すき家「ワンオペ廃止」で深夜の灯りが消えた・・・そのとき店内の様子は?

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2014年10月01日 12:41  弁護士ドットコム

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牛丼「すき家」の急速な成長モデルを支えた深夜「ワンオペ」の灯火が消えた——。「すき家」を運営するゼンショーホールディングスは10月1日、過酷な長時間勤務や強盗被害を招くことで問題視された「ワンオペ」(深夜の1人勤務)を廃止した。午前0時から5時までの時間帯については、2人以上のスタッフを確保できない店舗の営業を休止することにした。


【関連記事:「すき家」6割の1167店舗で「深夜営業休止」 ワンオペ廃止、スタッフ確保できず】



ゼンショーホールディングスによると、もともと24時間オープンでなかった店舗などを除き、これまでは1843店舗で24時間営業をおこなっていた。しかし人員不足により、63%にあたる全国各地の1167店が当面、深夜営業を一時休止する事態となった。弁護士ドットコムの記者は9月30日の深夜から10月1日にかけて、対象となった東京都内の店舗で「閉店の瞬間」を見た。



●「ワンオペ」店舗、閉店15分前の慌ただしさ


30日夜、6店舗が集中している渋谷駅に向かった。この日を境に3店舗が午前0時で営業を休止して、深夜閉店することになっていた。そのうちの1店舗を目指した。



23時30分ごろ、渋谷駅から渋谷マークシティを抜けて、道玄坂上の交番付近に出た。人通りが多くてにぎやかだ。近くに「松屋」を発見した。10人ほどの客がいて、3人の店員が対応していた。そこから150メートルほど南に向かうと、首都高3号渋谷線の下に出た。繁華街からやや離れたためか、人通りがまばらな中、目指す店舗は通り沿いにポツンとあった。



23時43分、店内に入った。客は記者を除いて2人。若い男性店員が1人で対応して、「ワンオペ」状態だった。今回の「ワンオペ」廃止は0時から5時までの時間帯で、それ以外のワンオペは廃止の対象外だ。



閉店15分前にラストオーダーを迎えるため、店員は壁時計に目をやり、「あと15分ですけどいいですか」と声をかけてきた。何だか慌ただしい雰囲気だったので、定番の牛丼並盛を頼んで、急いでかきこんだ。



食べている途中に、店に電話がかかってきた。店員は「ラストオーダーも終わって、掃除もしました」と答えていたが、余裕がなく、どこかイラついたような表情だ。その後も片付けに追われていた。



●店内に流れるB’zの曲「ひとりに戻れない」


店内に流れている曲はB’zの「RING」。ボーカル稲葉浩志さんの「連れて行って欲しい ひとりに戻れない たった今僕は目覚めた」と、どこか「ワンオペ」の哀愁を際立たせるような歌に聞き入っていると、もう23時58分。次の曲に移ったところで、店員から「そろそろお時間です」と精算を促された。



店員に「ワンオペはもう終わるんですよね?」と聞くと、「今ワンオペですけど、0時からのワンオペは終わります。ワンオペは大変なんです。他の店でやったときは、一気にお客さんが来ることがあって、本当にきつかった。この店はお客さんが少ないので良いほうですよ」と愚痴をこぼしていた。



そして、いよいよ10月1日の午前0時。客席の電気がパッと消えた。しかし、しばらくするとまた電気がついた。別の店員が来て、2人で何かを相談していた。30分たっても店の灯りは完全には消えず、片付けに時間がかかっているようだった。



この店から西に150メートルほど離れたところに向かうと、電気が明々と灯った別の店舗があった。そこは深夜営業を継続する店舗で、2人の店員がせっせと仕事に励んでいた。



●「ラストオーダーは15分前です」


別の記者は23時40分、仕事を終え、赤坂の店舗を目指した。朝からコンビニのサンドイッチしか食べていなかったため、ここは牛丼で腹を満たそうと考えながら、早足で店へ向かった。



23時50分ごろ、店に到着。入り口には、「5:00〜24:00」と営業時間の変更がでかでかと書かれた紙が張ってあった。ところが、店内は男性店員がひとり後片付けを始めていて、すでに終了ムードが満点だ。



――もう終わりなんですか?



店に入って、男性店員にそう問いかけると、「はい。終わりです」という、無慈悲な答えが返ってきた。



あまりにおなかが空いていたので、「まだ24時じゃないですよ」と粘ってみたが、「ラストオーダーは15分前です。ドアに張ってあります」とバッサリ。



そうだったのか・・・。入り口に戻って確かめてみると、たしかに『ラストオーダーは閉店の15分前』と明記してある。



すき家でラストオーダー時間を気にしたことはなかったが、ここは引き下がるしかなさそうだ。食事は諦めて、邪魔にならないよう、手早く話を聞いてみた。



――今日から変更なんですね?



「ええ、そうです」



――いま、一人なんですか?



「いえ、他にもいますよ」



ここで店の奥のほうから、小柄な女性店員がぴょこんと顔をのぞかせた。なるほど、この時間帯まではツーオペでやっていたわけだ。



――しばらく、深夜はやらないんですか?



「そうですねー。予定はわからないですが」



男性店員の対応はにこやかだが、明らかにこちらの存在は「邪魔」という感じだ。あまり長居もできないので、お礼を言って立ち去った。



●通行人が休業告知の張り紙を「記念撮影」


店の外で、あたりの写真を撮っていると、先ほどの女性店員が出てきた。帰るところだったようだ。



――記者なんですが、一言お話を聞いてもいいですか?



そう声をかけると、私服に着替えた女性店員は、たちどまって耳からイヤホンを取り外してくれた。しかし、用件を伝えると、「すみません。終電があるので・・・」と、丁重にお断りされてしまった。



店周辺は、地下鉄の赤坂駅のすぐ近くということもあって、午前0時過ぎの深夜でも人通りが多い。ふとみると、通りかかった若い男性が、営業時間変更を伝える張り紙をスマホで撮影していた。ワンオペ終了のニュースを見て、開店しているかどうかを確かめに来たのだろうか。



また、おそらく普通に食事をしに来たのだろう。若い男性や女性が次々と店をのぞき込んで、張り紙を見ている。そうした人の中には、すぐ隣のコンビニや、近くのラーメン屋に吸い込まれていった人もいた。



そんな風に観察していると、ぽつり、と雨粒が落ちてきた。そろそろ潮時だろう。「遅くまでお疲れさまです・・・」。心の中で、店員に声をかけて立ち去ろうとすると、まるでそれに答えたかのように、店の照明がフッと、静かに消えた。



すき家・赤坂6丁目店の「消灯の瞬間」の動画はこちら。



https://www.youtube.com/watch?v=WKnDDt6IBQE


(弁護士ドットコムニュース)



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  • これを機にすき家に限らずどの店も「24時間営業が本当に必要なのか」見直すべきでは?
    • イイネ!1
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