【プロ野球】なぜ巨人は阪神を追い詰めながら勝てなかったのか 広岡達朗が見抜いた「勝負師としての決定的な差」

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2026年10月10日 09:41  webスポルティーバ

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 2026年のセ・リーグは、阪神が球団史上初のリーグ連覇を達成して幕を閉じた。

 開幕前、多くの評論家が阪神の連覇を予想していた。交流戦では失速したものの、その後は順調に勝ち星を積み重ね、首位を快走。ところが、9月上旬の7連敗によって2位・巨人とのゲーム差がなくなるまで詰め寄られ、最後まで予断を許さない展開となった。

 それでも、最後は総合力で他の5球団を上回った。阪神は79勝62敗2分で2年連続のリーグ優勝を達成。2位・巨人に2.5ゲーム差をつけてペナントレースを制した。

 ヤクルト、西武で監督を務め、リーグ優勝4回、日本一3回に輝いた球界の大御所・広岡達朗氏(94歳)は、今季のセ・リーグをどう見たのか。阪神連覇の要因から巨人の敗因、そしてクライマックスシリーズ(CS)の展望まで、独自の視点で語った。

【巨人に足りなかった勝負への執念】

「そもそも力の差は歴然としていた。阪神がもたもたしているうちに巨人が追いついただけで、巨人に地力があったとは到底思えない。DeNAは先発投手陣が早々に崩壊し、広島はいかんせん得点力不足。中日は投手力こそ悪くないが、勝ちきれない。言うなれば、阪神以外は監督の手腕がどうにもこうにも劣っている。敗軍の将を責め立てるのに遠慮はいらん。こうして見れば、阪神が優勝してくれないと格好がつかんし、野球じゃなくなる」

 あいかわらずの歯に衣着せぬ物言いで、他球団を一刀両断した。

「阪神は途中、近本(光司)の離脱があったものの、1番から5番までの打順をほぼ固定できた。何度も口を酸っぱくして言っているが、打線をコロコロ変える巨人とは雲泥の差だ。いくら転換期だといっても、シーズンのどこかで打線を固定しなければ、勝てる試合も勝てなくなる。長いシーズン、監督の采配で勝てる試合は片手で数えるほどもない。ただ、監督の采配で負ける試合は数えきれないほどある。

 10月1日、甲子園での最後の首位決戦は、まさに巨人の執念不足だった。テレビで見ていても、勝って優勝するんだという気迫が感じられない。かつて長嶋茂雄は、第2次政権時の1996年に『メークドラマ』を掲げ、最大11.5ゲーム差をひっくり返して優勝した。勝負どころを見極め、指揮官自ら選手を鼓舞していた。そういうことも勝負師として重要な要素だ。所詮、橋上ではそんなことはできないだろうよ」

 広岡氏にとって、巨人が優勝を逃したのは必然だったのかもしれない。投打の戦力で阪神に及ばなかったうえ、勝負どころでチームを奮い立たせる指揮官の力量にも大きな差があったというわけだ。

 もっとも、今季の巨人は前代未聞の事態に見舞われた。5月25日、阿部慎之助監督が長女への暴行容疑で現行犯逮捕され、翌26日未明に釈放。同日、球団に辞任を申し入れ、受理された。シーズン途中の監督辞任という異例の事態を受け、橋上秀樹オフェンスチーフコーチが監督代行として指揮を執ることになった。

 チームが空中分解しても不思議ではない状況だったが、巨人はその後も優勝争いに踏みとどまった。結果的には76勝64敗3分の2位。突然の監督交代を考えれば、健闘したと言えるだろう。

 ただ、首位・阪神に肉薄しながらも、最後の壁を越えられなかった。広岡氏には、巨人に決定的に欠けていたのは勝負への執念だと映ったようだ。

【藤川監督が引き出した若手の才能】

 一方、阪神の強さを支えたのは、やはり投手陣だった。

「先発の?橋遥人、村上頌樹、才木浩人の3本柱が万全じゃなかったら、かなり厳しいシーズンになっていた。それに守護神の(ラファエル・)ドリスが厳しくなってきたタイミングで、工藤泰成を救援の重要な場面で起用して成功した。これは藤川監督の手腕だ。

 昨年までただ力いっぱい投げていた工藤を、コーチがうまく指導して変化球のコントロールを身につけさせたことで、よりストレートが生きるようになった。そして木下里都までもが頭角を現した。150キロを超える本格派をふたりも一軍の戦力として計算できるようになったのは、そうそうあることじゃない」

 投手育成の難しさを熟知する広岡氏が、藤川監督の手腕を評価するのは珍しい。

 一軍での実績が乏しかった工藤と木下を、わずか1シーズンで戦力へと押し上げた。もちろん、両投手の努力があってこそだが、その才能を見極め、適切な役割を与えた首脳陣の功績も見逃せない。

 また広岡氏は、巨人との優勝争いを制した阪神の姿に、時代の変化を感じたという。

「昔は巨人と阪神がデッドヒートすれば、最後は巨人が勝つのが当たり前だった。阪神はジンクスに弱いイメージがあったけど、こうして巨人を振りきって優勝するというのは、時代の転換期なのかもしれんな」

【CSで巨人に勝ち目はあるのか】

 こうしてセ・リーグは、1位・阪神、2位・巨人、3位・DeNAの順位が確定。10月10日からは、巨人とDeNAによるCSファーストステージが始まる。

 広岡氏は、この短期決戦をどう見るのか。

「まずファーストステージの巨人とDeNAの対戦だが、巨人はシーズン終盤にかけて、打撃陣の勝負弱さがますます露呈した。DeNAは春先とはまったく違うチームになった。どこからでも打線がつながるDeNAのほうが、得点能力は上だろう。巨人の投手陣は先制点を与えない投球をしないと、試合にならなくなるぞ」

 巨人にとって明るい材料は、戸郷翔征と山?伊織が戦力として戻ってきたことだろう。打線に不安を抱えるだけに、先発投手陣の出来が勝敗を大きく左右する。

 一方のDeNAは、打線がつながり始めれば一気に大量得点を奪う力を秘めている。短期決戦では、どちらが先に主導権を握るかが重要になる。

「ファイナルステージで巨人と阪神の対決を見たいと、ファンは切望しているかもしれんが、期待はできんな。仮に巨人がファーストステージを勝ち抜いたとしても、阪神には勝てん。監督代行の橋上が今季限りということになれば、選手たちのモチベーションを保つよりどころがどこにあるのか。

 勝負というのは、やっぱり誰かのために、何かのためにという強い意志があるのとないのとでは、まったく違ってくる」

 2026年のセ・リーグは、阪神が球団史上初の連覇を達成した。しかし、日本シリーズに進出するためには、CSファイナルステージで巨人かDeNAを退けなければならない。短期決戦に絶対はない。それでも、先発陣の安定感、打線の破壊力、そしてシーズンを通して培ってきた総合力を考えれば、阪神が優位に立つことは間違いないだろう。

松永多佳倫●文 text by Takarin Matsunaga

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