プルデンシャル生命保険の金銭詐取問題は、営業成績に連動した「フルコミッション(完全歩合制)」に近い報酬制度が遠因だった。金融庁は「多数の金銭詐取事案を生じさせた背景」と問題視。同社は来年1月に制度を刷新する方針だが、染み付いた過度な成果主義の組織風土を変えるのは容易ではない。
多くの生命保険会社も営業職員の報酬は歩合制が基本だが、プルデンシャルの場合は契約額に応じた手数料が4分の3を占め、入社から3年目以降は固定給がない。営業社員は契約数などに応じて6段階に区分され、最上位の「エグゼクティブ・ライフプランナー」は個人ブースを使えるなど別格の扱いを受けていた。
第三者委員会の調査報告書によると、2025年度は約400人の年間報酬が3000万円を超え、3億円を超える社員もいた。営業社員は「自主性を重んじることが神話のように受け止められていた」といい、管理職による監視の目が届きにくかった。
年間の新規契約獲得から得られる手数料などを基にランク分けした成績優秀者とその家族をハワイや沖縄に招く「社長杯」と呼ばれる表彰制度で過度に社員を競わせたことも、成果至上主義を加速させた。得丸博充社長は記者会見で「金銭に過度に意識を持つ社員は、(顧客への)貢献より報酬で動いてしまった」と、制度を見直す考えを示した。
一方、営業活動の経費は社員が負担し、契約が取れなかった場合の収入は地域ごとの法定最低賃金にとどまる。経済的に困窮した社員の一部は、顧客から金銭を詐取するといった不正に走った。金融庁は今回の処分に当たり、「金銭に執着の強い人材の排除に向けた措置を検討していない」と経営体制の不備を指摘した。
類似の報酬制度を導入しているソニー生命保険も社員らによる金銭詐取問題が発覚し、金融庁が立ち入り検査を行った。生保業界に詳しい福岡大学の植村信保教授は、完全歩合制について「不祥事の危険性が高く、リスクを抑える仕組みができていなかった」と指摘。さらに、「生保業界では売り上げを重視する文化が根強い。どう変えていくのかが共通の課題だ」と述べた。