
9月26日、27日に新宿区立大久保図書館で開催されたイベント、「コリア・スクエア・ガーデン」を取材しました。大久保図書館は新宿区の大久保2丁目にあり、最寄駅のひとつがJR山手線の新大久保駅です。この駅周辺、新宿区大久保地区、百人町地区は朝鮮半島にルーツのある人が多く、韓流カルチャーの発信地でも有名です。
【写真で見る】韓国の文化に触れる「コリア・スクエア・ガーデン」
しかし現在は韓国だけでなく中国、東南アジア、中東、南米など多くの国・地域の人々が暮らし、多国籍の食材店、飲食店が集まっています。新宿区の資料によれば、この地域の外国人の比率は人口全体に対して4割近くになります。
そうした場所にある大久保図書館では、一般的な図書館業務のほかに、多文化共生を支える拠点をめざした取り組みを積極的にしています。館長の米田雅朗さんに、大久保図書館の特徴と役割を聞きました。
『外国の方、日本に来たばかりの方が突然ブラッと図書館にお見えになる場面によく遭遇します。この地域の特性を活かして、特に外国の方にも気軽に、自由に利用できるような多文化サービスというところに重きを入れて取り組んでいるのがこの図書館の特徴でもあります。図書館というのは非常に来やすい場所、行ってみようかという思いにさせてくれる場所なんじゃないかと。当館に質問に来たいとか、見学に来られたりする方も少しずつ増えている気がしますので、言葉が通じなくても拠り所になる、ほっとできる、そういった思いが誰にもあるのではというのは特に感じております』(「大久保図書館」館長・米田雅朗さん)
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日本で暮らし始めた外国人には、役所よりも図書館のほうが入りやすい、問い合わせなどがしやすい面もあると思われます。外国人の増加にともなって、大久保図書館では外国語39言語の書籍を所蔵するほか、地域のゴミの出し方のルール、詐欺被害にあわないための注意喚起、仕事につくときに必要な情報などを載せた多言語のチラシが置かれ、日本語が苦手な人たちの暮らしにの役に立っています。
韓国の文化に触れる「コリア・スクエア・ガーデン」また、大久保図書館では多文化共生に関するイベントを定期的に開催しており、外国の文化に親しむ機会を作り出しています。そのイベントのひとつが韓国の文化に触れ親しむ「コリア・スクエア・ガーデン」です。毎年1回開催され、2014年から始まり、新型コロナの流行で一時中断がありましたが、今年で10回目の開催になります。
図書館内の絵本コーナーを会場に、私設の歴史博物館「高麗博物館」の協力で、韓国の正装であるチマチョゴリ、パジチョゴリの試着や折紙でチマチョゴリを作る教室、韓国の絵本の読み聞かせなどを行う、誰でも立ち寄れる無料イベントです。
取材した日は読み聞かせで、高麗博物館の加賀谷浩子さんとイベント参加者が日本語で、図書館職員のキム・ウンミさんがハングルで、交互に絵本を読みました。韓国の作家クォン・ジョンセンが書いた「こいぬのうんち」という絵本で、韓国、日本だけでなく中国やヨーロッパでも翻訳されています。
内容は、みんなにいじめられていた子犬の「うんち」が、ある出会いで自分の価値を知るという話です。高麗博物館の加賀谷さんはこんなふうに言っています。
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『韓国の絵本っていうのはとても特徴があって、今は世界のいろんな賞を貰うぐらい、絵が素晴らしい、物語が素晴らしい。子どもだけでなく、大人にも韓国の絵本のファンという人がたくさんいます。そうした本や、チマチョゴリなど着るもので、直接感じながら異文化の体験ができる。それで、『ああ、いいものだ』と思えば、仲良くなれるじゃないですか。そういうことで喜んでもらえればと思います』(高麗博物館の加賀谷浩子さん)
日本語で聞いて、続けてハングルでも聞くと、韓国の言葉に興味をおぼえます。読み終わったあとに、加賀谷さんが日本語のある単語をハングルでどう言うかなど、絵本の解説をしてくれました。高麗博物館では12月27日まで、企画展として、「こいぬのうんち」の作者クォン・ジョンセンの著作展示や講演を開催しています。
ほかにもチョゴリの試着は参加者のみなさんがとても楽しそうにしていましたし、折り紙で作るチマチョゴリは、女の子たちが熱心に習っていました。
今回の「コリア・スクエア・ガーデン」は土曜・日曜で約30名の参加がありました。お母さんと娘さんの二人連れが多かったですが、中国人、韓国人の親子もいて、外国人の利用者が多いと分かりました。米田館長の調べによると、転入・転出の多い時期では、図書カードを作った人のうち、人口比と同じ約4割が外国籍のこともあります。イベントに参加したお母さんと娘さん、男性に感想を聞きました。
『今日はたまたま来たらチラシをいただいたので参加したんですけど、本物のチマチョゴリって初めて見たし着るのも初めてなので、すごい綺麗で楽しかったです。新大久保に住んでいたことがあって、ハングルを読めたらいいなと思って、少し勉強したこともあります。だから韓国の文化はすごく身近にはあったので、今日はこういう体験ができてすごい良かったです』(参加者・母)
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『チョゴリを着て、可愛くて楽しかったです。折り紙はスタッフの方が優しく教えてくれて、楽しかったです。このイベントにまた来たいです』(参加者・娘)
『毎年来てます。絵本とかを、子どもだけでなく、大人も含めて、原語の朗読とかも含めて知ってもらったりとか味わってもらったりできるところはとてもいいかなと思います』(参加者・男性)
大久保図書館が多文化共生に力を入れる理由大久保図書館はハングルだけでなく、34か国の言葉の絵本を所蔵し、貸出しのほか、読み聞かせイベントもしています。それらの本から世界にどんな言葉や文字があるか、見て知るだけでも発見があり楽しいです。また日本語学校の先生が外国人の生徒を連れて図書館を案内するツアーも行われているそうです。
10月25日には様々な国の人が本の紹介を通して交流するイベント「ビブリオトーク・インターナショナル」(ビブリオバトルの国際版)が行われます。ただ、税金で運営される公立図書館が外国人に向けたサービスに力を入れることに批判も一部にあるそうです。それに対し取組みの意義を米田館長はこう話しています。
『とにかく、日本の人と外国の人が賑やかに、楽しくワイワイガヤガヤやってる場をどんどん増やしていけばいいかなと思ってます。たとえば差別はいけないとか拳を上げて言うんじゃなくって、みんなで楽しく集まっているところを見せていけば、外国の人と仲良くするのはいいことだと思ってくれる人が1人、2人と増えて、確実に理解の輪が広がっていくのではないかと思っております』(「大久保図書館」館長・米田雅朗さん)
大久保図書館は、外国人が日本を知る場というだけでなく、日本人が外国の文化を知って親しむための場、つなぎ役にもなっている図書館です。こうした多文化共生を支援する公立図書館は全国的にも少ないようで、もっと増えてほしいと思いました。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当:藤木TDC)
