
簗和生農林水産大臣(47)が、過去に自身の選挙区内の自治体に対する国土交通省の予算配分に不当に介入した疑惑が持ち上がっている。
今年2月の衆議院選挙で自分を応援した首長の自治体には予算を多く配分し、そうでない自治体の予算は減らすように働きかけたのではないかという疑惑だ。
「官僚が逆らうことができない“自民党の権力”と忖度の構造がある。この程度のことは自民党の一議員でできる、ということです」
そう語るのは、政治評論家の有馬晴海氏(68)だ。
なぜ、官僚は一議員の要望を汲んでしまうのか。有馬氏は、選挙で選ばれた議員と、国の政策決定や行政の実務を担う官僚との間にある「権力」の差を指摘する。
|
|
|
|
「地元の代議士から『あそこの道路を整備する予算はいらない』と、言われたら、官僚はその議員の要望通りとは言いませんけれども、ある程度、沿ってあげないと、その後仕事ができなくなってしまうといった構造があるのです」(有馬氏、以下同)
簗氏の件は、衆院選後に行った働きかけが、大臣になってから表に出たものだ。しかし、なぜ農林水産大臣のポストはこうも不祥事が続くのだろうか。
事実、2000年以降に農林水産大臣のポストに就任した35人のうち、約10人が引責辞任に追い込まれており、永田町では「農水大臣のポストは鬼門」と揶揄されることも少なくない。
辞任理由として圧倒的に多いのは“政治とカネ”にまつわる問題だ。
過去には、現職閣僚として戦後初めて自殺した松岡利勝元農水相(享年62)や、顔の半分ほどにガーゼを貼った状態で閣議や会見に現れ世間を驚かせた赤城徳彦元農水相(67)が、いずれも事務所経費問題で大臣を辞任している。
|
|
|
|
さらに、その赤城氏の後任として就任した遠藤武彦元農水相(享年81)も、自身が組合長を務める農業共済組合の不正受給問題などが発覚し、就任からわずか8日でスピード辞任に追い込まれた。
近年では、鶏卵生産業者から大臣在任中に計500万円の賄賂を受け取ったと報じられ、直後に議員辞職した吉川貴盛元農水相(75)の事件も記憶に新しい。吉川氏は収賄罪に問われ、2022年5月に執行猶予付きの有罪判決が言い渡されている。
有馬氏は、次々と農水相の不祥事が発覚する背景には、地方選出議員ならではの事情があると分析する。
「国会議員は地元の有権者などから陳情されることが多いのですが、有権者からの要望が不正の温床になりやすい構造なのです。補助金や交付金を優先的に受けやすくなるよう便宜を図った、その過程のなかで献金を受け取るなど、そのようなことが発覚して大臣職を辞めざるをえないというケースは過去に何度もありました」
今回の簗氏の疑惑が浮上した際、国土交通省側は「当時の担当者が覚えていない」と説明し、簗氏からの指示を否定した。
|
|
|
|
有馬氏はこの光景が、2017年に発覚した森友学園問題と酷似していると指摘する。
「基本的に議員とのやりとりを記したメモは残していると私は思います。それを官僚が『覚えてない』という話になると、これは森友学園問題で財務省の決裁文書から安倍晋三元首相(享年67)の妻である安倍昭恵氏(64)に関する記述約290カ所を削除して書き換えた、あのときの出来事と似ています」
森友学園問題では、主に国会答弁や政府の関与を否定する説明と辻褄を合わせるため、財務省が決裁文書を改ざん。その結果、後に改ざんを強いられた近畿財務局職員の赤木俊夫さん(享年54)が自ら命を絶つという痛ましい事態も起きている。
同氏はこう続ける。
「政治家から指示を受けたとしても『政治家の指示を受けてやりました』と本当のことは答えられません。なぜなら政治家はその時点で議員辞職しなければならないからです。『連絡はいただきましたけども当時の出来事は担当者が覚えていない』という答えになるのです」
さらに有馬氏は、そうした官僚の苦しい答弁に対し、明確な矛盾点も指摘する。
「しかし、栃木3区の選挙区内で、簗氏を支援した自治体は(社会資本整備総合)交付金が10%以上上がって、対抗馬を応援した自治体は20%以上下げられたなど、単なる偶然という説明に納得する人はいないのではないでしょうか。自民党議員と官僚の日常的な“忖度”の実態を、今回の疑惑が新たに浮き彫りにしました」
こうした疑惑に対し、7日午前、農林水産省内で報道陣の取材に応じた簗氏は、自らの関与を否定し、今年2月中旬に国交省へ問い合わせた事実に関しては「地元からの要望を受け、国交省につないだ」と釈明した上で、担当者とのやりとりについては「記録は残していない」と述べるにとどめた。
簗氏はあらためて大臣の辞任を否定したものの、新たな証拠が出るなど、状況次第ではどうなるかはわからない。
「簗氏の件は大臣になったからクローズアップされただけで、表に出ていない話はたくさんあるはず」
有馬氏がそう苦言を呈するように、今回の疑惑の背景には、自民党の長期政権による驕りが見え隠れしている。
|
|
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2026 Kobunsha Co., Ltd. All Rights Reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。