なぜ1本6,000円?誕生10周年、サントリー「原酒樽熟成ビール」のこだわり

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2026年10月13日 11:01  マイナビニュース

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サントリーが手掛ける「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム」は、「ビールの域を超えた至高の酒」を目指し、約10年の開発期間を経て2015年に誕生したビールだ。2026年には、定番商品の中身とデザインをリニューアル。



出荷実績は前年同期比107%と好調に推移している。取り扱う飲食店も2022年比で168%に増加し、現在では6,000店を超えているという。さらに、2026年はウイスキーの原酒樽でビールを熟成させる「原酒樽熟成シリーズ」が誕生から10周年を迎える節目の年でもある。

2026年10月7日、サントリー武蔵野ビール工場で開催された「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム〈山崎樽熟成〉」ものづくりセミナーでは、ブランド担当のマーケティング本部 ビール・RTD部 課長の大津亮氏と商品開発を手掛けるビール商品開発生産本部 ビール商品開発研究部 開発主幹の浅野将氏が登壇。マスターズドリームの開発に込めた思いや独自の製法について語った。


○なぜ10年もかかった? 醸造家が追求した“究極のビール”のつくり方



「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム」は、2026年に中身とデザインをリニューアルした。味わいの進化を支えているのが、伝統的な製法でつくられる「フロアモルティング麦芽」だ。フロアモルティングとは麦を床に広げて発芽させ、スコップなどを使って手作業でかき混ぜる製法のこと。現在は機械による製麦が一般的だが、サントリーの開発チームは、あえてこの手間のかかる伝統製法に着目した。



実験と分析を重ねた結果、フロアモルティングでつくられた麦芽には、タンパク質の組成に特徴があることが分かった。開発チームは、手作業による工程で生じる不均一さが組成の複雑さにつながっていると考えている。 そこで、この麦芽の特性を生かせる配合や仕込み方法を検討し、マスターズドリームの一部原料として採用した。



浅野氏は、サントリーの商品開発について次のように説明する。



「原料や製法を選んで微調整していく作り方では、どうしてもできるものしかできません。私たちが商品開発で大切にしているのはまず、つくりたいものの理想を描くことです。そして、そこから逆算し、必要な原料や製法を開発していくことを大切にしています」


こうした開発姿勢を象徴する技術が独自の銅焚き仕込みだ。かつてのビールづくりでは、銅製の釜を直火で加熱する製法が用いられていた。これによってコクや香ばしさが生まれることは知られていたものの、その理由は十分に解明されていなかったという。



そこで開発チームは実際に銅釜と直火加熱の設備を導入し、検証を重ねた。その結果をもとに、銅製の配管を活用する独自の仕込み技術を開発。コクと香ばしさを高めながら、焦げたような風味を抑えることを可能にした。



現在の「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム」では、銅焚き仕込みに加え、フロアモルティング麦芽と麦汁の一部を取り出して加熱する工程を3回繰り返す「トリプルデコクション製法」を組み合わせている。伝統的な製法の良さを科学的に検証し、現代の技術へと発展させることで、ブランドが掲げる「多重奏で、濃密。」を実現している。

また、パッケージにもものづくりへのこだわりが反映されている。金色の装飾には伝統工芸の蒔絵を取り入れ、中央には書道家・武田双雲氏が手掛けた「夢」の文字を配置。醸造家の思いが見た目からも伝わるデザインへと進化した。


○1本6,000円の山崎原酒樽熟成ができるまで



「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム」の挑戦を象徴する商品の一つが2016年に誕生した「原酒樽熟成シリーズ」だ。最大の特徴は、ウイスキーの原酒樽を使ってビールを熟成させること。木樽由来の香りや風味をビールに重ねることで、通常のビールとは異なる味わいを生み出している。



製造には多くの手間と時間がかかるため、発売当初はキャンペーンの景品として、ごく少量から展開を開始した。その後、2022年に抽選販売を実施し、2023年からは一部のECサイトで一般販売を行っている。



2026年6月には「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム〈白州原酒樽熟成〉2026」 を発売し、完売。そして11月10日、新たに「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム」が発売される。


原酒樽熟成シリーズでは、樽の個性に合わせた味わいづくりも重要になる。ウイスキーの原酒樽には、それぞれ異なる香りや風味が残っている。そのため、単にビールを樽に入れて熟成させれば、理想の味わいになるわけではない。



樽の特徴を踏まえ、熟成後にどのような味わいを実現したいのかを考えながら、ビールの原料や仕込み条件を調整していく。



さらに、木樽は一本ごとに状態が異なり、熟成の進み方にも違いが生じる。醸造家は樽ごとの香りや味わいを確かめながら、最適な熟成期間を見極めているという。



今回発売される「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム」は、重厚な熟成香と満ち溢れる余韻が特徴。容量は715ml、アルコール度数は8.5%、希望小売価格は税抜6,000円。販売数量は1万本限定で、一部のECサイトで販売される。



パッケージには新たに樽のイラストを採用。ウイスキーの原酒樽で熟成させた特別なビールであることが、一目で伝わるデザインとなっている。

○「和食に合う」と名店も評価。マスターズドリームが支持される理由



マスターズドリームが重視しているのは、ビールそのものの品質だけではない。どのような場所で、どのように味わってもらうかという飲用体験にも力を入れている。



その一つが飲食店での展開だ。ブランド担当の大津氏は、飲食店を「マスターズドリームのこだわりを、最高の品質で体験してもらうための重要な接点」と位置づける。



実際に、京都の日本料理店「菊乃井 鮨 青」からは料理と調和し、和食に寄り添うビールとして評価されているという。また、同じく京都の日本料理店の「祇園さゝ木」からはサントリーが一貫しておいしさを追求する姿勢への共感が寄せられ、赤坂見附にある日本料理店「紀尾井町 福田屋」からも、料理を引き立てる味わいや素材と技術を磨き上げるものづくりの思想が評価されている

。

○工場見学で見えた醸造家のこだわり



飲食店での展開に加え、サントリー天然水のビール工場〈東京・武蔵野〉 では、原酒樽熟成シリーズを試飲できる特別な工場ツアーや醸造家が直接製法を説明するツアーも実施している。商品を味わうだけでなく、その背景にある技術やつくり手の思いを知ってもらうことで、ブランドの魅力をより深く伝えていく狙いだ。


工場見学で印象的だったのは、醸造家たちが伝統的な製法をそのまま受け継ぐのではなく、科学的な検証を重ねながら、新たな技術へと発展させていることだ。浅野氏によると、ビールづくりには原料の選定から仕込み、発酵、熟成、ろ過、充填まで、およそ1〜2カ月を要する。


約10年の開発期間を経て誕生したマスターズドリーム。そして、2026年に10周年を迎えた原酒樽熟成シリーズ。伝統的な技術に新たな可能性を見いだし、理想の味わいを追求し続ける。今回のセミナーは、そんなサントリーのものづくりへの姿勢を知る機会となった。


橋本 岬 2014年に法政大学大学院を中退後、女性ファッション誌の編集者を経てフリーランスに。得意ジャンルは、IT、スタートアップ、エンタメ、女性の働き方。2022年4月から2023年2月までカナダに語学留学。 この著者の記事一覧はこちら(橋本 岬)

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