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非正規雇用者は、日本の労働者全体の3分の1を超え、その半数がパートタイム労働者で占められています。費用対効果の側面からも、正社員より低賃金のパートタイマーは企業で重宝されます。しかし、その一方で正社員と同様の業務に従事しているにもかかわらず、パートタイマーというだけで賃金などで正社員との差別が行われている企業があるというのも実情です。
そんな中、政府の閣議でパートタイム労働法の改正案を決定しました。改正案では、有期雇用のパート労働者でも正社員と同じ仕事をしていれば賃金などの待遇を同じにするように条件を改めるというのが柱となり、企業がパートタイマーを雇う際に正社員への転換制度などについての説明や、相談窓口の設置義務が盛り込まれています。
今回の改正案が国会で成立すれば、正社員並みの待遇を受けられるパートタイム労働者が、現在の約17万人から10万人程度増える見通しです。
現在のパートタイム労働法(平成20年4月改正)では、パートタイマーが次の3つの条件を全て満たした場合に、賃金などにおいて正社員と同等の待遇をするように定められています(このようなパートタイマーを「正社員並みパート」と呼んでいます)。
(1)業務の内容及びその業務での責任が正社員と同程度。
(2)正社員と同じように転勤や配置換えなどの人事異動の対象範囲となっている。
(3)期間の定めのない労働契約を締結している(無期契約)。
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現在の「正社員並みパート」の条件では、3つ全てを満たすのが難しく、一部のパートタイマーしか対象となっていません。 今回の改正案では、この「正社員並みパート」の範囲を拡大することが目的とされており、3つの条件のうち(3)「期間の定めのない労働契約」を削除し、均衡待遇を推進できるよう条件が緩和されます。
一方、正社員とパートタイマーとの均衡待遇は、企業側にとっては負担が増えることになります。上記(1)と(2)の要件は現行法のまま変わらないので、パートタイマーに頼った雇用形態をとっている企業の中には、パート労働法の均衡待遇を回避するための対策をとる企業が増えるおそれもあります。
また、平成28年10月からは、パートタイマーなど短時間労働者への厚生年金の適用拡大(当初は500人以上規模の企業から実施)が決定しており、企業にとってはパートタイマー雇用の負担が、正社員雇用の負担と変わらなくなることも想定されます。
パートタイマーを多数雇用している企業にとっては、組織体系、職務内容、従業員の管理・教育などのあり方を検討し、早急に雇用形態の見直しを図る必要があるのではないでしょうか。この改正案により、パートタイマーの賃金待遇が改善されるとともに、企業とパートタイマー双方にとって、より良い方向へ進める機会になることを期待します。
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