1人死亡、けが人複数　土砂崩れや停電も　石川・能登北部で大雨

　気象庁は21日、石川県で線状降水帯が発生したことを受け、午前10時50分、同県輪島市、珠洲（すず）市、能登町に大雨特別警報を発表した。いずれも元日の能登半島地震で大きな被害を受けた地域。気象庁は22日午前をピークに断続的に激しい雨が降る見通しを示し、身の安全を最優先に最大級の警戒を呼び掛けている。県によると、21日午後4時現在、珠洲市で1人が死亡、輪島、珠洲、能登の2市1町で各1人が行方不明となっており、能登町では2人が重傷を負った。

　県は3市町を含む能登半島北部の6市町に災害救助法の適用を決め、自衛隊の派遣を要請した。被害は広範囲に及んでいるとみられるが、道路の寸断や通信状況の悪化で全容把握が難しい状況だ。

　珠洲市などによると、同市若山町で裏山が崩れ、倒壊した住宅の下敷きになった1人が救出されたが、その後、死亡が確認された。奥能登広域圏事務組合消防本部によると、輪島市内では複数の地域で土砂崩れが発生し、住宅が巻き込まれたとの情報がある。同市町野町では「人が土砂に埋もれた」との通報が寄せられ、消防が捜索に当たった。市によると、市内では安否が確認できない人が10人ほどいるという。

　国土交通省北陸地方整備局は、輪島市門前町の中屋トンネル付近で、能登半島地震の復旧工事をしていた作業員3人の安否がわからなくなったと発表した。大雨で国道に土砂が流出し、巻き込まれた可能性があるという。工事関係者ら約30人が一時トンネル内に避難した。

　県によると、輪島、珠洲、能登の2市1町で計16河川が氾濫し、床上・床下浸水の被害が多数出ている。輪島市中心部は広範囲で冠水し、能登半島地震の被災者向け仮設住宅も同市で4団地、珠洲市で4団地の計8団地が床上浸水した。土砂の崩落などで、輪島市に通じる道路は全て通行止めとなっているほか、珠洲市で4カ所、能登町で2カ所の集落が孤立している。

　能登町には「河内川に60代女性が流された」との情報が入っているほか、各地で「住宅の2階に取り残された」などの救助要請が相次いでいる。ただ、携帯電話がつながらない地域も生じているといい、要救助者が増える可能性がある。

　北陸電力によると、午後6時半現在、輪島市で約4300戸、珠洲市で約1100戸、能登町で約740戸が停電している。

　21日夕に開かれた県の災害対策本部会議で、馳浩知事は「インフラなど復旧途上の地震被災地がダブルのダメージを受けた」と述べ、政府に全面支援を求めたことを明らかにした。

　気象庁と国交省は21日正午、記者会見を開き、「能登半島地震の被災を受けた河川の周辺ではより一層の警戒をお願いします。少しでも命を守るための行動を」と呼び掛けた。能登半島地震の被災地では、堤防や護岸が損傷し、完全に復旧できていない場所があり、低い水位でも氾濫の恐れが見込まれるという。

　気象庁によると、前線が日本海から東日本付近にかかり、暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で雨が強まっている。台風14号から変わった温帯低気圧が22日にかけて日本海に接近し、北陸以外の広い範囲でも大雨が予想される。

　降り始めの20日から21日午後6時までの降水量は、輪島市輪島で354・5ミリ、珠洲市珠洲で258・5ミリ。いずれも24時間降水量で観測史上1位の記録を更新した。22日午後6時までの24時間予想降水量は多いところで、四国250ミリ、九州北部200ミリ、北陸・東海・近畿・中国180ミリ。

　JR東日本によると、山形新幹線は21日午前8時ごろから山形―新庄間の上下線で運転を取りやめ、22日も終日運休する。北陸新幹線は22日も平常通りの運転を予定している。【深尾昭寛、高木香奈、新宮達、木原真希】