
地球規模の気候変動の影響で、国内も毎夏のように猛暑に見舞われている。2026年4月には気象庁が、新たな予報用語として「酷暑日」を追加した。一方で、物価高、エネルギー価格の上昇により、家庭では電気代や水道代をはじめとした生活コストへの不安も広がっている。日々の生活の中で、「洗濯」は水や電気を多く使う行動の一つ。水道代や電気代等を抑えたいと切望する家庭も多いだろう。洗剤の製造販売も行うライオン(東京)は、日々の洗濯習慣を見直すことで節水・節電や排出量削減といった環境負荷低減につなげようと、洗濯のすすぎを一般的な「2回」から減らすことを呼び掛ける「Choose one Project(チューズワンプロジェクト)」を展開している。
同プロジェクトは2024年4月にスタート。プロジェクト立ち上げ当時から携わっている企画担当の内田さんに話を聞いた。
■「すすぎ1回」を提案する「Choose one Project」
―プロジェクト立ち上げの背景は?
「Choose one Project」は、節水・節電・ 削減という「環境負荷低減面」と、衣類を長持ちさせる「衣類のロングライフ化」という2つの軸を掲げ、「すすぎ1回」の洗濯習慣をご提案していくプロジェクトです。2024年4月22日の「アースデー」(地球環境について考える国際的な記念日)にスタートしました。
東京都水道局のデータによると、家庭で消費される水のうち、約16%が「洗濯」によるものだそうです。この部分を見直していくことで、かなり大きな節水の効果が得られます。日々の家庭での習慣を少し変えるだけで取り組める、とても手軽にできるエコ活動です。洗剤を開発するメーカーとして、すすぎが1回で十分な機能を持つ洗剤の提案に力を入れていこうということになりました。
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―「Choose one Project」の具体的な活動は?
ライオンの液体洗剤は全て、すすぎ1回に対応しています。具体的には、1回のすすぎで十分な洗浄力、消臭力を持つほか、衣類に洗剤成分を残さない点が大きな特長です。特に、「NANOX one(ナノックスワン)」シリーズは、汚れをしっかり落とす高い洗浄力と、色あせや黄ばみを防ぎ、衣類本来の色を保つ色変化防止力を兼ね備え、さらに、洗剤成分が残りにくく、すすぎ1回で満足な洗濯効果が得られます。
「Choose one Project」では、まず、毎月1日を「すすぎ1回洗濯」を思い出していただく「oneの日」として設定しました。そして、「NANOX one」シリーズで「すすぎ1回」を実践した体験をSNSで投稿してもらうプレゼントキャンペーン等を行っています。実際に、プロジェクト発足当初から約1年後の2025年3月には、「すすぎ1回」を実践してくださっている方々が、15%増えているという分析結果も出ています。
予想を超えるたくさんの方が取り組んでくださっているという実感です。実践の背景としては、エコ意識ももちろんですが、水や電気などの節約面、そして衣類の傷みの軽減という、まずは直接的なメリットが大きいのではないかと感じています。
そのほか、「すすぎ1回の輪」を広めるために、ライオンが運営するラグビーユニオンチーム「LION FANGS」の2024年公式戦シーズンでは、交流のあるチームに「NANOX one」を配布しました。相互の活動で連携・協力する協定を締結している東京都台東区の地域イベントや、衣料ブランドのイベントなどにも出展し、「NANOX one」での「すすぎ1回」の十分な効果、エコ面でのメリットなどについて解説する展示や、プレゼント企画などを行ってきました。
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―自宅ですすぎ1回で洗濯できるスーツも開発されました。
「Choose one Project」スタート時から賛同してくださっているオーダーメードのビジネスウェアブランド「FABRIC TOKYO」さんと、プロジェクト始動2カ月後の2024年6月から、自宅の洗濯機で洗えてすすぎ1回で済むスーツの開発を始めました。FABRIC TOKYOさんから、「一時のコラボ企画ではなく、長く・立体的な取り組みを実現させましょう」とお声がけをいただいたのがきっかけです。
おうちでガシガシ洗えるスーツがあったら、めちゃくちゃ便利ですよね。そして、「NANOX one」を使った自宅でのすすぎ1回の洗濯に取り組む大きなきっかけにしていただけるのではないかと。まず、どのようなスーツだったらより受け入れていただきやすいだろうかという点から、詳細にコンセプトを詰めていきました。洗濯を繰り返した時に私たちが求める品質に合う生地の選定から始まり、洗濯を繰り返しても崩れにくい縫製の技術などについても細かくご説明をいただき検証していきました。試作品の検証は、ライオンの研究所で「NANOX one PRO」を使って実験を行いました。厳しくチェックするために、洗濯をして、いったん干して乾かしてという工程を、30回行いました。実際に30回洗濯して乾かした時に、どういう仕上がりになっているか。汚れの落ち具合やしわの状況などを、数値的にも確認していきました。その結果、洗濯を繰り返したことによる多少のほつれや剥がれが出るなど、私たちの求めている品質に届かず脱落した試作品もありました。生地の選定から始め、今年(2026年)2月にようやく完成しました。
実験での合計の洗濯試験回数は100回を超え、2年弱かかりました。でもその結果、各項目で申し分のない結果が得られ、30回洗っても新品※と間違えてしまうぐらいのスーツが仕上がりました。
同時に進めたのが、スーツを洗うためのオリジナルの洗濯ネットの開発です。洗濯の過程でできる限りスーツにダメージがかからない構造、かつ、非常にスーツを入れやすく、誰でもデイリーに使いやすいという点にこだわりました。ネットの内側にスーツの袖を入れるポケットがあり、それを説明するタグをネットの表面につけることも、両社の開発者皆で話し合って決めました。
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FABRIC TOKYOさんからは、自宅で洗濯機の標準コースですすぎ1回で洗えるスーツに対してのニーズの高さを感じているところです。購入者はやはり、忙しいビジネスマンの方々が多いようです。
■「すすぎ0回」、本当に大丈夫?
―今年3月に、「すすぎ0回」で洗濯が15分で完了し(国内洗濯機メーカーの代表機種で洗濯時)、高い抗菌効果でニオイを抑制する衣料用洗剤「NANOX one 抗菌×時短」を、イオングループで限定発売されました。「すすぎ1回」からさらに進んで「0回」への挑戦ですね。
少ないすすぎの回数で洗浄効果を発揮する界面活性剤と、汚れを包んで落とす洗浄ポリマー等を組み合わせた新技術によって、泡立ちを抑えて汚れをしっかり落とせる、すすぎ0回洗濯を実現しました。すすぎ0回洗濯なら洗濯全体の約7割を占めるすすぎ工程がカットできて時短になるため、洗濯を早く終わらせたい夜や、あわただしい朝、忙しい日のすきま時間の洗濯にもおすすめです。
ライオンの従来の濃縮洗剤を使った洗濯時のすすぎ1回との、汚れ落ちの比較実験、皮膚科医監修のもとでの肌テストも実施して、確実な汚れ落ちや肌への安全性も検証しています。きちんと洗浄成分が洗い流される構造を実現しており、洗剤残りに対する不安は持たなくて大丈夫です。現在、イオングループの店舗限定で展開していますが、購入の動向次第では、販売チャネルを広げることも検討しています。
―すすぎ0回で十分な汚れ落ち、安全性も確認できているのなら、「0回」を一番推奨されますか?
衣類のダメージに関しては、洗剤の洗浄成分の違いよりも、すすぎの回数の方が、大きな影響を与えます。すすぎ1回より、0回の方が衣類には優しいのです。また、型崩れに関してはすすぎの回数の方が影響しますが、色あせについては、やはり洗浄力が高いと、色が抜けてしまう恐れがあります。その点を、ライオンの開発力を駆使して、黒い服は黒いまま、白い服は白く保てるという力を実現しています。
私自身は、とても時短になる「すすぎ0回」がいいなと思っています。しかし一般的には、すすぎ0回ではやはり不安という方もいらっしゃいます。洗剤が残っているんじゃないか、汚れ落ちが弱いんじゃないかなどの面で不安を感じている方が多い。それが、今年7月に行った、家庭で洗濯を週2回以上する 20 代〜60 代男女を対象にした「洗濯のすすぎに関する実態調査」(有効回答数2000人)で分かりました。
―アンケート結果から見えてきたのは、「すすぎ1回でも安心できる科学的根拠」でしたね。
今回のアンケートで最も多かったのは、「2回すすぎ派」です。その方々に着目し、すすぎ回数を減らすことに対してどのような不安を抱いているのか分析をすると、2 回すすぎ派の 56.5%が「洗剤が残ることに不安がある」と回答しました。また、「汚れが落ちない不安」(33.0%)、「においが残る不安」(29.5%)、「肌への影響」(21.7%)といった回答も上位に入っています。
一方で、すすぎ回数 を「1回」や「0回」にすることで、水・電力の消費削減、CO2排出の削減につながることを提示した上で意向を聞くと、「すすぎを1回にすることで、水道代・電気代の節約につながるなら魅力的だと思う」と回答した人は58.5%、「すすぎを1回にする洗濯方法を実践してみたい」と回答した人は 53.4%と、半数を超えています。
また、すすぎ回数を見直すきっかけとして最も多かったのは、「1回すすぎでも問題ないことが科学的データで示されていること」(49.2%)で、次いで「肌や安全性が保証されていること」(33.8%)、「水道代・電気代が下がる実感」(31.1%)が続きました。
洗濯習慣を変えるには、節約メリットだけでなく、安心して洗濯できる科学的根拠や正しい情報の提供が重要だと感じています。
■「すすぎを減らす目的」は企業命題
―あらためて、すすぎ回数を減らすことを提案する目的を。
「すすぎ1回」を選択してもらうことを提案する「Choose one Project」には、エコに貢献していくという、ライオンの企業姿勢が命題にあります。この点は、プロジェクト始動に際し、社長からも強く発信がありました。一方で、世の中の方々に、洗濯のすすぎ回数を減らすことを強く推奨するというスタンスではなく、平均的に節水の効果が高まるきっかけにしていただけたらと思っています。
「すすぎ0回」でOKの洗剤は、「すすぎ0回」を必須としているわけではありません。すすぎ1回でも問題なく使っていただけるという製品です。すすぎ2回の方が安心という方もまだ多いと思いますが、「1回」や「0回」を試してみていただけるきっかけにしていただけたら。「0回」が不安な方は「1回」からお試しいただけるとうれしいなと思っています。洗浄力や安全性も検証済みの製品を使って、洗濯時間を短縮できて節水もできるというのは、良いことづくしです。すすぎを1回にすると一度のお洗濯で36リットル、0回にすると48リットルの水が節約できます。1年間続けると、お風呂に56回入った分の節水になります。日常の中の手軽なエコ活動として、一度チャレンジしていただけたらと思います。
■ライフスタイルによって選択肢を広げてもらえるきっかけに
―「すすぎ1回」を広めるための情報発信で工夫していることはありますか。
「Choose one Project」では、SNSキャンペーンやイベントに加え、動画コンテンツを活用した情報発信もしています。例えば、ライオン公式キャラクターの『ライオンちゃん』をデビューから43年以来初となる3DCG化した動画コンテンツ「すすぎ回数減らしましょう。〜ラララ♪な新習慣〜」では、すすぎ回数を見直すことのメリットを分かりやすくお伝えしています。環境への貢献というと難しく感じられがちですが、まずは「やってみようかな」と思っていただくことが大切です。楽しみながら新しい習慣に触れていただく入口としても、動画は重要なコミュニケーション手段だと考えています。
―洗濯のすすぎ回数を減らすという提案のために今後展開していきたいことは?
粉末洗剤が主流のころは、すすぎを2回してしっかり洗剤を洗い流すのが一般的でした。でも、今、すすぎ回数を減らせる洗剤開発に取り組んでいる各社の液体洗剤が非常に進化し、それに対応する洗濯機メーカー側もいろいろな進化を続けています。こうした情報を地道に伝達していくということが、一番大事なのではないかなと感じています。
液体洗剤「ナノックスシリーズ」は、シリーズ内の製品の中で、「抗菌×時短」「洗浄プラス」「ニオイ専用」などの特徴を打ち出しています。そのなかでも、当社液体洗剤内最高峰の洗浄・消臭力を有し、衣類の型崩れを防いでくれるのが「NANOX one PRO」で、私のイチオシです。
私自身は、「NANOX one PRO」と、すすぎ0回でOKの「NANOX one 抗菌×時短」を日々の洗濯の中で使い分けています。ただ、皆さんに使い分けてくださいとまでは思っていません。
汚れ物が多く出やすい子育て世代の方、洗濯の時間を短縮したい方など、それぞれのライフスタイルの中で、洗剤選びに視点を増やし、すすぎを「1回」「0回」にするという選択肢が増えるきっかけになれば。そして、日々の洗濯を通してエコ活動への参加を実感していただけたらと思っています。
ライオン1社では、エコ活動推進の中で取り組めることの範囲は限られています。今回、「Choose one Project」のSNSフォロワーの生活者の皆様にも非常に反響をいただき、すすぎ回数を減らすという手軽なエコ活動を、もっと「世の中全体のこと」にしていきたいと感じています。その取り組みの輪の中に入ってきていただける企業、スポーツチームなどのパートナーをどんどん増やしていきたいです。賛同の輪を広げていき、生活者の方々にいろいろな場面で、「月1回からすすぎ回数を減らすエコ活動に取り組んでみよう」と思ってもらえる瞬間をたくさん作っていきたいです。
※オリジナル洗濯ネット使用、30回洗濯後の色あせ・表面ダメージ・ほつれ・破損・サイズ変化が新品同等レベルであること
https://www.youtube.com/watch?v=iZF9Ui0z5v8
