マザーボードから総合AI企業へ──ASUS ジョニー・シー会長が語る35年の軌跡、「All in on AI」のビジョンと日本市場での勝算

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2026年10月14日 11:11  ITmedia PC USER

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ASUSTeK Computerのジョニー・シー会長

 「ASUSにとって、日本の市場は、最も重要な戦略市場であるとともに、35年以上にわたり、ASUSの成長を支え、多くの学びと挑戦を与えてくれた特別な市場である」


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 ASUSTeK Computerのジョニー・シー会長は、こう切り出した。


 同社は長年にわたり、日本市場でPC事業を展開し、特に近年は個人向けPC市場や教育市場でシェアを拡大し、存在感を高めている。そして、日本市場に向けて新たな法人向けノートPCを投入した。


 シー会長は、「日本の法人向けPC市場は、ASUSにとって世界有数の市場へと成長する可能性があると確信している」と語る。インタビュー前編では、ASUSの現在地と日本市場における事業戦略について聞いた。


 なお、インタビューには、ASUS JAPAN(日本法人)のアルビン・チェン社長も同席した。


●「All in on AI」を掲げ、総合的なAI企業へ


―― ASUSの35年以上の歴史において、今はどんなフェーズに入ってきたといえますか。


シー ASUSは1989年にマザーボードメーカーとして創業して以来、数々の革新的な製品を世の中に送り出してきました。1997年には、当社初となるノートPC「P6300」を発売しました。


 このノートPCは、ミール宇宙ステーションで使用され、宇宙という過酷な環境下において他社製ノートPCがオーバーヒートなどによって故障する中で600日間にわたり、一切故障することなく宇宙でのミッションを完遂しました。当時から高い基準を設けて、製品開発に取り組んでいたことを証明する出来事だといえます。


 現在、当社は業界でも有数の包括的なエコシステムを有するテクノロジーブランドへと成長しました。マザーボードの会社からスタートした当社は、世界第2位のノートPCブランドへと成長することができました。


チェン この間、当社は常にイノベーションの限界に挑戦し続けています。世界初のNetbookである「Eee PC」や、Ultrabookの「Zenbook」、世界初のデュアルスクリーンノートPCや折りたたみ式ノートPCは、いずれも当社によって市場投入されました。


 また、世界初の竹素材を採用したノートPCや世界初の革張りノートPC、世界初のランボルギーニとのコラボレーションノートPCも当社から登場しています。このような数々の革新を積み重ねながら、世界を代表するブランドへと成長してきました。


シー そして当社は、PCメーカーから総合的なAI企業へと進化を始めています。当社では「All in on AI」のビジョンの下、AIへの取り組みを加速しています。


 これは、当社が大きな変革の最前線に立っていることを意味します。AIは、私たちの働き方や創造の仕方、そして意思決定の方法を大きく変えており、AIが生産性向上、イノベーション創出、将来のビジネス成長を支える重要な原動力になると確信しています。


 当社はPCやサーバ、IoTに至るまで、幅広い領域において先進的なAI技術をサポートし、よりスマートに、より迅速に、より効率的に働ける環境を実現していきます。


―― ちなみに、シー会長が意識している企業はありますか。


シー 私は個人的には、Appleをとても尊敬しています。究極のモノ作りを追求している企業であり、フラッグシップの製品だけでなく、エントリーモデルにおいても、ユーザーから求められる品質を維持したモノ作りをしている点を評価しています。


●7年ぶりの海外訪問先に日本を選んだ理由と「禅」への共鳴


―― シー会長は、2026年6月に7年ぶりの来日を果たしたわけですが、それに関しては特別な思いはありましたか。


シー コロナ禍をきっかけにして、この7年間は海外を訪問し、お客さまと直接お会いする機会には恵まれませんでした。しかし、今回、約7年ぶりとなる海外訪問の機会を得て、その最初の訪問先に、日本を選びました。日本に来ることができたことを大変うれしく思います。


 私は日本の文化が好きで、とても尊敬をしています。常に、伝統文化として根づいている「禅」に触れたり、京セラの稲盛和夫氏のような優れた日本の経営者の話に触れたりしていますし、質に対するこだわりについても学ぶ部分が多くあります。


 当社の数ある製品の中でも、私にとって特別な存在といえるのが「Zenbook」シリーズです。Zenbookの名称は、日本の「禅」の精神から着想を得ており、採用している同心円の象徴的なデザインも、日本庭園からインスピレーションを受けたものです。


 日本で初めてZenbookを発表したとき、多くのお客さまやパートナー各社から、温かい支持をいただいたことを今でも鮮明に覚えています。


 それ以来、何度も日本を訪れ、新しいASUSのイノベーションを紹介してきました。今回は、久しぶりに来日することができ、とてもエキサイティングでした。


 当社にとって、日本の市場は最も重要な戦略市場の1つです。そして、日本は35年以上にわたり、当社の成長を支え、多くの学びと挑戦を与えてくれた特別な市場です。


 日本は世界第3位の経済規模を持ち、アジアを代表する市場として技術や品質、そしてイノベーションにおいて業界の基準を引き上げ続けています。また、日本はクラフトマンシップ、機能美、信頼性が高く評価される市場でもあり、日本のお客さまに認めていただくことは、当社にとって、品質と信頼の証につながると考えています。


●日本の厳しいニーズに応える「究極のエンジニアリング」


―― ここ数年、日本の市場における御社のシェアが上昇し、存在感が高まっています。その理由は何であると自己分析していますか。


シー 日本のPC市場において当社が成長するには、どこに力を入れるべきかといったことを2019年から日本法人の社員たちとともに検討してきました。


 日本では、品質が重要な要素となります。耐久性や信頼性に対して、高い基準を持つ市場であり、見た目の美しさにもこだわる市場です。私は、これらの考え方は、「禅」に通じるものだと捉えています。


 当社はエンジニアが中心にいる企業であり、それが当社のDNAの一部となっています。また、Extreme EngineeringおよびDesign Thinking(究極のエンジニアリングおよびデザインシンキング)を追求している会社でもあり、営業部門であっても、こうした思考を持って動くことができます。


 日本での事業を強化する上では、これらのDNAや姿勢が生きました。日本のお客さまがどういう生活をして、どういうニーズがあるのかを理解し、そうしたユーザー向けの製品を設計していくという取り組みを開始し、この結果、当社の製品が受け入れられたと考えています。


 「ASUS Zenbook SORA」や、今回発表した「ASUS ExpertBook Ultra」は、日本のお客さまが求める品質や頑丈さ、薄型化や軽量化に対する要望などを反映したものです。ASUSのトップデザイナーにとっても、日本からの要望は大きな挑戦となっています。


 しかし、それを楽しみながら課題をクリアしていく様子を目の当たりにするのは楽しいものです(笑)。当社のエンジニアやデザイナーは、日本のお客さまの要望に応え、その要望を超えるための努力を、日々重ねています。


チェン 日本市場向けには、まず若い世代をターゲットとした取り組みを強化しました。日本の若い世代に受け入れられるPCとは何かを追求しながら、ゲーミングPCに力を注ぎ、そこでNo.1のシェアを獲得しました。


 さらに、GIGAスクール構想に対応したChromebookを投入しました。2021年には、教育分野で8位だったものが、今では2位のシェアを獲得しています。そして、2022年には官公庁市場へと事業展開を広げ、わずか3年間でゼロだった市場シェアは12%へと拡大し、第3位のポジションとなっています。さらに、Copilot+ PCは、2024年6月に発売して以降、市場シェアNo.1を維持し続けています。


 このように2019年以降、狙ったそれぞれのカテゴリーにおいて、実績を上げてきました。当社は日本市場においてユーザーターゲットを明確にし、それに対応する製品開発を行うという手法を採用し、それが功を奏しています。


 振り返りますと、特に大きな転機となったのが2020年4月で、このときにGIGAスクール構想が本格化しました。日本法人の売上高が一気に上昇し、過去最高の実績となったのもこのタイミングです。


 また、これらの施策を展開する中で、日本のお客さまから多くのフィードバックと高い評価を得ることもできました。同時に、販売パートナーからも、店頭での展示スペースをもっと増やしたいという声をいただくことが増えました。


●ターゲットを明確にした製品展開が日本市場での躍進をけん引


―― 日本において、法人向けPC市場に本格的に参入することを発表しました。なぜ、今なのですか。


シー 当社はグローバルの個人向けノートPC市場において、2024年以降、HPやDell Technologiesを上回るシェアを獲得しています。日本においても、個人向けノートPCの販売は極めて好調ですし、日本の教育市場、官公庁市場でもシェアが高まっています。


 こうした実績を基に、今後当社がさらなる成長を遂げるには、ポテンシャルがある法人向けPC市場への取り組みが重要な意味を持ちます。日本の法人市場には大きなビジネスチャンスがあると考えています。個人向けPC市場で培った強みをベースに、法人向けソリューションへの投資をさらに加速していきます。


チェン 法人向けPC市場は、30年以上にわたって同じベンダー群によって主導されてきました。しかし、市場は変わり、テクノロジーも変わり、お客さまのニーズも変化しました。業界には新たな挑戦者が必要です。


 当社は世界第2位の個人向けノートPCブランドです。主要部材の調達においては、既に強力なスケールメリットを確立しており、法人向けPC市場の変化をリードする準備が整っています。そして、新しいデジタル時代においてASUSを「世界で最も称賛されるリーディング企業」にするという情熱を持って取り組んでいます。


 法人向けPCビジネスで成功するためには、たった1つのヒーロー製品だけでは不十分であり、企業ITエコシステム全体をカバーする総合的なソリューションのフルラインアップが必要です。


 当社はノートPCやChromebook、デスクトップPC、オールインワンPC、サーバ、ワークステーション、AIサーバ、ディスプレイ、ネットワーキング製品、プロジェクター、IoT、ロボティクスなどを用意し、コンポーネントからデバイス、AIインフラまでをカバーしています。


 そして当社は、複数の製品カテゴリーでリーディングブランドとしての地位を確立しています。


 「なぜ、今なのか」という質問がありましたが、当社は先ほど触れたように、2019年から日本における個人向けPC事業を本格化させ、ゲーミングPCやノートPCのラインアップを拡大し、教育分野、官公庁分野にも展開するといったように段階的に事業を拡大し、シェアを高めてきました。


 それらの実績を基に、法人向けPC市場に本格参入します。日本のユーザーのカフェや新幹線車内での利用シーン、日常の持ち運び方など、さまざまな角度から使い方を深掘りし、それらをベースにモノ作りをしています。



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