画像は公式サイトよりVTuberマネジメント事務所「hololive(ホロライブ)」を運営するカバーが、9月24日に2027年3月期上期利益を引き上げました。一方、売上予想は従来計画を据え置いています。カバーは共同運営する「hololive Dreams(ホロドリ)」を今年7月にリリース。このゲームは大ヒットを記録し、会社の行く末を左右するものとなりそうです。
◆ホロドリのラッピング車両が持つ意味
カバーの2027年3月期上期の営業利益は従来予想比で8割増の35億円となる見込み。前年同期間比で3割を超える水準であり、営業利益率は12.3%から15.7%へと3.4ポイントも上昇することになります。
カバーは「ホロドリ」が「期初想定を上回る初速を記録」とアナウンス。このゲームはサービス開始初日に100万ダウンロードを突破するという大ヒットを飛ばしました。
「ホロドリ」で見逃せないのが、大々的な広告展開です。9月からは東京の山手線でラッピング車両が運航。外装を「ホロドリ」仕様にし、内装もその世界観を楽しめるよう中吊り広告や映像などを用いてジャックするという趣向です。大阪でも梅田や心斎橋周辺の大型ビジョン11個所で書き下ろし楽曲のMVを放送しました。日本だけでなく、ニューヨーク・タイムズスクエアやロサンゼルスの商業施設の大型ビジョン、ソウル、台北、ジャカルタでも大々的に映像を流しました。
「ホロドリ」は「ホロライブ」初の公式モバイルゲーム。総勢50人以上のメンバーが登場し、リズムゲームなどを楽しむことが可能です。そのゲームを大々的に宣伝するカバーの狙いは明確。既存ファン以外の人にゲームを通して「ホロライブ」の魅力に触れてもらい、ファンになってもらうことです。ゲームは新たなユーザーとの接点づくりに貢献する可能性が高いと言えます。ライトファンの開拓が待ったなしのカバーにとって、ゲームのヒットは足元の業績を伸ばすこと以上の意味を持ちます。
◆物販が業績を支えていたが…
カバーの足元の業績は決して良くはありません。2026年4月〜6月の売上高は前年同期間比8.3%減、営業利益は33.0%減でした。特に深刻なのがキャラクターグッズなどを手掛けるマーチャンダイジング事業。売上高が22.1%も減少したのです。
VTuberのマネジメント事務所にとって、キャラクターグッズの販売は生命線とも言える要素。利益率が高く、売上構成比率も高いからです。カバーは、競合で「にじさんじ」を展開するANYCOLORと比べると、マーチャンダイジング事業に弱さも見られましたが、トレーディングカードのヒットなどによって巻き返しを図っていました。
しかし、今期は四半期の売上が2割以上も減少。伸び悩みの要因は、在庫や生産オペレーションが効率化されておらず、商品の欠品や品揃えの不足が発生するなど複合的です。カバーはオペレーションの改善を進めており、年央から下半期にかけて効果が徐々に顕在化するとの見通しを示しました。
しかし、2027年3月期上期の業績予想において、売上高は従来予想を据え置いています。上期の段階ではオペレーション改善効果が数字に表れなかったことを示します。また、マーチャンダイジングが不調な要因として、人気タレントが相次いで卒業した点も挙げました。決算説明会では、「卒業したタレント分の売上減少を埋めるような、新規タレント分が発生していない状況」と語ります。
「ホロライブ」からは、湊あくあや天音かなた、がうる・ぐらなどの人気タレントが卒業しました。超大物タレントの人数が限られるなかで、グッズのニーズが一部タレントに集中。オペレーションが追いつかずに欠品状態が継続し、新たなタレントも十分に育っていないという悪循環に陥りつつあります。
◆ライトファンの開拓が急務か
カバーは次世代タレントの育成プロジェクトなどを立ち上げ、次なるスターを生み出そうと力を入れます。こうしたなか、市場調査を手掛けるインテージが推し活に関する気になる調査結果を公表しました(「推し活に関する調査」)。全年齢で推しを持つ人の割合は33.6%、2025年比で1.5ポイントの微減となります。
さらに推しのジャンルで、「YouTuber/VTuber」と回答したのは3.5%。2025年の5.5%から2ポイントも落としました。一方で推しへの支出額は増加傾向です。
推し活をする人の減少は、VTuberのような市場にとって大打撃となりかねません。ライトファンが入らずコアなファンで市場が形成されると、内輪ネタによる盛り上がりや熱狂的なファンの排他的な態度により、内向きな活動になりかねないからです。市場の伸びも限定的となり、会社の成長性も失われる可能性があります。
インテージの調査で、推し活をする人の割合が減った一方、支出額が増加した事実が明らかになりましたが、その兆候を示しているようにも見えます。カバーは「ホロドリ」の一般認知を高めようと様々なマーケティングを行いますが、そうした取り組みが業界全体を盛り上げることにもつながります。一時期もてはやされたVTuberは岐路に立たされているのかもしれません。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界