お笑いウェブサービス「ボケて」 使われている画像の「著作権」はどうなっているの?

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2014年04月16日 12:11  弁護士ドットコム

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ユーザーが投稿した画像に対して、別のユーザーがボケたコメントを返す、お笑いウェブサービス「ボケて(bokete)」。一般ユーザー同士がお互いに投稿・評価しあう仕組みで、若者に人気だという。


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「ボケて」に投稿されている画像を見てみると、漫画・アニメの一コマやテレビ番組のキャプチャなどが多く見られる。ネット上のQ&Aサイトをみると、「使われている画像の著作権はどうなっているの?」という質問もあった。



もし、こうした画像について、著作権者が「問題だ」と言ってきたら、誰が責任をとるのだろうか。「ボケて」の利用規約には、アップロードされた画像の著作権侵害について「弊社は一切の責任を負いません」などと書かれているが・・・。著作権にくわしい唐津真美弁護士に聞いた。



●無断アップロードは「著作権侵害」になりうる


「著作権の観点からいうと、漫画・アニメの1コマを無断でアップロードすれば、作品の著作権者が持っている複製権や送信可能化権(アップロード権)を侵害することになります。



また、放送番組のキャプチャについては、放送事業者(テレビ局)が持っている放送番組の複製権を侵害することになります。この場合の『複製』には、写真等による複製も含まれるからです。



さらに、『ボケて』を見ると、漫画のコマに含まれたセリフの一部を空白にして、別の言葉に言い換えさせる『お題』もあるようですが、こちらは勝手に著作物を変えることを禁止する翻案権や、著作者が持っている著作者人格権の一つである同一性保持権を侵害する可能性もあります」



唐津弁護士はこのように述べる。節度を保ったパロディ利用などについては著作権者も黙認している事例が多そうだが、場合によっては問題視されることもありそうだ。その場合、誰が責任をとることになるのだろうか。



「そもそもは投稿者(利用者)の責任ですが、著作権者にしてみれば、投稿者の名前や住所などはわかりません。ですから、著作権者がクレームをする場合、まず運営会社に連絡することになるでしょう」



利用規約は関係ないのだろうか?



「利用規約は、運営会社と利用者間のものですから、著作権者を拘束しません。



プロバイダ責任制限法や裁判例に照らすと、著作権者から合理的根拠を示した権利侵害の主張や削除要請があるにもかかわらず、運営会社がこれを放置したような場合には、著作権者から運営会社に対する損害賠償請求が認められる可能性があります」



●違法な利用者は「運営会社」から賠償請求される?


このようなケースでは、「運営会社の責任」が認められる可能性もあるということだ。その場合、画像を投稿した利用者の責任はどうなるのだろうか?



唐津弁護士によると、もし運営会社が著作権者からクレームを受けて賠償金を払った場合、利用者は運営会社から損害賠償を請求される可能性があるという。実は、「ボケて」の利用規約にも、そのような事態を想定した、次のような記載がある。



「(1)利用者が送信(発信)したコンテンツや、利用者による第三者への権利侵害に起因または関連して生じたすべてのクレームや請求について、利用者の責任と費用においてこれを解決する。



(2)このようなクレームや請求への対応に関連して運営会社に費用が発生した場合または賠償金等の支払いを行った場合は、その費用および賠償金、弁護士費用は問題となった利用者の負担とし、運営会社は、利用者に対して支払いを請求できる」



利用規約について、唐津弁護士は次のように説明する。



「この規約が適用されるとすれば、投稿された画像による著作権侵害を原因として、運営会社が権利者に対して損害賠償した場合、運営会社は投稿した利用者に対して弁護士費用も含めて請求できることになります」



規約上は、運営会社が損害を被った場合には、利用者に損害額を請求するという立て付けになっているということだ。



●規約が適用されるかどうかのポイントは?


ただ、争いになったときには、こうした利用規約が必ず有効とみなされるとは限らないという。チェックポイントは、有効な同意が得られていたかどうかと、消費者契約法上の問題はないかという2点だ。



「まず、利用者が規約に同意したといえるのか、という問題があります。



『ボケて』のサイトは現在(2014年4月1日時点)、会員登録の際に規約への同意をクリックで要求し、また規約がクリック1つですぐに読める状態になっています。経済産業省の『電子商取引及び情報財取引等に関する準則』というガイドラインに照らすと、これであれば、規約に対する利用者の同意が有効に得られているといえそうです。



しかし、『ボケて』のお題を見る限り、すべての投稿者が実際に規約を読んで納得した上で投稿しているとは思えません。経済産業省の準則はあくまでもガイドラインであり、裁判所がそれと同じ結論を出すとは限らないので、要注意です」



もう一つが、消費者契約法の関係だ。



「また、こうしたウェブサービスの利用規約は、消費者を保護する『消費者契約法』の対象となります。



この法律には、消費者の義務を重くする条項で、信義則違反や権利濫用にあたり、消費者の利益を一方的に害するものは『無効』とする規定があります。運営会社の対応しだいでは、利用規約の該当条項が無効と判断される可能性もあると思われます」



このように、利用者と運営会社がそれぞれ、どう責任を負うかという問題は、それほど単純ではないようだ。唐津弁護士は「『ボケて』は、実は私も大好きなサイトです。利用者も権利者も納得のいく形で、サービスが続いていくことを願っています」と話していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
唐津 真美(からつ・まみ)弁護士
弁護士・ニューヨーク州弁護士。主な取扱業務はアート・メディア・エンターテイメント業界の企業法務全般。特に著作権等の知的財産権及び国内外の契約交渉に関するアドバイス多数。第一東京弁護士会・法教育委員会委員長、東京簡易裁判所・司法委員。
事務所名:高樹町法律事務所
事務所URL:http://www.takagicho.com


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