「よりよい指導」を求めて指導者たちが学び続ける市川シニア(後編)

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2022年03月18日 18:34  ベースボールキング

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ベースボールキング

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昨年、新チームが千葉県新人大会で優勝を果たした市川シニア(千葉県市川市)。ノックを見ているとこのチームの指導方針がよく分かります。ノッカーの口調は穏やかでミスをしても怒鳴らない、大声も出さない。「今のどう思う?」「〜の方がいいよね?」と問いかけ、コミュニケーションを重視する。それでいて緩い雰囲気ではなく、子ども達の表情は真剣でピリッとしている。聞けば昨年、チーム所属のほとんどのコーチがコーチング研修を受けたと言います。宇野誠一監督にお話を聞いた後編です。



チーム運営はクラス運営に近い
——現在チームで取り組んでいる課題などはありますか?

選手主導で考えて取り組む、ということですね。

——具体的にはどういうことでしょうか?

例えば、今日は借りたグラウンドで練習をしましたけど、当然時間の制限がありますよね。ですから「今日は一日こういう流れになるよ」と事前に選手達には話していました。それをふまえて、練習と練習の間はどれくらいの時間があるのか、借りたグラウンドはどういう状態で返すべきなのか、そのために練習終了の時間をどのように考えるのか、そういうところまで上級生がイメージしてチームを動かせるか、そういうことに取り組んでいます。



——なるほど。その課題の達成度、到達度を現時点でどのように評価しますか?

大分できるようになったと思っています。今日も練習途中のボール拾いの人数が凄く多かったので、おそらく上級生達が「今日はボール拾いを大事しよう」ということを事前に話していたのだと思います。

——確かにボール拾いを大人数で素早くやっていましたね。あれは素早く次の練習に移るためだったんですね、限られた時間を有効に使うために。

そうだと思います。そういう感度は高くなったと思います。

——チームとしてのテーマ、スローガンみたいなものはありますか?

スローガンはこの前最上級生たちに決めさせたんです。「こういうスローガンがいいと思います。なぜなら——」というふうに全員がプレゼンをして、全員で投票をして決めました。そこで決まったスローガンが『Power of Smile ー笑顔の力ー』です。だからこの先は「笑顔でプレーするには何が必要か?」「誰かの笑顔を引き出すにはどうするか?」などの会話が増えてくるのではないかと思っています。



——なるほど。市川シニアは野球を通じた選手達の教育、人間的な成長につながる取り組みが多いですね。

そうだと思います。チーム運営はクラス運営に近いと思っています。あとは仕掛けをしていかないとマンネリになりますしね。中学3年生くらいの子達って文化祭とか合唱コンクールとかにクラス全員で向かうパワーが凄いじゃないですか?
ああいう形で「3年の夏」を最後の作品発表の場とするみたいな、そういう位置づけで取り組んでいますね。

——チームがそういうクラスっぽい雰囲気になるのは宇野監督自身が教員免許を持っていることも関係しているのかもしれないですね。

そうかもしれないですね(笑)。
「より良い指導」の先にある目指すべきチーム像


——市川シニアの他のチームにはない良さはどこにあると思いますが?

さっき話した若いOBコーチ達が多い(現在5人/2022年3月時点)こと。そして彼等が一生懸命に学んでいることですね。あとは3年間の伸びしろというか、成長度は相当高いと思います。今のチームに「○○ジュニア」出身の選手なんて1人もいませんが、全国トップレベルの佐倉シニアさんと毎年決勝戦で戦うところまで行きますしね。野球を授業に例えたら相当多くの単元を学ぶことができるチームだと思います。

——昨年の秋の支部大会ではその佐倉シニアに初めて勝ったそうですね。

そうですね。私が監督になってから公式戦で初めて勝つことができました。

——ちなみにこの4月から、OBコーチ5名を含めたオール20代のコーチによる「育成部」を立ち上げるそうですね。どういった狙いがあるのでしょうか?

狙いは中学生たちの成長を最大化させることです。中学2年の夏の代替わりまでの期間を育成部のコーチ全員で指導計画を作り、どう最終年度に向かわせるか、毎週オンラインでミーティングをしながら、監督である私とも連携して動いていく予定です。ちなみに育成部のコーチは全員アンダー15のライセンスも取得している、学びたくて仕方がない連中です(笑)。



——最後にお聞きしますが「より良い指導」の先にある、宇野監督が目指すチームはどんなチームでしょうか?

選手達を、凄く真剣に勝負に臨ませてあげながら、野球技術の成長と心と体の成長をしっかりと与えられて、一生の仲間を作ってあげられる、そんなチームですね。

宇野監督、ありがとうございました!

(取材・写真:永松欣也)

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