「実現する技術、社内にある?」「誰に聞く?」をゼロに パナソニックコネクト「知財データ大放流作戦」に挑むワケ

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2026年10月12日 14:11  ITmedia ビジネスオンライン

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パナソニック コネクト 知的財産部 戦略企画課 マネジャーの堀田誠司氏(筆者撮影)

 新規事業や施策のアイデアはあるのに「これを実現できる技術はうちにあるのか?」「社内の誰に相談すればいいのか?」と関係部署を“たらい回し”にされた経験はないだろうか。そんな状況を変えるヒントになり得るのが、企業が蓄積してきた「特許」データだ。


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 特許には、新しい技術の情報だけでなく「どんな課題を解決しようとしているのか」「その技術を誰が生み出したのか」といった事業に役立つ情報が多く含まれている。


 一方で、特許出願時に添付する、発明の内容を詳しく記載した「明細書」は、1万字を超えることも珍しくなく、専門的な文章を読み解くには知識と経験が求められる。そのため社内にある知財データを扱える人は限られていた。


 パナソニック コネクト(東京都中央区)では、こうした知財データをAIで扱いやすく変換し、社員が必要な情報を自ら探せる仕組みづくりを進めている。ビッグデータの管理・分析サービス「Snowflake」(スノーフレーク)の「CoWork」やAIエージェントを活用し、特許情報から社内の技術・知見を持つ人物までたどれるようにしている。


 「近年、データのアクセシビリティは向上したものの、ユーザブルに(使いやすく)することが難しい」


 こう話すのは、同社知的財産部 戦略企画課 マネジャーの堀田誠司氏だ。同社が取り組んだ「知財データ大放流作戦」から得られる、データ活用のヒントとは。


本記事は米Snowflake主催イベント「Snowflake World Tour Tokyo 2026」におけるセッション「CoWork×Agentで実現する知財データ大放流作戦 AIが切り拓くデータの"真の"民主化と価値創造」を基に構成。


●1万字の明細書が“壁”に 専門職に閉じた「知財データ」、全社で生かすには?


 パナソニック コネクトは従業員数約3万人で、2026年3月期の売上高は約1兆3000億円に上る。モバイルPC「レッツノート」や決済端末、プロジェクター、航空機内エンタメシステムなど、ハードウェアからソフトウェアまで幅広い事業を展開する。


 同社では2021年ごろから、社内に分散していたデータを集約し、活用する取り組みを進めてきた。顧客データや経営データ、製造業務のデータなど、優先順位を付けながら対象を広げている。その中で重視しているのが、データをAIが理解できる状態に整えることだ。


 「AI時代に重要なのは、AIが理解できる形にデータを作っていってあげることです」


 堀田氏とともに登壇した渡邉勇太氏(IT・デジタル推進本部 AI&Dataプラットフォーム部 データマネジメント課 マネジャー)は、データの属性をそろえたり、各データが何を意味するのかを整理したりしていると説明する。


 今回、同社がAI活用の対象としたのは、知財データだ。堀田氏によると、特許の明細書には、その発明が属する技術分野や、解決しようとする課題、製品への応用方法、発明者などの情報が含まれている。


 「特許の出願書類はアクセシブルで中身も充実しているが、非常に長い上、かなり複雑な日本語のため、読むには慣れが必要」


 知財部門では、新入社員に特許明細書の読み取り方を訓練するほどだという。情報そのものは公開されていても、読み解くハードルが高い。結果として、活用できる人が知財職や一部の技術者に限られていた。


●「社内のキーパーソン」を探し出すAIエージェントの仕組み


 この状況を変えるきっかけとなったのが、社内の新規事業を探る取り組みだった。


 同社の技術戦略を担う組織では、顧客管理ツール「Salesforce」に蓄積された営業情報をAIで分析し、顧客が抱える共通の課題を探していた。ところが、課題が見えてきても、それを事業化するための技術が社内にあるのか、誰に相談すればよいのかが分からず、社員らは右往左往していたという。


 そこで堀田氏が着目したのが特許だった。


 特許明細書には「なぜこの発明をしたのか」という課題が記されている。そのため、顧客の課題と似た内容を持つ特許を探し、発明者をたどれば、そのテーマに詳しい社内の人物を見つけられるのではないか――。こうして知財データと生成AIを組み合わせた仕組みを作っていった。


 この構想のもとで立ち上がったのが、専門部署に閉じがちだった特許情報を全社に開く「知財データ大放流作戦」だ。社内に分散していた知財関連データを集め、特許の書誌情報や発明者情報と、明細書の文章をAIから検索できるようにした。長い明細書については、AIを使って「どんな課題に取り組んでいるのか」「どんな技術的特徴があるのか」を約400字に要約してから検索対象にしている。


 例えば、AIエージェントに「物流現場における倉庫の物品管理業務の省人化という課題について解決策を提供している特許はありますか?」と質問する。


 すると、関連する特許を探し、必要に応じて検索範囲を広げながら候補を提示する。さらに「それらの特許の発明者の名前と所属を教えてください」と尋ねれば、社員情報と照合し、発明者の所属まで確認できる。


 顧客の課題から関連する特許を見つけ、その技術を生み出した人物へつなげる。これまで人が複数の部署を訪ねて調べていた作業を、AIエージェントがデータを横断して支援する形だ。


●「魚を与えるのではなく釣り方を」 AI時代にデータ活用を広げる3つの鍵


 堀田氏は、こうした変化を「データの真の民主化」と表現する。


 「身の周りには専門的なデータが山のようにある。その間をAIが走り、扱いやすい情報に変換して渡してくれる」


 社員が利用できる場所にデータを置くだけでは、十分な活用につながらない。専門的な情報を、利用者が理解できる形に変換する役割をAIが担うことで、これまで専門職の領域だったデータにもアクセスしやすくなる。


 同社では今後、社員が日常的に使うAIエージェントから自然に特許情報を検索できる環境を目指すという。さらに、知財データと営業、生産など別の部門が持つデータを掛け合わせ、新規事業や新たな価値創造につなげる構想も描いている。


 データ活用を広げる際、渡邉氏は「カルチャーの重要性」を強調する。


 「ITシステムを導入しただけでは、なかなか成果は生まれない。業務や文化が変わって初めて活用が進んでいく」


 データ活用チームでは、完成したダッシュボードを部門に渡すのではなく、利用者が自走できるように伴走する支援をしているという。「魚を与えるのではなくて、釣り方を教える」


 熱量の高い部門と組み、そこで生まれた事例を社内で共有する。データを使った事例を発表するコミュニティも設け、部門を越えた横のつながりをつくっているという。


 渡邉氏は、データ活用を広げるポイントとして「自社のデータをきちんと集めていく」「業務部門とIT部門がパートナーとして取り組む」「熱量のある部門から始める」の3点を挙げる。


 知財データをはじめ、専門部署に蓄積されている情報は企業の中に数多く存在する。AIエージェントの活用で、そうしたデータを必要な人が扱える形に変えられれば、部門を越えたデータ活用の余地も広がりそうだ。



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