「正社員前提」派遣に助成金、若年雇用問題への効果は?

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2014年02月15日 09:40  JIJICO

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2014年度の夏頃をめどに「紹介予定派遣」に助成金を支給


新たな雇用スタイルとして定着した労働者派遣。しかし、近年では非正規雇用の若年労働者の増加や、派遣労働者と正規労働者との処遇格差などが問題視されています。政策も「規制緩和」と「規制強化」を繰り返すという不安定な状況が続いていますが、安倍政権下では再び「規制緩和」へ方向転換し、若年労働者の雇用問題を解決するための策が講じられています。その一つが新たな助成金制度です。今回、政府は2014年度の夏頃をめどに「紹介予定派遣」に助成金を出す方針を決めました。


派遣先に直接雇用されることを前提にした「紹介予定派遣」


「紹介予定派遣」とは、派遣先に直接雇用されることを前提に、一定期間、派遣スタッフとして働いた後、派遣先の企業と派遣スタッフ本人が合意した場合に正社員として採用される制度のことを言います。


今回の助成金は、学校卒業後も就職できない若者などの支援を目的に、「紹介予定派遣」を通じて正社員に登用された場合、派遣企業に成功報酬などを支払うというものです。大学卒業からおよそ1年後でも、就職先が見つからなかったり、非正規雇用だったりというような若年者の利用を想定し、次のようなサービスが無料で利用できます。


「紹介予定派遣会社が実施するサービス例」
・対象者に社会人マナーやパソコンの使い方などの基礎研修を行う。
・就職先の紹介やマッチングを行う。
・派遣先での勤務後、個別の悩み相談など働き方のサポートを行う。


そして、サービスを実施する派遣企業に対して、基礎研修にかかる経費の一部負担や正社員登用時の成功報酬などが計画されています。


正社員登用された場合、派遣企業に1人10万円程度の成功報酬


正社員に登用された場合、派遣企業に1人あたり10万円程度を成功報酬として支払う方向で検討されていますが、果たして効果が期待できるでしょうか?


昨年は35歳未満の非正規雇用の若者を、職業訓練を通じて正社員雇用する事業主へ「若者チャレンジ奨励金」という助成金が流行しました。この助成金は、1人あたり最大460万円を受給できるとあって、都心部ではあっという間に定員に達し、計画申請が締め切られるほどでした。それでも、計画通りに採用者が決まらなかったり、訓練計画を立てることができなかったりと、途中で断念する企業も多くありました。


助成金が派遣企業に支給されることの懸念点


今回の助成金は採用した企業ではなく、派遣企業に支給されることになります。懸念されるのは、助成金の受給のみを目的とした企業や派遣会社が出てくるのではないかということです。派遣会社は正社員登用してもらえば助成金が受給できるため、本人の希望や適正に関係なく「とりあえず雇用してもらえる企業に紹介する」ということや、「派遣先と共謀した不正受給」も考えられます。受け入れ側の企業は助成金を受給できないため、経費が割高となる正規従業員を雇用するのは、経済的な環境が良好でなければ難しいというのは現実です。


効果を期待するのであれば、助成金だけに頼るのではなく、雇用促進のきっかけの一つであると捉えるにとどめることが必要です。企業は採用したい人材像を明確に打ち出し、派遣会社は教育やサポート体制を均一化する。派遣労働者本人も将来に向けて、少しでもスキルアップに励むというような相互の関係性が重要ではないでしょうか。新たな助成金制度の効果が出るかどうか、期待して見守っていきたいところです。



(田中 靖浩・社会保険労務士)

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