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前回からの続き。私は藤崎ルミコです。夫コウジと26歳の娘のマイと3人で暮らしています。私たちは遅くに授かったマイのことを心から大切に育ててきました。マイには幸せになってほしいし、それ相応の環境を与えてきたと思います。そんなマイがこのたび、結婚したい人がいると嬉しそうに報告してくれました。
マイから「結婚を考えている人がいる」と紹介されたのが、ユウスケくんでした。わが家に挨拶に来たユウスケくんは非常に礼儀正しい好青年で、マイのことをとても大切にしてくれているのが伝わりました。
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この人なら、きっとマイを幸せにしてくれる……! そう思っていたのですが、両家の顔合わせで思わぬ事実が発覚します。ユウスケくんは大学進学のために奨学金を借りていたのです。夫が残りの金額を聞くと「数百万ほど……」と。帰宅するなり夫はきっぱり「今回の縁談は難しいだろうな」と言いました。
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思いもしなかった言葉にマイはうろたえます。「なんで? 奨学金って別に悪いことじゃないでしょ? 別にユウくんは自分の給料の中でやりくりをするって言っていたし、私だって働くつもりだから別に……」
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「本来であれば、子どもの学費は親が工面するはずのものだと俺は思っている。それをユウスケくんの親は子どもにさせているんだよ。そして、お前がその手伝いをするかと思うと、俺は納得ができない……」「納得って……」
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「結婚のスタートの時点で数百万近くの借金があって、親もそれに対して平然としていられる……それを許容できる価値観は、俺にはないんだ」「……それでも私はユウスケくんと結婚したいの!」夫の言葉に納得できないマイは食い下がります。私は言葉を選びながら、マイを諭すように言いました。「お金に対する価値観って、とても大切なのよ……」
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「もちろんユウスケくんのお給料から奨学金は支払うつもりでいるんでしょう。それは素晴らしいことだわ。でもね、夫婦の家計を考えたとき、本来あるはずの収入からユウスケくんの奨学金分が減ると思うと……ね」「でも、私、頑張るから……!」
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「マイ……結婚は頑張ってするものじゃないの。結婚は生活なの。これから何百万円もの奨学金をずーっと家計から返し続けるユウスケくんを、あなたは何も思わず支えていけるかしら?」
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「もちろん奨学金を借りたことが悪いと言っているわけではない。ユウスケくんの育ってきたご家庭の環境は、あまりにもわが家とは違いすぎるということだ」
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「……じゃぁ、奨学金がなかったらユウくんと結婚しても良かったってこと?」「結論を言うと、その可能性は高かっただろう」夫が答えると、マイは涙をこぼしながら私たちに抗議します。「そんなの……本当の愛じゃないじゃない!!」娘の思いも分かります。でも……。
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夫はうつむき、声を絞り出すようにつぶやきました。「娘に借金を背負わせたくなくて頑張ってきたのに……どうして……」
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数日後、夫はユウスケくんのお母様に電話し、今回の縁談を白紙に戻してほしい旨を伝えました。ユウスケくんは私から見てもとても立派な男性だと思います。奨学金のことがなければ結婚を許していたかといえば、そのとおりでしょう。なにも奨学金を借りることが悪いわけじゃありません。ただそうせざるを得なかったご家庭の価値観の違いが、大手を振って娘の結婚を喜べない理由になってしまうのです。マイの表情を見ると胸が痛みますが、私たちの気持ちを理解してくれると信じています。
【第7話】へ続く。
原案・ママスタコミュニティ 脚本・渡辺多絵 作画・猫田カヨ 編集・井伊テレ子