「3週間まとめて休む」「ルールは状況次第で変化」──モンゴル人女性が日本の職場で驚いた文化の違いとは?

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2026年10月15日 11:11  ITmedia ビジネスオンライン

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「3週間まとめて休む」「ルールは状況次第で変化」──モンゴル人女性が日本の職場で驚いた文化の違いとは?

 「若い時から仕事と家族で生きてきたので、今度は自分が外の世界に飛び出したい、という気持ちが強かった」


「3週間まとめて休む」「ルールは状況次第で変化」──モンゴル人女性が日本の職場で驚いた文化の違いとは?


 こう話すのは、モンゴルの首都ウランバートル出身のツァガーンバートル・ソロンゴさん(49)。現在、中古自動車の輸出を手掛けるビィ・フォアード(東京都港区)で、セールス部門のシニアマネージャーとして働いている。


 ソロンゴさんが来日したのは2015年、30代半ばの頃。仕事と育児に追われ、一度は母国で断念した大学院での学びを、今度は海外で挑戦してみたいと、息子を連れて来日。静岡県立大学大学院で経営学の修士課程を修めた後、2018年に同社に入社し、現在に至る。


 アニメや旅行を通じて日本の文化に親しんできたというソロンゴさん。一方で、日本の職場では、モンゴルとは異なるさまざまな文化やルール、仕事の進め方、さらには休暇の取り方まで、驚くことがたくさんあったと話す。


 モンゴルと日本、働き方にどのような違いがあるのだろうか。


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●「残りの人生を楽しみたい」 院進学で来日、日本企業に就職


 20代の頃、ソロンゴさんはモンゴル国立大学の修士課程で統計学を学んだ。


 知識を生かし、モンゴル国家統計局で国家公務員として働いたほか、建設や飲料事業などマルチビジネスを展開する民間企業の戦略プランニング部で、プロジェクトマネージャーとして働いた経験を持つ。


 仕事と家庭に専念する日々の中で、中途退学した大学院のことが心残りだった。


 「もう一度モンゴルで大学に入学することも考えましたが、せっかくなら海外に行きたいと思いました。息子も成長していたので、残りの人生ちょっと楽しく、みたいな感じです」


 30代半ばに差し掛かり「今動かなければ、さらに難しくなる」という危機感もあった。日本のほか、オーストラリアやニュージーランドなど複数の大学院の研究室に手紙を送り、学費面や教授とのやりとりなども踏まえ、静岡県立大学大学院経営情報イノベーション研究科への進学を決めた。毎日辞書をめくりながら、日本語を勉強したという。


 2018年、大学院の修了を控えていたソロンゴさんは、モンゴル人材を探しているという現職ビィ・フォアードの求人を知り、アルバイトとして働き始めた。約1年後には正社員に登用され、海外物流の部門に配属された。


 配属先でソロンゴさんが最初に担当したのは、車両を海外へ輸出するための書類作成や、船会社、現地の代理店などとの調整だった。必要な書類をそろえ、内容に不備があれば修正を依頼し、車両の出荷後には顧客へ書類を届ける。


 入社当時は分からないことだらけだった。


 「モンゴルには海がないので、海上輸送とかRORO船(車両が自走して船内に乗り込み運搬できる船舶)とか、私には本当に全く知らない世界でした」


 同僚や先輩社員に教えてもらいながら、一つずつ仕事を覚えていった。


●日本とモンゴル ルールに対する考え方の違い


 入社して最初に驚いたことの一つが、職場での「あいさつ」だった。


 朝、出社すると同じ部署のメンバーだけでなく、他部署の社員にも「おはようございます」と声をかける。帰るときには「お疲れさまでした」「お先に失礼します」と伝え、廊下ですれ違った相手にも「お疲れさまです」とあいさつする。


 「これはビィ・フォアードのカルチャーですが、モンゴルでは別の部署の人にまであいさつはしていませんでした。今はこのあいさつの良さを実感していて、人間関係やお互いを尊敬し合うことにもつながっているのかなと思っています」


 ルールに対する考え方にも違いがあるという。


 日本企業では、決められたルールを守りながら仕事を進めることが重視される。ルールが変更されれば、その内容が社内ツールなどを通じて細かく共有される。


 「モンゴルの企業にもルールはもちろんありますが、状況によってルールの解釈が変わるんですよね」


 モンゴルで勤めていた企業では、スピードと結果を求められたとソロンゴさんは振り返る。仕事を止めず、まずは前に進めることを優先するため、業務上のルールに変更を加える場面もあったという。


 ルールに対する認識の違いとともに、ソロンゴさんは、日本企業が細部まで目を向ける点も印象的だったと話す。


 「『なぜ起きたのか』を何度も掘り下げて、ミスを防ぐ分析法(なぜなぜ分析)は海外でもよく知られています。そうした姿勢が、日本の品質の高さにもつながっているのだと思います」


 モンゴルでは、問題をある程度解決したら次の仕事に進むというスピード感がある。「仕事にはスピードと柔軟性も必要なので、両方を合わせていけばうまくいくんじゃないかと思っています」


●「3週間まとめて休む」モンゴルと、1日ずつ休む日本


 モンゴルと日本、仕事だけでなく、休暇の取り方にも大きな違いがあるという。


 モンゴルにも年次休暇の制度はあるが、ソロンゴさんが働いていたモンゴルの職場では、2〜3週間をまとめて取得する同僚が多かったという。


 モンゴルの人々にとって夏は、長期休暇を取る時期になる。最も寒い12月末〜2月にかけて、平均気温が氷点下30度と寒さが厳しいモンゴルでは、夏が過ごしやすく旅行やキャンプ、家族との時間を楽しむ人が多い。子どもの学校や保育園の休みに合わせて、家族でまとまった休みを取ることもある。


 職場では、10人程度の部署で半数ほどが同時期に休むこともあり、残ったメンバーの負担が大きくなる場合もあるという。


 「日本はそうじゃなくて、一日単位で必要に応じて休みを取得しますよね。私はこれはすごくいいと思いました」


 業務も一日単位で引き継ぐ。そうすることで、社員は互いの仕事を少しずつ覚えられ、互いにカバーしやすくなる。自身も残りの休暇日数を見ながら予定を立てやすく、メリットを感じるとソロンゴさんは話す。


●日本は「マニュアル」、モンゴルは「記録」 何が違う?


 モンゴルと日本の両方で働いた経験があるソロンゴさんは、互いに学べる点があると考えている。


 何をどこまで仕上げればよいのかを明確にし、一定の基準とルールを守ることで仕事の質を安定させる日本。一方のモンゴルには、状況に応じて柔軟に考え、決められた方法だけに頼らず、別のやり方を試してみる余地がある。


 そんな両者の違いを象徴する言葉として、ソロンゴさんは「マニュアル」という言葉を挙げる。


 「日本では『業務マニュアル』という言葉がありますよね。でもモンゴルでは『マニュアル』という言葉ではなく『ドキュメンテーション』という言葉を使うんです」


 日本のマニュアルは、決められた手順に従って仕事を進めるためのもの、といった意味合いが強い。一方、モンゴルでは「ドキュメンテーション」という言葉を使い、仕事の進め方を文書にして残すという考え方がある。


 「こういう方法で仕事をしてきた“記録”という意味で使われます。だから誰かが見れば『こういう感じで仕事を進めているのね。でもこういう違う方法もやってもいいよね』と捉えることもできます」


 「だから私たちは、『マニュアルを作って』とは言われなくて、『ドキュメンテーションして』と職場で言われるんです」


 マニュアルに沿うことでミスを防ぎ、一定の品質を維持しやすい。一方、記録を参考にしながら別の方法を試すことで、新しいやり方が生まれる可能性もある。


 ソロンゴさんは、それぞれの良さがあると考えている。


 現在、ソロンゴさんはセールス部門のシニアマネージャーとして、9人のメンバーを率いる。モンゴル、台湾、ウズベキスタン、ロシア、日本──とメンバーの出身地は多様だ。


 多国籍なチームをまとめる上で、ソロンゴさんは自身の立場を「間に立つ役割」と表現する。


 「メンバーたちは皆、はっきりとものを言います。マネジャーである私に対しても『これ何とかしてよ』と平気で言います(笑)。私はモンゴルで生まれ育ち、日本でも学んだ経験があるので、バランスをとりながら、メンバーたちと向き合っています」


 一緒に来日した息子は成人し、いまは趣味の読書やSF映画の鑑賞、甥っ子や姪っ子たちと遊ぶことがソロンゴさんの楽しみだ。ソロンゴさんが日本の職場で感じた新鮮なギャップは、私たちにとって当たり前な働き方を、別の角度から見つめ直すきっかけを与えてくれている。


(濱川太一)



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