ウィルソンテソーロ
写真/橋本健 10月12日、盛岡競馬場で行われた南部杯は、吉原寛人騎手が騎乗する3番人気メイショウハチローが優勝。6番人気ストレングスが2着に粘り、連覇を狙った1番人気ウィルソンテソーロは3着、2番人気ルクソールカフェは6着に敗れた。
上位人気2頭がそろって勝利を逃した一戦。実は勝負どころで、川田将雅騎手と岩田望来騎手による熾烈な進路争いが繰り広げられていた。
◆人気の2頭が4コーナーで激突…熾烈な進路争い
川田騎手が騎乗したウィルソンテソーロは前年の南部杯覇者で、今年5月のかしわ記念も同コンビで制覇。単勝1.7倍の支持を集めた。一方、岩田騎手が手綱を取ったルクソールカフェも3.0倍の2番人気。3番人気メイショウハチローの7.1倍とは開きがあり、人気はこの2頭に集中していた。
レースはストレングスが先手を奪う展開。ウィルソンテソーロは好位につけ、ルクソールカフェも前を射程に入れながら追走した。ともに人気を背負う立場だけに、直線まで脚を温存しつつ、逃げ馬を捕まえるタイミングを探っていた。
そして迎えた4コーナー付近。川田騎手はウィルソンテソーロの進路を外へ求めた。しかし、その外側にいたのが岩田騎手のルクソールカフェだった。岩田騎手も簡単には譲らず、両馬が激しくぶつかり合うような場面が生まれた。
◆最後に先頭争いを演じたのは別の2頭
連覇を狙う川田騎手にとって、ここで外へ持ち出せるかどうかは重要だったのだろう。内側で前の馬を追いかけるより、直線で進路を確保したいところ。一方の岩田騎手も、自らの位置を守りながら、ウィルソンテソーロを閉じ込める意図があったかもしれない。
盛岡のダート1600mは、最後の直線が約300m。勝負どころで進路を失えば、立て直す時間は限られる。だからこそ、4コーナーで外へ持ち出そうとする川田騎手と、その位置を譲らない岩田騎手の攻防には、単なる位置取り以上の意味があった。人気を背負った両騎手にとって、ここは一歩も引けない局面だったはずだ。
ところが、最後に先頭争いを演じたのは別の2頭。逃げ粘るストレングスを吉原騎手のメイショウハチローが追撃し、最後は前をとらえてJpn1初制覇を飾った。
ウィルソンテソーロは前の2頭との差を詰め切れず3着。ルクソールカフェも直線で伸びを欠き、6着に終わった。
◆「あの騎乗されたら怒りそう」4コーナーの攻防に賛否の声
この4コーナーの攻防について、Xにはさまざまな声が寄せられている。
「川田さん カフェ側乗っててあの騎乗されたらめっちゃ怒りそう」
「川田若干怒られそうな騎乗したなぁ〜」
勝負どころにおける川田騎手の手綱さばきに厳しい声が出る一方、岩田騎手の動きを疑問視し、「岩田望来また川田に怒られそうな内への締め付け……」といった声も上がった。また、川田騎手の騎乗にはほとんどロスがなかったと擁護する意見もあった。
川田騎手が外へ進路を求めたことをどう見るか。あるいは、岩田騎手が自らの位置を守ろうとしたことをどう評価するか。同じ場面でも、どちらの騎手に注目するかで評価は大きく分かれる。
◆JRA重賞30連敗でストップ…川田騎手が語ったこと
単勝オッズ1倍台のウィルソンテソーロで人気を裏切る形となった川田騎手だが、その前日には長く続いたJRA重賞での連敗を止めたばかり。
11日、川田騎手はカムニャックとのコンビでアイルランドトロフィーに勝利。3月21日のファルコンS以来、JRA重賞で続いていた30連敗をストップさせていた。
30戦のうち16戦で3番人気以内の馬に騎乗していただけに、約7か月ぶりの重賞勝利は大きな節目となった。しかし、レース後に川田騎手が口にしたのは、自身の連敗ストップへの喜びよりも、カムニャックを勝利に導けたことへの安堵だった。
パートナーのカムニャックは前年のオークス馬で、単勝3.2倍の1番人気。レース前は気持ちが高ぶっていたものの、川田騎手は馬のリズムを優先し、道中8番手から直線で鋭く伸びた。最後はC.ルメール騎手のジョスランを半馬身差で差し切っている。
◆次は約1年ぶりのJRA・G1制覇へ
こうして長いトンネルを抜けた川田騎手だが、JRAのG1では依然として勝利から遠ざかっている。最後にJRAのG1を制したのは2025年11月のマイルCS。ジャンタルマンタルを勝利に導いて以来、1年が経とうとしている。
日曜にはJRAでの長い重賞連敗を止め、翌日には地方で熾烈な進路争いに身を置いた川田騎手。秋のG1戦線では、どんな騎乗を見せてくれるだろうか。
文/中川大河
【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。