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前回からの続き。私は田上ミサエ。50代後半でパートで働いています。15年ほど前、世界的金融危機の影響を受けて夫マコトが無職になってしまいました。当時、3人の子どもたち(長女ユミカ・長男ユウスケ・次男タイキ)はまだ小中学生。日々の生活すらもギリギリの状態で、家族で協力しあいどうにか切り抜けてきたのです。このたび長男ユウスケの結婚が決まり、お相手の藤崎マイさんのご両親との顔合わせがありました。しかし奨学金の返還が数百万円残っているという話を伝えると、一気に不穏な空気になってしまったのです。
数日後、私の携帯に藤崎さんのお母様の番号から着信がありました。今後、結婚式の準備などで連絡を取り合う機会があるかもしれないと考え、顔合わせのときに電話番号を交換していたのでした。
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電話をかけてきたのは藤崎さんのお父様でした。「マイの父です。妻の携帯を借りて連絡を差し上げました。先日はありがとうございました。あの……大変申し上げにくいのですが……」
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「今回の話は、なかったことにさせてください……」「え……?」「……申し訳ありません」「なかったことにって……。どうしてですか?」
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「すべてこちらの勝手な都合です。それ相応の誠意は示させていただきますので……」藤崎さん側からの一方的な通告に、私はただただ混乱するばかりです。「勝手な都合って……。誠意って……」
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「マイにも自分の口からユウスケくんに伝えるように言ってあります」なんとマイさんも破談は了承しているというのです。「せっかくのご縁だったのに、申し訳ありません。失礼します」藤崎さんからの電話は切れました。私はスマホを手に、呆然と立ち尽くすばかりです。
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帰宅した夫に電話の内容を告げると「は……破談……!?」ひどく驚いていますが、私だっていきなりの展開にどう対応したらいいのか分かりません。どうすることもできず藤崎さんからの言葉をそのまま伝えます。「すべてこちらの都合だからって……」
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ユウスケにはまだこの話は何も伝わっていないようでした。「マイさんの口から直接話させるって……」ユウスケは都会でひとり暮らし、平日の昼間なのでまだ仕事中でしょう。私から連絡はしていません。「そんな……」しばらく絶句していた夫がようやく口を開きました。「心当たりがあるといえば、理由はひとつしかない……」
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「奨学金……よね……」顔合わせのときに奨学金の話を持ち出したとたん、一気に変わった空気感。私たちが気付かないはずはありません。やり切れない思いがこみ上げます。
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藤崎さんは破談の理由をはっきり言うことはありませんでした。けれど顔合わせのときに「奨学金」というワードが出たとたん、藤崎夫妻の顔色が変わったのは確かです。親が奨学金を背負わせたばっかりに、ユウスケにつらい思いをさせることになってしまった。あんなに嬉しそうな笑顔で「結婚が決まった」と報告してくれたのに……。自分たちの不甲斐なさに、私たちは落ち込むことしかできませんでした。
【第4話】へ続く。
原案・ママスタコミュニティ 脚本・渡辺多絵 作画・猫田カヨ 編集・井伊テレ子