を重ねるにつれて妙に身に染みる。これもまた、『xxxHOLiC』を何度も味わいたくなる理由なのかもしれない。
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■怪異×日常の間で、気付けば“酔わされる― ?
そんな物語を包み込む“見た目”も強烈だった。すらりと長く伸びた手足、大胆にデフォルメされた人物たち、少女マンガとも少年マンガとも一線を画すミステリアスな色彩。そして、日常のすぐ隣に異界が口を開けているような、不安になるほど静かな空気。決して現実的なビジュアルではなく、むしろどこか歪んでいるのだが、その歪みこそが心地いい。眺めているうちにこちらまで距離感を狂わされ、侑子の“ミセ”へ迷い込んでしまったような気分になってくる。
さらに面白いのが、これほど妖しく不穏な空気をまといながら、ずっと重苦しいわけではないこと。四月一日の賑やかなリアクションや、四月一日の同級生である百目鬼静(どうめき しずか)、九軒(くのぎ)ひまわりたちとのやり取りには思わず笑ってしまう場面も多い。
しかし、さっきまでドタバタとした日常を楽しんでいたはずなのに、いつの間にか背筋がひやりとする怪異の世界へ連れていかれている。その境界線があまりにも曖昧だからこそ、見ているこちらも知らず知らずのうちに作品の空気へと引き込まれてしまうのだろう。
そして物語から日常へ戻ってきたときには、ほんの少しだけ世界の見え方が変わっている。いつもの道の角を曲がった先に、知らない“ミセ”があるかもしれない。何気なく繰り返している習慣にも、自分では気付いていない“執着”が潜んでいるかもしれない。そんなことを考えてしまう。これが、私にとっての『xxxHOLiC』の“酔い”なのだと思う。
強烈なのに、どこか心地いい。怖いのに、離れたくない。そして物語から抜け出したあとにも、侑子の言葉が頭の片隅に残り続ける。一度足を踏み入れたら、素面のままでは帰してくれない。そんな妖しく美しい世界に、私は今でも、ときどき無性に酔いたくなるのだ。
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